第067話 私の方が小さいですけどね
「よう、ベッキー、それに教授」
「こんにちは」
「こんにちはです。御二人も冒険者活動ですか?」
リーエが2人に聞く。
「こんにちは。半分はそれ。もう半分は教授の手伝いだね」
ベッキーが笑顔で答える。
「そういえば、魔物の研究だったか?」
「そんなところです。路銀稼ぎも兼ねてますけど」
「ふむ……レイスバードか」
教授がイレーネが仕留めた鳥の魔物をしゃがんで見始めた。
「レイスバードって言うのか」
「ええ。すごいですね。中々、仕留められない魔物ですよ」
鳥だしな。
「イレーネが弓矢で仕留めたんだ」
「イレーネさん、すごいです!」
「ふっ、たまたまよ」
全然、たまたまと思っていないドヤ顔だ。
「ベッキー、帰りか?」
「はい。トカゲを3匹仕留めましたんで今日は終わりです」
ほう?
「どんなやつだ?」
「岩に化けているでっかいトカゲです」
ベッキーは両腕を広げる。
その際に腰にある剣が揺れたのだが……
「ふーん……3匹で良いのか?」
「トカゲは1万ソルくらいにはなりますからね。とりあえずはオッケーです」
3万ソルあれば十分か……
「このレイスバードを仕留めたのはイレーネ君だったかな?」
教授が顔を上げて、イレーネを見る。
「ええ。そうよ」
「魔石は?」
「えーっと、リーエ」
イレーネが促すと、リーエがカバンから魔石を取り出し、教授に見せる。
「ふむ……ベッキー、これはいくらくらいだ?」
「5000ソルってところです」
イレーネも5、6000ソルと言っていたし、そんなものなのだろう。
「1万ソル出す。この魔石を売ってくれないか?」
え?
「倍も出すの?」
「出す。売るためではなく、研究のためだ。ベッキーではレイスバードを仕留められないのだよ」
そうかな?
「仕留められますよー。向こうが来ないだけです」
「それは仕留められないと言う」
「ちぇー」
「それでどうかな? 1万ソルで売ってくれるかな?」
教授が再度、聞くと、イレーネとリーエが俺を見てきたので頷いた。
「私達はギルドに売るだけだし、高値で買い取ってくれるならお願いするわ」
「どうぞ」
リーエが魔石を渡すと、教授が1万ソル札を取り出し、代わりに渡す。
「助かった。やはり君達はその辺の冒険者共とはどこか違うようだ」
教授がそう言って立ち上がった。
「こんなところにまで子供を連れてきている時点で……」
「ベッキー、思ったことを何も考えずに口に出すのを控えなさい」
「すみませーん……」
ベッキーがへこむ。
「まったく……では、我々はこれで失礼する。また道中で会ったら何かを頼むかもしれない。行くぞ」
「はーい」
教授とベッキーが山を降りていった。
「教授は何が見えているんでしょうか?」
リーエが聞いてくる。
もちろん、俺達のことを普通とは違うと称したことだ。
「魔力ではないと思うが……」
「人に興味がないタイプの人間に思えるのですが、ヴェルナー様に興味を示されていました。いえ、私達ですかね?」
ふーむ……イレーネが美人という線……いや、そんな人じゃないか。
「どうかな……それよりもベッキーの腰を見たか?」
「イレーネさんの方が上でしたね」
そうそう。
やっぱりイレーネの方がセクシー……って違うわ。
お前は俺達より目線が低いからわかるだろ。
「そこじゃない」
わかってるだろ。
イレーネもドヤ顔するな。
「剣とは別に何か着けていましたね」
「ああ。あれは銃だ。シェパード伯爵が持っていたものとは別の型だったが、間違いなく、銃だ」
脅しのための偽物の銃ではないだろう。
銃が一般的に広まっていない世界だから抑止力にならない。
「私も気が付いたけど、前は身に着けてなかったわよね?」
イレーネもちゃんと見ていたらしい。
「魔物が出るところだから装備したってところか?」
「多分、そうじゃないかしら? 確か、教授さんは魔道具の研究もしているって話だったわよね?」
ベッキーに魔物と魔道具の研究をしている教授と紹介された。
「そうだったな」
「教授が開発し、弟子で護衛を頼んでいるベッキーに持たせたってところ?」
うーむ……まあ、教授も横の繋がりはあるかもしれないからもらったという線もあるが……
「とにかく、ベッキー、それに教授も気を付けよう。どちらも悪い人間には見えないが、あの武器は脅威だ」
「そうね」
「両者共にあまり争いになる雰囲気ではないですが、念には念を入れましょう」
ベッキーは明るく、快活的な少女って感じがする。
教授は研究以外に興味がなさそうに見える。
「目的地が一緒だからな。今後も会うことはあるだろう。ただ、あまり銃を見るなよ」
「ええ」
「わかってます。では、私達もトカゲ狩りに行きましょう。1万ソルは大きいです」
「そうするか」
俺達はベッキー達が歩いてきた方向に登っていく。
すると、道の端に1メートルはゆうに超えるトカゲの死体が転がっていた。
「ベッキーが仕留めたっていうやつね」
「切り傷が2つ、とどめは突きですね」
剣の方でやったわけだ。
「イレーネ、どう思う?」
「見事だと思うわ。私も人のことは言えないけど、あの小柄な体格でよくこれだけの大きさの魔物を仕留められるものよ。それに無駄がない」
ベッキーは150センチ程度でかなり小柄な体格である。
イレーネも160センチくらいでそこまで背が高いわけじゃないが、ベッキーはさらに一回り下だ。
「Cランクでしたか……Cランクってお強いんですね」
Cからはカードの色が変わるランクだしな。
「ランクはあくまでも依頼の実績から決まる指標だから一概には言えないのよ。でも、護衛を任されるだけの実力は十分にありそうね。それに加えて、危機管理能力が高く、あの銃があるわけだし」
教授が任せるだけのものを持っているわけだ。
「ふーむ……まあいい。行くか。この辺はベッキーが倒しているから俺達の獲物がいない」
「昨日よりかは増やしたいし、6匹は倒しましょう」
「おー」
俺達は死体をあとにすると、さらに登っていった。
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