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【閑話】眠気の理由

アーサー視点のお話です。説明多めです。

 結局、ハーヴァーさんに家まで送って貰ってしまった僕は、帰ってきてそのまま布団に寝転がると、愛猫を抱きしめながら考え始めた。



「……あの人は、ハーヴァーさんが居ない時も図書館に来ていた。その理由は……クラウディアさんに会うため……だよな」


 ハーヴァーさんが研究所に入ったことを、クラウディアさんは知らないはずだった。彼女とは、研究所に入る前に会ったきりだった筈だからだ。図書館に行けば会えるはずだと言っていた発言から考えても、定期的に連絡を取り合っているとも思えない。なら、あ(・)そ(・)こ(・)の(・)子(・)と彼女が言ったことに、僕は疑問を覚えた。


 今回以外に、ハーヴァーさんとアンブローズさんが彼女に会ったのは二度。その中で自分の仕事先を、魔女に教えるとは考えがたかった。それこそ、実際どうだったのかは、ハーヴァーさんに聞いた情報しか無いため確実性はないと言えるが。


 だがもしそうなら。彼女は他(・)の(・)誰(・)か(・)に(・)ハーヴァーさんの事を聞いていたと考えられる。そしてその可能性が最も高いのは、アンブローズさんだろう。彼なら、彼女の所属も、研究所に入ったことも全て知っている。


 何度も図書館に行っている僕も、クラウディアさんの姿を見たのは初めてだった。普段は、人前には絶対姿を表さないのだと思う。だからこそ、アンブローズさん以外の、ハーヴァーさんの事を知っている研究所の誰かが、彼女に会ってその話をしたとは考えにくい。そもそも、ハーヴァーさんが会いに行っていないのだから、クラウディアさんに会うことは不可能だろう。


 あの女性(ひと)は、随分とハーヴァーさんに執着しているようだった。それはきっと、彼女が同じ不死の存在だからだろう。どうやらクラウディアさんは、友達が欲しいらしかった。それも、不死の友人が。



「あの子のこともあった……って言ってし、きっとアンブローズさんに何かあったんだと思う。そして、あの不死になる為の方法……最近、使われたんだ」


 僕は離れて行ってしまった猫の代わりに、近くに置いてあるぬいぐるみを取って、そこに顔を埋めると小さくため息をついた。ここから先の考えは、あまり良いものとは言えないだろう。だけど、僕はその時間が来るまで考え続けた。



「……最近討伐に行った竜種、そしてほ(・)ぼ(・)全(・)員(・)が(・)失敗したんだって、そう言ってた。つまり、最近成功した人がいるんじゃないか……?」


 本当に、その術を試した人全てが死んでしまったのなら。ほぼ、だなんて言うはずがないだろう。だからこそ、成功例が居るはずだった。それでも彼女は一人であの場所にいる。そして、最近行われただろうその術に、あの言葉。



「……貴女も(・)居るもの、って言うのは。やっぱり他にも彼女が友達と呼べる人が、いるんじゃないか……? そして、ハーヴァーさんに話しかける前に既にいたのなら。無理に話しかける必要があったのかな……きっと、彼女と出会った後に、不死になった人がいるんじゃ……」


 だが、これはほぼ憶測だった。もしかしたら、既に不死の人がいて、でもあまり会うことの出来ない相手なのかもしれない。だからこそ、寂しくなってハーヴァーさんに話しかけたという可能性もある。だが。



「……ハーヴァーさんがすぐに来てくれると思った、あの子の事。誰の事か分からないけど……その後のその言葉に、僕がアンブローズさんと知り合いなのかと聞いた時も否定されなかった。それに……もう不死のお友達を探す必要はない……って」


 ハーヴァーさんが、元の体に戻ろうとしていることを彼女は知っていた。そして、それを無理に止めようともしなかった。けれど、彼女はもう友達を探す必要は無いのだと、そういったのだ。つまり、僕の予想が正しければ。




「……あの人が、不死になってしまったんじゃ」



 ハーヴァーさんが研究所に来た理由。それはその身体を治すため。国立研究所に彼女を入れたのはつまり、王家が、国としての支援をするということなのだろう。そしてその一週間前、グレイ殿下が捕まった事が国中に伝わった。その時彼を追っていたのはリアン殿下だったはずだ。その彼が連れてきたハーヴァーさんは、きっとその事件に巻き込まれたのでは無いかと予想出来た。時期もタイミングも、きっと間違いではないだろう。


 きっとその場には、アンブローズさんもいたんじゃないだろうか。そして彼が、自ら不死になることを選んでしまうような何かが、あったんじゃないだろうか。



「……突拍子のない話なのは分かってる、けど」



 あの人は、ハーヴァーさんのことを随分と気にかけていた。今日も彼女は、きっと彼にお土産を届けに来たのだろう。所長室から出てきた時の様子からしても、浅い仲ではないことは分かる。そして、ハーヴァーさんの話を聞いてから、ずっと気になっている事があった。




「……アンブローズさんとハーヴァーさんが再会したのは、十年程前。確か、バートンさんが言っていたのもそれくらいだった」



 今の部署に入ってから、僕はアンブローズさんについての話を何度か研究員の人達に教えて貰っていた。特にバートンさんは、その若さの秘訣が気になるのだと言っていたはずだった。




 ――なんでもここ十年くらい、見た目が変わってないそうです。一体どんな仕組みなんですかね?




 彼は、彼女と再会してから。その若さを保っているんじゃないだろうか。それこそ、自(・)分(・)の(・)体(・)に(・)魔(・)術(・)式(・)で(・)も(・)刻(・)み(・)込(・)ん(・)で(・)。そして、それに気付いたクラウディアさんは、彼なら不死になれるのではないかと思ったんじゃないだろうか。僕の事も、その身体が持つかどうか見てくるくらいだったのだから。




「……これ以上考えても、全ては分からない……クラウディアさんに直接聞くのは、流石に怖いなぁ」



 ここまで考えて、僕は一度思考を止めた。ただ少し、気になってしまっただけなのに。気付けばそんな恐ろしい予想へと辿り着いていた。真相を知るためには、まだ情報が足りない、でも、それを本人達に聞くのは得策とは言えない気がした。





「ふゎ……今日は少し、考えすぎ……た……」


 気付けば、いつもの眠気に襲われる。何でもこれは、多すぎる情報の処理の為、体が勝手に睡眠状態に入ろうとするのだと。昔病院の先生に聞いたことがあった。だから、今日はいつもより早く眠くなったのだ。


 そしてその日。普段よりもずっと早く、僕は眠りに落ちていったのだった。

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