第075話 良い町ではないですね
ダリアが馬車に魔道具を取り付けたのでギルドの中に入る。
ギルドはかなり広く、中もこれまでのギルドの倍以上はあったし、受付が10もあった。
さらには昼間だというのに多くの冒険者達がおり、左の壁にあるたくさんの依頼票を見ていた。
「……冒険者達の質も悪そうだな」
小声でイレーネに声をかける。
装備がぼろいし、人相もあまり良くないのだ。
町の外で会ったら冒険者ではなく、盗賊と思う自信がある。
「……この時間から働こうと思っている人達だから御察しよ」
俺達は他の冒険者をあまり見ないようにし、右端のおばちゃん受付嬢のところに向かう。
「すみません。依頼の報告です」
ダリアがそう言って、カウンターに書類を置いた。
「どれどれ……あー、護衛の依頼ね。ヴェルナーさんとイレーネさんはこの2人?」
書類を確認した受付嬢が俺とイレーネを交互に見る。
「ええ。ラティルナの町からです」
ダリアが頷いた。
「日付が昨日だね。それにしては早い……あ、いや、例の盗賊騒ぎか」
さすがにギルドの人間は知ってるわな。
「ええ。念のためにキャラバンが強行軍だったんです」
「なるほどね。問題は?」
「ありません。100点満点です」
評価に点数があるのかな?
「了解。2人共、ギルドカードを出して」
「ああ」
受付嬢にそう言われたのでイレーネと共にカードを提出する。
「確かに。じゃあ、これで依頼は終わりだよ。2人共、ご苦労さん」
ポイントになったかな?
「あっさりだな」
「問題がないんだからそうなるよ。100点満点なら言うことはないさ」
それもそうか。
「この町って儲かる仕事が多いのか?」
「多いよ。人の数だけ仕事はあるし、東にある森は通称、迷いの森と呼ばれていて、かなり深いうえに多くの魔物が出るんだ。魔物退治がメインならそこで稼げる」
東か……確かに馬車から見えていたな。
「わかった。ちょっと考えてみる」
「行くなら気を付けなよ。盗賊のこともあるし、この町はお世辞にも行儀の良い町とは言えないからね。冒険者のトラブルはしょっちゅうさ」
だろうな。
「わかった。ちなみにだが、頼みたい仕事とかあるか?」
「へー……あんたらは行儀の良い冒険者のようだね。薬草が欲しい」
ここもか。
「ラティルナでも言われたな」
「どこもそうさ。だーれも採ってきてくれやしない。そのくせポーションが足りないとか文句ばっかり言うんだからウチらも辟易さ」
それで評価が上がるわけね。
俺でも上げるわ。
「わかった。考えておく」
「頼むよ」
俺達は話も済んだので早々にギルドを出た。
馬車は特に変わった様子もない。
「護衛をしてくださり、ありがとうございました」
ダリアが頭を下げてくる。
「いや、こちらも助かった。それにわがままを言って、依頼にしてもらったことも感謝する。ついでにわがままを言うが、宿屋を紹介してくれ」
「もちろんですよ。ただ、この町はちょっと高いです。安い宿屋もあるんですが、そういうところは絶対に泊まってはいけないって商人ギルドから釘を刺されています。イレーネさんとリーエさんがいるならなおさらでしょう」
商人ギルドが言うならそうなんだろうな。
これは従った方が良い。
ウチは自他ともに認める美人と可愛い子がいる。
「わかった。金は仕方がない」
「では、行きましょう。乗ってください」
俺達は馬車に乗り込み、出発する。
「ギルドにいた冒険者は本当に冒険者だよな?」
「ギルドにいるならそうじゃないの? というかさ、盗賊騒ぎって言われてもねって感じね」
まったくだ……どれが盗賊でどれが冒険者だよ。
「これまで治安の良い町ばかりだったのでちょっとびっくりしますね」
ホントにな。
「主要な道の町はどこも治安が良いんだけどね。ここは特別じゃない? 正直、私も長居したくないわね」
それは俺もそうだ。
宿屋に着いたら相談だな。
俺達が町中を眺めながら待っていると、宿屋の前で馬車が止まったので降りる。
そして、御者台に向かった。
ダリアは降りていないのだ。
「ダリアは仕事か?」
「ええ。これから荷を売りに行きます。それと商人ギルドと相談ですね。盗賊の件も気になりますし」
前回もそうだったからそうだろうなと思った。
「一人で大丈夫か? ついていっても良いぞ。もちろん、依頼とは別だ」
それくらいのことはする。
「大丈夫ですよ。私も人通りが多い大きな道しか使いませんから。さすがに白昼堂々と犯罪をする人はいません」
まあ、これだけ人が多ければそうか。
それに治安が悪いと言ってもこれまでも女性や子供も普通に歩いていた。
「わかった。部屋を取っておけばいいか?」
「はい。女将さんがいると思いますのでダリアが来たと伝えてくれれば良いです」
ここも馴染みらしい。
ダリアは泊まる場所が完全に決まっているんだな。
「わかった。またな」
「ここまでありがとうね」
「お仕事、頑張ってください」
「ええ。それでは……」
ダリアが馬車を動かし、進んでいったので俺達も宿屋の中に入る。
宿屋はエントランスに複数のテーブルやカウンター席があり、一瞬、料理屋かと思った。
内装は老舗といった感じであり、落ち着いた雰囲気のある感じだった。
「いらっしゃい」
受付にいるおばさんがにっこりと微笑んだ。
「こんにちは。3人部屋で泊まりたいんだけど、空いてる?」
「空いてるよ。朝食と夕食、それに希望があれば昼食付で1万8000ソルになるね」
高いな、おい……
でもまあ、これが安全か。
ダリアが勧めるんだから間違いないだろう。
「じゃあ、お願い」
イレーネが頷いたので財布から1万8000ソルを取り出し、カウンターに置いた。
「じゃあ、これが鍵ね。部屋は2階の6号室だから。それと料理はここでお願い。お酒や摘まめる程度のものがいるなら追加料金がかかるけど、言ってちょうだい。それは部屋に持っていくからさ」
「わかったわ。それとなんだけど、後でダリアが来るから部屋を取っておいてちょうだい。伝言ね」
「あー、ダリアかい。わかったよ。取っておく」
女将さんが頷いた。
「じゃあ、お願いね」
俺達は2階に上がり、6号室に向かうと、中に入った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




