第163話:付与魔法使いはセリアに任せる
「ふーむ」
興味なさそうに、ジロっとセリアを一瞥するリオレス。
そして、首を振った後、俺に対して冷ややかな目を向けた。
「弟子の前で無様な姿を晒したくないのは分かるが、師匠として恥ずかしいとは思わんのか?」
「……」
俺が黙ったままでいると、リオレスはハァと息を吐いた。
「まあいい。人間の嬢ちゃん、かかってこい」
「はい!」
こうして、互いに剣を構えた。
先手を譲られたセリアが、大きく地を蹴り一気にリオレスとの距離を縮める。
そして、反発ステップでリオレスの予測と逆をついてゼロスピードから一気に加速した。
「ふむ。最低限の型は身についているようだが、この程度では俺の熟練の技術の前では……って、なにいいいいいいいいいいっ⁉︎ 消えた⁉︎」
違う。単に、セリアはリオレスの背後に回り込んだだけだ。
リオレスもワンテンポ遅れて、何が起こったのかを理解したらしい。
「くっ!」
咄嗟にセリアの攻撃を避けようと腰を捻るが——
「うがああああああああああああっ⁉︎」
リオレスの悲痛な叫び声。
セリアの剣戟がリオレスを襲い、鮮血を流した——というわけではない。
これだけの実力差があれば、セリアにとって怪我させないよう立ち回ることはそう難しいことではないのだ。
「こ、腰を……腰を、やっちまった……」
無理に捻ったせいでぎっくり腰を起こしてしまったらしい。地面を這いつくばり、両手で腰を抑えるリオレス。
次の瞬間には、バタッとその場に倒れてしまった。
「な、なんということだ! リオレスさんが……!」
「あの子何者なんだ⁉︎」
「そ、それより大丈夫なのか⁉︎
まさかの事態に、周りのエルフも狼狽えていた。
「ア、アルス……ど、どうしましょう!」
動揺したセリアが俺に助けを求めてきた。
「そうだな……」
とりあえずリオレスの元へ向かう。
顔を覗いたところ、苦悶に悶え、額からは脂汗が流れていた。
「大丈夫か……?」
「す、少し捻っただけだ……。どうってことはねえ……」
その様子で強がられても、大丈夫なようには見えないのだが……。






