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魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~  作者: 出雲大吉
第2章

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50/58

第050話 あと少しです


 その後も俺達がのんびり待っていると、門を抜け、町に到着した。


「やれやれ。やっと着いたか」


 教授が本を閉じる。


「宿屋でゆっくりしましょうか。あ、ヴェルナーさん達も国境を越えるんですよね? 明日の朝に6時前に南門に行った方が良いですよ。キャラバンがいますし、それに乗ると、国境越えもスムーズです」


 ベッキーが親切にも教えてくれる。


「6時か。あ、そうだ。おすすめの宿屋を知らないか?」


 ついでだから聞こう。


「おすすめですか? うーん、私達が泊まるのはちょっと良いところなんですよね。教授が仕事をするもんで」

「高くなくていい。1万ソルくらいで良い感じなところだ」

「うーん、教授、知ってます?」


 ベッキーが教授に振った。


「名前は忘れたが、南門近くにある赤い屋根の宿屋がそのくらいだったはずだ。以前、ギルドに紹介されたが、テーブルが狭くて失敗だった宿屋だな。その他は問題なかった」


 赤い屋根ね。


「じゃあ、そこに行ってみる」

「ええ。では、また明日」


 ベッキーと教授は先に馬車から降り、去っていった。


「個性的な2人でしたね」

「確かにな。なあ、俺とあの教授って似てたか?」

「似てませんよ」

「全然、違うわね」


 なら良かった。


「いや、ちょっと共感できるところがあったからな」

「ありましたね。でも、ヴェルナー様は違います」


 だよな?


「おーい、もう着いたぜ。話してないで降りてくれよ」


 御者が覗き込んでくる。


「すまない。降りる」


 俺達は慌てて馬車から降りた。


「すみません。ここって北門ですか?」


 リーエが御者に聞く。


「ああ。そうだよ」

「ということは南門はあっち?」


 リーエがそう聞きながら通りを指差した。


「そうだよ。この通りをまっすぐ行けば南門に着く」

「ありがとうございます」


 リーエがお礼を言うと、御者が前の方に行ったので南門に向かって通りを歩いていく。

 この町もやはり人が多く、賑わっていた。

 所々に兵士の姿が見えるものの、前みたいに誰かを探している様子もなく、普通に巡回している。


「もう大丈夫そうだな」


 念のため、まだミスディレクションはかけておくが、イレーネが捕まるということはなさそうだ。


「ええ。マリティアでどうなっているのかはわからないけど、私達が逃げているとは思ってなさそうね」

「ちょっと執念深そうなお父様のようでしたが、目的は殺すことだったようですし、海に落ちて死んだのなら良いって感じですかね」


 さすがにあそこから落ちて生きているのは奇跡に近いからな。

 もし、生きていたとしてもただじゃすまないし、すぐに見つかる。

 だから海に消えたのだろう。

 そう思ってくれると助かる。


 俺達が通りをずっと歩いていくと、遠くに門が見えてきた。


「あれが南門だな。えーっと、赤い屋根は……」

「あそこにありますね」


 リーエが指差した先には確かに2階建ての赤い屋根の建物があった。


「行ってみましょう」


 さらに歩いていき、赤い屋根の建物の前に来る。

 そこは確かに宿屋のようであり、値段表が貼られた看板が入口の前に立てかけられていた。


「個室が8000ソル、3人部屋が朝夕食付きで1万2000ソルですね」


 ここっぽいな。


「おすすめだし、ここで良いか?」

「ええ。南門に近いのが良いわね。明日は早いし」


 確かにそうだ。


 俺達は宿屋に入り、受付に向かう。

 受付にはおばさんがおり、こちらに背を向けて本棚の整理をしていた。


「こんにちは」


 イレーネが声をかけると、おばさんが振り向く。


「ん? いらっしゃい。泊まりですか?」

「ええ。3人部屋で1泊ほど。空いてますか?」

「はい。空いていますよ。朝食と夕食はどうされますか?」

「お願いします」


 外で異世界の料理を堪能したいと思うが、それはコスタリナに着いてからだな。

 あと、お金に余裕ができたら。


「では、1万2000ソルです」


 そう言われたので財布を取り出し、料金を支払う。


「ちょうどだ」

「じゃあ、これが鍵ですね。お部屋は2階の1号室です、ごゆっくり」


 鍵を受け取ったので階段を上がり、一番手前の部屋に入る。

 部屋はそこまで広くなかったが、かなり綺麗であり、風呂も確認したが、浴槽があり、ゆっくりできそうだった。


「ふう……ようやくここまで来られたわ。明日にはこの国ともおさらばね」


 テーブルにつくと、イレーネが一息ついた。


「長かったですね」

「この世界に来てから色々あったもんな」


 まだ1週間くらいしか経っていない。


「ごめんね。でも、助かったわ」

「気にするな」

「そうですよ。私はご主人様に良い人ができて、嬉しいです」


 わざわざハンカチを取り出して、目元をぬぐうな。


「お母さんみたいなホムンクルスちゃんね」

「似たようなものです」


 絶対に違う。


「そんなことより明日までどうする? トランプでもするか?」


 まだ昼だ。


「昼だし、ご飯でも食べに行きましょうか。それとちょっと相談」


 ん?


「何だ?」

「これからコスタリナに入り、ブレイナに向かう。まずは国境を越え、向こうの玄関の町になるラティルナに行くわ。そこまで1日か2日かかる。それ以降も旅になるわけだけど、野営道具を買わない?」


 なるほど。

 以前は馬車の中で寝たが、皆、ぐちぐち言ってたからな。


お読み頂き、ありがとうございます。

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