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ズレだした原作と私の見ている世界について




 2人の男が言い合っている。




「お前は馬鹿だな」


「え?」


「何でそんなに他人ばかり気にする」




 ルカ・フェルナーは困ったように笑う。




「それが仕事ですから」




 それに対してギルバートは不快そうに眉をひそめた。




「ルカ」




 男は焦れたようにルカの腕を掴む。





「お前はいつも自分を最後にする」


「誰かのために無茶をする」




 ギルバートの追及の言葉にルカは逃げるように視線を逸らした。






 ーーー誰にも触れさせたくない。


 ーーー誰にも傷付けさせたくない。







「あぁ、なんだ、簡単なことだったな」







 ーーーなら最初から誰にも見せなければいいんだ






「お前は、俺だけを見ていればいい」


「そうだろう?」



 ルカの瞳が見開かれた。





 ──原作抜粋──





 いやいやいやいやいや、何で、そうだろう?になるわけ???



 そこにルカたんの意志は?ルカたんの幸せは??



 ギルバートさん、ちょっと表に来てもらってもいいですかね??


 今後のルカたん育成計画について話し合いません???








「リヴィアさん?」





 突然、推しの声が耳に飛び込んで来た。


 その声に遥か彼方まで飛んでいた意識が現実に引き戻される。




「大丈夫ですか?」


「だ、いじょうぶ、です」



 反射的に答えて、ちらりと周りを見渡した。


 心配そうに机の向こう側から私の顔を覗き込んでいるルカと私の隣でナメクジを見るような目で私を見ているギルバートさんの姿。


 いつの間にか二人の話は終わっていたらしい。





「では、お二人とも報告は以上で大丈夫です、お疲れ様でした」



 ルカが今回のクエスト報酬が入っている袋をカウンターに置いた。



 ありがとうございます、とお礼を言い、それを受け取ろうと伸ばした私の右手をルカの目が追った。




「あれ?リヴィアさん、怪我してません?」




 そう言われて、右手に突然温かい感触がした。


 ルカの手に優しく包まれた自分の右手。




 なになになになに???


 え?推しが私に触れてる???


 ルカたんの手が触れた手、私もう絶対洗わない。




「浅い擦り傷みたいですけど、女の子なんですから気をつけないとダメですよ?」



 ルカが治癒をかける気配がして、私は急いでぱちりと瞬きをした。



 ぽわりと淡く灯った光から見慣れた術式ちゃんが数匹生まれた。



「だいじょうぶー?」

「けがしちゃったー?」

「なおすねー?」



 私の術式ちゃんたちとは少し違う術式ちゃんたちは擦り傷を見つけると、その場所をみんなで一斉に撫でた。




「いたいのいたいのー」

「とんでけー!」




 か、可愛いーーー!!!



 うちの子たちとは違って落ち着いて穏やかな雰囲気のルカの術式ちゃんたち。


 解釈一致すぎる。わかりみが深い...。





「はい、これで多分綺麗に治りました」



「ありがとうございます」



「いえいえ、僕の魔力量じゃ擦り傷くらいしか治せませんけど」



 お役に立てて良かったです、と言いルカがふんわりと笑った。


 はい、今日も推し、大優勝です!!!





 ギルドを出た頃にはすっかり太陽は落ち、薄く星空が広がっていた。



 そんな私はといえば、ルカの術式ちゃんたちの余韻がまだ抜けないでいた。




「可愛かった......てぇてぇ......」




 治してもらった手のひらをじっと眺めて感動を噛み締める。




「お前」




 隣を歩くギルバートさんに呼びかけられ視線を隣に移せば、またばちっと目が合った。


 なんかよく目が合うな......ガンつけられてる?


 喧嘩なら買いますけど?




「あいつと話す時だけ別人だな」



「別人ですか?」


「急に大人しくなる」


「私はいつでも大人しいですよ?」



「自覚がないのか、重症だな」





 なんてこった!やっぱり喧嘩売られてた!!!




「失礼ですね、私は淑女です」


「今のどこがだ」


「少なくともギルバートさんよりは」




 私は立派な貴族令嬢ですよーっだ!


 .......多分、きっと。




 王都の街並みを歩いていると、さっきルカに怒鳴っていた冒険者の姿が目に入った。


 どこかふらつくような足取りだ。



 ぱちり、と瞬きをして例の冒険者を"見る"と、まだ身体強化の術式が展開されているのか彼の肩に術式ちゃんの姿が見える。



 騒ぎの時に、"見て"気づいたこと。



 術者本人の気質に似ているのだろうツッパリの髪型をした術式ちゃんたちが、みんな疲弊しきってぐったりしている。




「ギルバートさん、ちょっと待っててください」




 気付けば私はその背中を追いかけていた。



「あの」



 突然呼び止められた冒険者が怪訝そうに振り向く。



「お前......」


「あの、これ、良かったらどうぞ」




 そう言ってポケットに入っていた飴を差し出す。



「怪我もありますし、まずはゆっくり体を休めてください」



 ぐいぐいと冒険者さんの手に飴を押し付けると、ぺこりと一礼してその場を立ち去った。




 その様子を感情もなくじっと見ていたギルバートさんがぽつりと呟いた。




「お前とあの受付は似ているな」




「は?」



「同じ世界にいるとは思えない」





 私に話しかけてるのか、自分のなかに収まりきらなかった思考が言葉として飛び出したのか、よくわからない声のトーン。



「どういう意味ですか?」



 意味がわからずそう尋ねれば、




「さあな」




 ギルバートさんはそう言い、前を向いて歩き出した。




「りびー!」

「くろいのわらったー!」

「わらったー!」

「めずらしいー!」

「あしたあめー!」




 術式ちゃんたちが肩の上で騒ぎ出す。


 え?ギルバートさんって笑うの???


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