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ルカ・フェルナーによるギルド報告書

ルカ目線



「これ、お願いします」



 日夜騒がしいこの場所には似つかない可愛らしい声と共にぺらり、と見慣れたクエストオーダーの紙がデスクに置かれた。



「お預かりしますね」



 定型文と共に差し出し人を確認すれば、予想通りの人。



 半年前、冒険者登録されたまだ少女とも女の子ともとれる年齢の少し不思議な子。



 リヴィア・ローウェル。



 いきなり冒険者ギルドに現れた時から彼女は、荒くれ者が多いこのギルド内で少し浮いていた。





 手入れが行き届いている様子の麦藁色の柔らかそうな髪の毛。


 くるっと大きくて相手を真っ直ぐ見つめる印象的な緑の瞳。


 意識してなくても伸びた背筋に荒れ知らずの小さな手。




 身長はきっとギルド内の誰よりも小さい。


 それなのに、気付けば誰もが視線の端で彼女を一度は見てしまう。


 それは飛び抜けた美人だからではない。


 立ち居振る舞いの端々に育ちの良さが滲んでいるからだ。




 明らかに"訳あり"な彼女だけれども、気付かないふりをしよう、それがこの半年間で冒険者ギルドに生まれた全員の総意である。








「D級クエスト...リヴィアさんならもう少し上のものでも許可出来ますよ?」




 受け取った用紙に記載されていたのはD級任務の薬草採取。


 彼女が持ってくる依頼はいつも簡単なものばかりだ。



 働き始めてから初めて見る"条件付きA級"の称号を持つ彼女は、僕の言葉に困ったように笑う。




「私の戦闘スタイル、あんまりみなさんに好かれてないみたいで...ソロならこのぐらいじゃなきゃきっと失敗します」




 【新人冒険者 リヴィア・ローウェル】


 登録年齢:18歳


 階級:初回F級から着実にランクを上げ、現在条件付きA級


 危険度:低


 問題行動:なし


 備考:


 本人の実力に対して受注依頼が極端に低い。


 何か事情があると思われる。


 深追い禁止、本人からの申告を待つ所存。








「リヴィアちゃん、絶対ルカの列に並ぶよな」



 リヴィアさんが受付を離れてすぐ、隣の席のトムさんが話しかけてきた。



「僕の席が一番空いてるのかもしれませんね」



「......ルカ、それわざとか?絶対に違うと思うぞ」






 そんな話をしていれば騒がしいギルド内が一瞬で水を打ったように静まり返った。



 何事かと入り口に目をやれば、今しがた受付を離れたリヴィアさんの後ろ姿と、フードを深く被った黒ずくめの男が見えた。


 小柄なリヴィアさんと頭一個分、差がある大男。


 それに他者を寄せ付けない圧倒感が合わさり、威圧感がすごい。





「登録したい」




 受付カウンターを確認した男はフードを下ろすと言葉少なに話しかけてきた。




 フードの下から現れたのは、この国では珍しい濃紺の髪。


 冷たくさえ思える整った顔。


 その中でありふれた茶色の瞳だけがどこかちぐはぐに見えた。




 ちらりと同僚たちを横目で窺えば、誰もが謎の大男から視線を逸らしている。





 かしこまりました、と僕は口を開いた。




「冒険者登録ですね、ではこちらの書類の記入とお名前をお願いします」




「ギルバート」




 男、ギルバートさんは落ち着いた低い声で名乗った。




「ギルバートさんですね、続いては姓をお願いします」




 その質問に不自然に体が揺れた。




「......いるのか?」


「はい、登録書類には必要です」


「......ない、ただの流れのギルバートだ」



「......わかりました、未記入のままにしておきますね」




 【新人冒険者 ギルバート・(姓なし)】


 登録年齢:27歳


 階級:F級


 危険度:不明(要観察)


 問題行動:いまのところなし(要観察)


 備考:


 威圧感あり。


 同僚複数名が接客を回避。





 このギルドに、また"訳あり"が一人増えるらしい。


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