第054話 あの程度なら魔法で壊せますね……
「こっちがヴェルナーで、こっちがリーエね」
イレーネが俺達を紹介する。
「よろしくお願いします。私はコスタリナ王都の商人でダリアと言います」
ダリアは人が良い感じの笑顔で挨拶をしてきた。
「ああ……良いって?」
イレーネに確認する。
「ええ。乗せてくれるってさ。お金も別にいいそうよ」
ほう……
「ダリア、感謝する。しかし、料金はいらないのか?」
「ええ。私一人ですし、男性が乗ってくれた方がありがたいです」
ただ男性が乗るのでは逆に怖いが、それが女子供を連れていれば別か。
「じゃあ、すまないが頼む。俺もイレーネも剣には自信があるし、何かあれば対処しよう」
「任せておいて」
「ありがとうございます。では、後ろに乗ってください。そろそろ出発だと思います」
「わかった」
俺達は後ろの方に回り、荷台に乗り込む。
荷台は三分の二くらいが木箱で埋まっていたが、座れるスペースくらいはあった。
「ラッキーだったな」
「そうね」
リーエが自分の顔を指差して功績をアピールしてきたので頭を撫でる。
「国境まではどれくらいだ?」
「そんなに離れてないから数時間ってところね。午前中には着くと思うわ」
コスタリナの玄関町が1、2日って考えると、向こうと違い、こっち側は国境にかなり近いところに町があるんだな。
「出発しますよー」
ダリアの声が聞こえてくると、馬車が動き出す。
そして、今回は特に検問もなく、門を抜け、町を出た。
「さて、到着まで暇だし、トランプでもしましょうか」
「そうするか」
「まずは日課のスピードですね」
リーエとイレーネがスピードを始めたので眺める。
イレーネはもう慣れたものなのでとんでもない手の速さでゲームをしていた。
日課が終わると、3人でまったりとやっていく。
のどかだなーと思いながら2、3時間ほどトランプをしていると、馬車が止まった。
「ん?」
「どうしたのかしら?」
「何かありましたかね?」
俺達はトランプを持ったまま、馬車から降りると、前方を見る。
すると、数十メートル先に左右にずらーっと続く壁が見えた。
「国境か。すごいな」
なんぞやの長城みたいだ。
もっとも、高さが10メートル程度あるが……
「話には聞いていたけど、私も初めて見るわ。あれがリーフェル王国が作った国境壁よ」
「とんでもないお金がかかっていそうです」
「確かにすごそうだ」
俺達が感心していると、ダリアが御者台から降りてきて、こちらにやってくる。
「国境に着きました。ここから入国審査がありますので少し休憩ですね」
ん?
「入国か? 出国じゃなくて? あの壁はリーフェル王国のものじゃないのか?」
「出国には審査はいらないですからね。兵士の方がちょっと確認して終わりです。入国はコスタリナの文官の方がチェックします。なので2人が来ますよ。これは両国の協定で決まっていることなんですよ。もちろん、逆も同じです」
へー……
「審査ってどんなのだ?」
「それもたいしたことじゃないです。私達は荷のチェックがありますけど、冒険者の方ならカードを見せて、ちょっとした質問に答えるだけなので数十秒で終わりですよ」
そんなもんか。
俺達は待っている間に身体を伸ばしたりする。
すると、前の方でチェックをしている2人組が見えた。
1人は槍を持った兵士であり、もう1人は制服を着た文官だ。
リーフェル王国の兵とコスタリナ王国の文官だろう。
「変わったルールだな」
「リーフェルとコスタリナって仲が悪いんだけど、昔から輸出入は積極的に行っていたのよ。だからよほどの戦争状態にでもならない限り、それを止めることはできないわけ。まあ、楽で良いじゃない」
それもそうだな。
それに両国の関係は俺達にはもう関係ないことだ。
俺達がそのまま待っていると、兵士と文官がこちらにやってくる。
そして、兵士の方がダリアと共に荷のチェックを始めると、クリップボードを持った文官がこちらに来た。
「どうも。待たせてすみませんね」
文官がまったく気にしてなさそうな顔で謝ってくる。
「構わない。そっちも仕事だろ」
「そうなんですよ。それで3人は団体さん?」
「ああ。妻と親戚の子だ」
文官がクリップボードの紙に何かを書いていく。
「冒険者?」
「俺だけな」
そう言って、冒険者カードを見せた。
すると、またもや何かを書きだす。
「どうも。コスタリナには何故?」
「ブレイナまで行って、そこからリーンド大陸だ。世界を回る旅をするんだよ」
「なるほど。はい、お時間を取らせました。ようこそ、コスタリナに」
文官は業務的にそう言うと、荷のチェックをしている馬車の方に向かった。
「もう終わりか?」
「みたいね」
「本当に早いです。私やイレーネさんの名前すら聞いてきませんでしたよ」
適当だな。
そのまま見ていると、ダリアの方のチェックも終わり、兵士と文官は次に行った。
「お待たせしました。こちらは無事に終わりましたが、そちらは?」
「俺達も問題ない。本当にすぐに終わったな」
「いつもこんな感じ?」
イレーネがダリアに聞く。
「ええ。最近は別に両国で何かが起きているということもないですからね。兵士の方も文官もそんなにやる気がないです」
確かにそんな感じはしたな。
「まあ、早いに越したことはないけどな」
「まったくです。もうしばらくお待ちください。すべての審査が終わったら出発です」
「わかった」
ダリアが御者台に向かったので俺達も馬車に戻り、トランプを再開し、出発を待つことにした。
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