第066話 山にそぐわない人ですねー
歩いていくと、馬車の跡が山に続いているのが見えた。
その跡の先には山への登り道がある。
「道だな」
「ええ。山を切って、道を作っています。イレーネさんが言うように人が入る山なんでしょう」
そんな感じはするな。
「行ってみるか。イレーネ、さすがに火はもういい」
「そうね」
イレーネが火を消す。
「リーエ、ここから先は空から来る鳥と擬態するトカゲとやらが出てくる。魔力感知をいつもより厳重に頼む」
「わかりました」
リーエが頷いたので山を登っていく。
坂はそこまで急ということもなく、足元もしっかりしているので登りやすかった。
「山道にしては上がりやすいし、道幅も広いわね、これ、やっぱり馬車が上がる道よ」
確かに幅も5メートルはあり、結構広い。
「石材か岩塩だったか?」
「多分ね。私も詳しくは知らないけど、そんなところでしょう」
石材を切り出す魔導具とかもありそうだな。
「ヴェルナー様、鳥です」
リーエが見上げたので見てみると、確かに鳥が飛んでいた。
しかし、距離があるし、普通に飛んでいるだけのように見える。
「魔力を感じるな。魔物か」
「そのようですね。しかし、こちらに来る様子はありません」
「気を付けてね。鳥は徐々に近づいてきて、一気に来るから。それは魔物でも変わらない」
狩りをするタイプの動物はそんな感じだからな。
「リーエ、あまり見ないようにしよう。多分、見ていたら来ない」
「わかりました。射程圏内に入ったらお知らせします」
ふむ……
「イレーネ、弓で倒してくれないか?」
「弓? いいけど、矢がもったいないわよ?」
「どれほどの腕かを見たいんだ。仲間の戦力を知っておくことは大事だ」
それにより、何かがあった時の対処の仕方が変わるのだ。
「まあねー……私はリーエもだけど、ヴェルナーの戦力が見えていないんだけど?」
「何でもできるって思っておけ」
「困ったら私の後ろに隠れてください。戦闘用ホムンクルスの力を見せてあげます」
お手伝いさんね。
「物騒ねー……たまにはお姉ちゃんとか言ってよ。まあ、いいわ。矢はいつでも射れるから言って」
「了解です、お姉ちゃん」
俺達は山を登っていく。
すると、徐々にだが、上空から感じる魔力が近づいてきていた。
「魔力感知があるとわかりやすいな」
「ええ。狙われていますね」
リーエが頷く。
「そうなの?」
「見てはいけませんよ。イレーネさん、どれくらいなら当たります?」
「50メートルくらい?」
え? すごくないか?
「あなたはあなたで物騒ですよ……では、やってください。その射程ならすでに入っています」
「よし」
イレーネが肩にかけている弓を取ると、カバンから矢を取り出す。
そして、矢を弓につがえると、一気に引き、上空に向けた。
「所作が綺麗だな」
本当に美しいし、絵になる。
「でしょ? さて……えい!」
イレーネが放つと、矢がまっすぐ飛んでいく。
しかも、とんでもないスピードであり、あっという間に鳥に到達すると、矢が突き刺さり、落ちていった。
「本当に当たりましたね……」
「結構な距離があるのにな……」
あの距離なら魔法で当てるのも難しいのに。
「自信があるって言ったじゃないの。それよりも落ちていったわね。弓矢はこれがあるからダメなのよね」
鳥を回収できないからか。
「大丈夫だ」
魔法で引き寄せると、落ちていった鳥がこちらにやってきて、俺達の前に落ちた。
「あー、引き寄せることもできるって言ってたわね」
「そういうことだ」
「では、魔石を回収します」
リーエが解体を始める。
「しかし、本当に見事な腕だな。弓兵として名を上げられるぞ」
「冒険者になって、最初に学んだのが弓矢なの。これなら敵に近づかないで良いからね。まあ、すぐにそれだけではダメだってわかったけど」
さっきのように回収できないこともあるし、矢は消耗品だ。
そして何よりも弓ばかりに頼っていると、奇襲などで一気に接近された時に対処の方法がない。
「イレーネさん、この矢はどうします? まだ使えそうですけど」
リーエが回収した矢を見せてくる。
「あ、もうダメだから捨てて。矢は少しでも曲がるともうダメなのよ。当たらない矢は使えない。矢はケチらないのが鉄則なの」
プロフェッショナルな狩人みたいだ。
「鳥はどうします? 食べられるんですか?」
「あー、魔物はダメ。美味しくないのよ」
それは俺達がいた世界でもそうだった。
下手をすると、お腹を壊す。
「では、やはり魔石だけですね」
リーエが立ち上がり、魔石を見せてくる。
5センチくらいの大きさだ。
「ゴブリンやコボルトなんかよりは悪くないな。まあ、オークよりかは質と大きさが落ちるけど」
「これなら5、6000ソルってところね」
矢を使い、さらにはどっかに落ちたら回収できないかもしれないということを加味すると、微妙だな。
「イレーネ、矢を魔法で作るというのもあるぞ」
「何それ? 矢が出てくるの?」
「こんなやつ」
そう言って、魔法を使い、光の矢を出す。
「そういうのもできるんだ……」
「これはたいした魔力を使わないから弓を使うハンターがよく使っている魔法だな。距離が離れると消えてしまうから放物線状に撃つ弓兵の斉射に使えないのが難点だが」
だから戦争時は普通の矢だ。
「へー……戦争には参加しないからいいけど、すごいわね。教えてよ」
「ああ……」
頷いたが、矢を消す。
「ヴェルナー様、上から魔力を感じます」
「そうだな」
「え? 魔物?」
いや、これは違う。
それに知っている魔力が2つだ。
「ベッキーさんと教授ですね」
俺達がその場で山の上の方を見上げながら待っていると、2人の男女が降りてくるのが見えた。
「やっほー」
ベッキーが笑顔で手を振っており、その横にいる教授は興味なさそうにこちらを見ていた。
まあ、そういう人だけどさ。
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