【閑話】向き合う覚悟
切望の果てに(4)の、エルフィムが帰った後のお話です。
エルフィムが帰った後、私は部屋へと戻った。そしてふと戸棚へと目が行く。
そこに飾られている――以前、彼が贈ってくれたブローチを手に取って、静かに眺める。そして私は、小さくため息をついた。彼が、青く輝くこの宝石が、私の瞳の色にそっくりだと言っていたのを思い出す。
そして今日、あの子は私へと、ずっと伝えたかっただろう想いを伝えてきた。
――何故そこまで、あの子は私を想ってくれるんだろうか。
昔、この魔術の道を進むと決めてから。私は、人からの好意を二の次にしてきた。目指す先だけを見据え、研究所に入ってからも、私は新しい技術、研究、ひいては人がもっと幸せに暮らせるような、そんな未来を求めて、それだけの為に生きてきた。それが、私の生きがいだった。
だからこそ、その夢が絶たれ、目指す先がわからなくなっている今の私にとって。彼からの想いは、どうすればいいものなのかが分からなかった。もとから避けてきた人からの気持ちを、私はまだ受け止めきれない。
この身体になってから、より一層、人間らしさから離れていく私にとってその感情は、触れることすら怖いと感じてしまうものになっていたのだ。
けれど、それでも大切な教え子の、そして友人からの想いに。どうにかして応えたいと、私は思った。
だが、どうすることが正しいのか分からない私は、とにかく行動する以外の方法を知らない。まだ分からない、私の彼への想いを知るために。私は研究所に行く事に決めたのだ。
「……だから、これからよろしく頼むよ、アンブローズ」
彼は、きっと驚くだろう。私が、どうにか彼の気持ちに応えようとするだなんて、思ってもいなかっただろうから。
(きっとお前が思っているより、私はお前のことが好きだよ。それくらい、長い時間を共にしたのだから。けれどそれが、お前が言う感情なのかはまだ……分からない)
私は、彼について知らない事が多いのだろう。だからこそ、知ろうと思った。遅くなってしまったが、私は彼のその想いに報いようと決めたのだ。
そうして私が――いずれ大きな選択を迫られることになる新しい日々が今日、始まった。




