第064話 一昨日も
イレーネが地図を描いているので俺とリーエはそれを眺める。
感想としてはやっぱり丸い。
「うーん……まあ、もうちょっとラフで良いか」
「ラフ……」
ラフ?
「うるさいわねー。似顔絵でも描いてあげましょうか?」
「誹謗中傷はNGです」
「その返しが誹謗中傷よ。まあ、こんなものでいいや」
イレーネが描き終えたようだ。
「おおまかな地理がわかればいい」
「そうそう。ヴェルナーは良いことを言うわ」
「それで今はここか」
国境壁であろう横に歪んだ線が描いてある下に丸が描いてあり、その中にはラティルナと書いてある。
「ええ。そして、ここがブレイナ」
ブレイナは右にある縦線の上に書いてあった。
なお、そのさらに右には海って書いてある。
ブレイナは位置的にはラティルナの右下だ。
「南東か」
「そうなるわね。そして、そこに行くルートはいくつかあるんだけど、主要な道としては王都に行ける南の道」
イレーネはラティルナを指差し、そのまま指をゆっくり下に動かしてく。
「確かに次がミストラですね。いっぱい線が描いてありますけど」
リーエが言うようにミストラからは5本の線が出ていた。
「ダリアがミストラは人の行き来が多い町って言ってたでしょ? ここは有名な商業の町でコスタリナ北部の中継の町なのよ。ここからコスタリナの北部の町はどこでも行けると思っていい」
大きい町っぽいな。
「そこからブレイナには?」
「楽な道はさらに南に行って、グラードの町に寄って、そこから東に行けばブレイナね。前にも言ったけど、主要な道以外は管理も微妙だし、避けた方が良い。というか、よくわからない道だから行きたくない」
まあ、主要な道が確実だろうな。
「ちなみに、日数は?」
「そこまではわかんない。行ったことないし、詳しくない」
それもそうか。
「まあ、どうせ稼ぎながらだし、その都度で良いか」
「ええ。とりあえずはミストラね。明日にでもギルドで聞けば良いかな」
ギルドなら知ってるか。
「わかった。教えてくれてありがとうな」
「全然良いわよ。さて、トランプでもしますか」
「そうするか」
俺達はワインやぶどうジュースを飲みながらトランプをしていく。
しばらくやっていたが、22時を過ぎた辺りでリーエがベッドに行き、すやすやと寝始めたのでイレーネの魔法の特訓を始めた。
イレーネは銅貨を指差しながら動かしており、最初の頃のように魔力を込めすぎて飛んでいくようなことはない。
本当にセンスはあるようだ。
「上手いものだな」
「そう?」
「ああ。魔法学校だったら上位になれるぞ」
元々、強化魔法を使っていたということもあるが、それにしてもこれだけの魔力を1日やそこらで操作できるようになるのは素晴らしい。
「イレーネさんも魔法使いになってしまうのか」
そうだな。
「良いと思う。次は指を差さずにやってみ? 多分、できるぞ」
「よし」
イレーネは手を引っ込め、銅貨をじーっと見る。
すると、銅貨がすいーっと前に動いていった。
「上手い、上手い」
「おー、最初はできる気がしなかったのに」
「そんなに難しい魔法じゃないからな。イレーネならコツさえ掴めばすぐだ」
そのコツを掴むのが難しいんだがな。
「次は? 火とか出せないの?」
「家の中だとな……」
さすがに無理。
「あー、それもそうね。火事になっちゃうか」
「慣れれば抑えられるし、問題ないんだが、最初はやはり外だ。明日にでもやってみるか」
誰もいないところで練習させよう。
「おー! 良いわね!」
「ただ、魔力操作の練習はやるぞ。これは基礎だが、一番大事なことだ。本当に遠くのものを引き寄せられることもできるんだよ」
そう言って、ムーブを使い、ボトルを宙に浮かせると、イレーネのグラスに注いでいく。
「魔法って感じがするわね」
言わんとしていることはわからないでもない。
「銅貨を浮かせるか?」
「浮かすってどうやるの?」
「力を上向きにすればいい」
「ほうほう……ほう?」
銅貨は勢い良く上に飛んでいき、天井に当たると、落ちてきた。
「今のが火魔法だったら大惨事だったな」
「そうね……もうちょっと魔力操作の練習をするわ」
「そうだな」
イレーネはその後も銅貨を使って魔力操作の練習をしていき、さすがに遅くなりそうだったのでこの日は就寝した。
翌日、リーエに起こしてもらうと、準備をし、1階の食堂で朝食を食べる。
「もぐもぐ。魔力操作は上手になりましたか?」
リーエがイレーネに聞く。
「まあまあね。硬貨を動かすのはもう指を差さなくてもできるようになったわ」
「それは素晴らしいです。大魔女イレーネさん伝説が始まりましたね」
「白銀の魔女と呼んでちょうだい」
白銀はないだろ。
もう白銀のセシリアさんは海の中なんだから。
「ご自分が好きですね」
「ホムンクルスちゃんに大人のおねーさんが教えてあげるわ。自分を愛せない人は他人も愛せないのよ」
前世の俺に言って欲しかったな……
ちょっと時間がかかってしまったが、今ならその言葉がよくわかるから良しとするけど。
「私は自分のことが好きですね」
知ってる。
お前はそうだよ。
「でしょうね。それで良いのよ。私は絵がちょっと苦手なところも含めて自分が好きなの」
ちょっと?
「銅貨を暖炉に入れたり、天井にぶつけるところもですか?」
お前、昨日、起きてただろ。
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