第063話 ふふっ
「ありがとうございます。女将さーん、定食ー」
「はいよ。ちょっと待ってね」
ダリアが奥に声をかけると、女将さんの返事が聞こえてきた。
「ここってこの時間はいっぱいになるの?」
「ええ。18時から20時がピークですね。ちょっと早めに来たんですけど、空いてませんでした」
今は17時半だ。
昨日はこのくらいに食べ終えたが、客が来だしたくらいでまだ空いていた。
「やっぱり人気なのね」
「ええ。値段の割に質が良いですからね」
俺達が話をしていると、女将さんが定食を持ってきてくれたので食べだす。
メニューは牛肉が入った野菜炒めのセットであり、これまた美味しい。
「ダリア、魚は売れたか?」
「ええ。おかげさまで売れました。その節はありがとうございました」
俺ら、何もしてないけどな。
むしろ、馬車に乗せてもらい、魚までもらった。
「こっちこそ、助かったよ。次は王都か?」
ダリアは王都の商人と言っていた。
「その辺はまだ考えているところですね。この町で何を買って、次はどこに行くかを市場を見ながら決めているところなんです。私は行商人なもんで」
そうやって、お金を貯め、いつかは自分の店を持つんだろうな。
「大変だな」
女性だし、まだ若いから旅はきついだろう。
「そんなことないですよ。楽しいですしね。皆さんはどうですか? 冒険者なんですよね?」
「魔物退治ね。私達、冒険者に登録したばかりだからまずは実績作りの段階」
「それで旅ですか?」
「あー、私達はリーンド大陸に行くのよ。それでブレイナまで行きたいの」
「あ、なるほど。じゃあ、次はミストラですね」
ミストラ?
町の名前かな?
「ええ。そこに行くことになるわ」
「ミストラはこの国で最も人の行き来が多い町です、ぼったくりの店とかもあるので気を付けてください」
そうなんだ。
「ええ。わかってる。気を付けるわ」
俺達はその後も話をしながら定食を食べると、ダリアと階段の前で別れ、2階に上がった。
そして、順番に風呂に入っていき、最後に俺が上がると、今日もローテーブルの上にはワインとぶどうジュースがあった。
「今日はイレーネの復帰祝いか?」
「イレーネさんとしての初収入記念ね」
じゃあ、仕方がないな。
イレーネの隣に腰かけると、リーエが注いでくれたので乾杯をし、ワインを飲む。
「久しぶりの仕事はどうだった?」
「悪くないわね。やっぱり動きが良くなった気がするし、疲れもない。それにあなた達の魔力感知のおかげでスムーズだったわ」
イレーネがうんうんと頷いた。
「問題なさそうなら良かった。無茶だけはするなよ」
「わかってる。それで今日の儲けは6万5500ソルだったわね」
「ああ。そこから宿代を引くと、5万2000ソル。まあ、5万ソルだな」
これが俺達の今日の成果だ。
「うーん……1人で5万なら良い儲けよ。でも、3人となると、1人当たり1万7000ソルってところ。生きていく分には問題ないけど、私達は80万ソルという当面の資金と大きな屋敷を建てるというこれからの目標がある。それを考えると、微妙ね」
俺の1ソル1円理論でいくと、日当が1万7000円。
悪くないが、これではその日暮らしのままだ。
「一応、今日はイレーネさんの確認と薬草採取がありました。それらを考慮すれば、明日以降はもう少し、上がりますね」
薬草採取に結構な時間を使ったしな。
それでいて、1つ500ソルという安価さ。
まあ、魔物と戦える実力がある者ならやらんな。
「あとは何と言ってもオークなんかの大物が見つからなかったこと。うーん……まあ、テント代なんかの初期投資を取り戻せたってところで良しとするかな」
野営グッズは6万くらいだったからな。
「イレーネがやっていた頃と比べてどうだ?」
「安いわね。まず依頼料は入っていない常設依頼の魔物退治だもの」
それもそうか。
「今日はイレーネの確認、野営グッズの料金を取り戻した、実績を作った。それで納得しよう」
やはり実績作りは大事だ。
薬草採取なんて割に合わないし、遠回りに思えるが、ランクが上がれば良い仕事が回ってくる。
急がば回れとはこのこと。
「そうね。最初だし、焦ることもないわ」
「私もそう思います。それで明日はどうしますか? また森に行くか、山に行くかです」
そうなるな。
「私は山で良いかもって思ってる。鳥は私の弓でもあなた達の魔法でも倒せるし、擬態するトカゲとやらも魔力感知の前には意味ないでしょ」
俺も受付嬢から話を聞いた時にそう思った。
「俺は賛成だ」
「私もです。明日もオークが出てこないかもしれませんし、山の方が良さそうです。何よりも受付の女性はそちらを勧めるような口ぶりでした」
確かにな。
今日の森で俺達の実力を確認し、問題なさそうだから山に行けって感じだった。
「じゃあ、明日は東にある山ね。ハイキングとしゃれ込みましょう」
ハイキングねぇ……行ったことないわ。
「あ、イレーネ、次の町はミストラなのか? その辺の地理がわからない」
「それもそうね……リーエ、紙とペンを貸して」
「どうぞ」
リーエがちょっとにやけながら紙とペンを渡すと、イレーネが描き始めた。
「地図か?」
イレーネは丸を描いていた。
「ええ。簡単なものだけどね……お手伝いホムンクルス、笑わない」
「笑ってませんよ」
口角が上がってるぞ。
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