第048話 あー……
翌朝、リーエに起こしてもらい、無料の朝食を食べると、準備をする。
「どう?」
昨日は1日中寝巻きでゴロゴロしていたイレーネが冒険者服に着替え、ドヤ顔でポーズを取る。
「綺麗だな。絵になる」
「お美しいですー」
ぱちぱちー。
「そうでしょう、そうでしょう。ヴェルナーもかっこいいし、リーエも可愛いわよ」
「「どうも」」
「じゃあ、行きましょうか。追手はいないと思うけど、ヴェルナー開発の有能魔法ミスディレクションをよろしく」
ふっ、有能な人間が作った有能魔法をかけてやるか。
イレーネにミスディレクションを使うと、部屋を出た。
そして、チェックアウトすると、宿屋を出て、町中を歩いていく。
「結構、人が多いな」
朝の7時くらいだが、かなり賑やかだ。
「これまでの町はどこもそうでしたね。人口の多い国なんでしょうか?」
「いえ、特にそういうことはないわ。私達が通ってきた街道は国の主要な道なわけ。だからそこの周辺の町々が発展してるし、魔物もそんなに出てこないわけよ。街道を外れた町や村はそこまでね」
なるほど。
確かに魔物はほとんど出てこなかった。
盗賊はいたけど。
「これから先もか?」
「ええ。国境まではその道を通るし、コスタリナに着いてもそういう街道を通るわ。そうじゃないと道が荒れていたりするし、馬車は大変なのよ。それに魔物が出る確率が高いから料金も跳ね上がる。私達が高ランクの冒険者だったら護衛依頼とかを受けて、無料で行けるんだけど、Fランクじゃ無理ね。頑張ってEランクになっても無理。やっぱりCランク以上は必要になってくるわ」
そうか……
今は節約したい時だしな。
「コスタリナに着いたらセシリアの冒険者カードを使うとかは?」
「ごめん。リスクは減らしたい。コスタリナはリーフェルと仲が悪いが故に安全とも言えるけど、逆に言うと、密偵とかもいると思うのよね。私が生きていると思われたらマズいでしょ」
それもそうか。
「じゃあ、仕方がないな」
「ええ。それにリーエが言うようにイレーネとしてやり直すわ。もう名前も馴染んできたし、第2の人生を生きる。私はイレーネ・ランゲンバッハなのよ……ねえ、あなた達の名字ってなんか重厚よね?」
そう言われてもな。
「かっこいいだろ」
「不屈の女帝の名前と帝国始まって以来の天才大魔導士の名字ですよ」
「荷が重いわねー……」
いや、ランゲンバッハもだが、イレーネはそんな珍しい名前じゃない。
そういう有名人やお偉いさんのようになってほしいと思って、名付ける親は普通にいるし、それは別に不敬でもない。
アンネリーエも教科書に載っている偉大な魔女からもらった名前だ。
「イレーネなら大丈夫だよ」
「白銀さんですもんね」
「そうかなー? まあ、名前に負けないように頑張るかな」
頑張ってくれ。
俺達が話をしながら歩いていくと、南門にやってくる。
門の近くには数台の馬車があり、出発の準備をしていた。
「どうする?」
イレーネに確認する。
「商人は厳しそうね……」
「若いのは無理か?」
商人は2人いるのだが、どちらも若い男性だ。
「必ずしもそういうわけじゃないけど、あれはエアリー商会とハンクス商会なのよ。あまり良い噂を聞かないところ」
なるほど。
「寄合馬車もあるぞ」
2台並んでいる馬車があり、普通の町の人や冒険者が乗っている。
「寄合馬車かー……まあ、ベルクまでって考えたら半日。昼前には着くし、そっちが良いかも」
「よろしいのでは? 女性も乗っていますし」
リーエが言うようにおばちゃんと若い冒険者の女性も乗っている。
「それもそうね。距離がないからそんなにお金もかからないと思うわ」
「知り合いは乗ってるか?」
「いえ、いないわ」
じゃあ、大丈夫か。
相手が一方的にイレーネというか、セシリアを知っているケースもあるが、そこは昔と見た目が変わっていることとミスディレクションで誤魔化せる。
「じゃあ、それで行こう」
「わかったわ。ちょっと話してみる」
イレーネが馬車に向かって歩き出したのでついていく。
すると、馬車の車輪のチェックをしていた30代くらいの男性がこちらに気付いた。
「ん? 客か?」
「ええ。ベルクまで行きたいのよ。まだ空いてる?」
「ああ。1人5000ソルだ。あ、いや、そっちの嬢ちゃんは小さいから2500ソルでいい」
おっ、良心的。
子供は半額らしい。
「私が小さくて良かったですね」
「そうだな」
なでなで。
「ヴェルナー、お金」
「あ、そうだな」
リーエの頭を撫でるのをやめ、財布を取り出すと、料金の1万2500ソルを支払う。
「じゃあ、確かに。あんたらあっちの馬車に乗ってくれ」
御者が奥の方を指差したのでそちらに向かう。
馬車の中には若い女性冒険者と研究者みたいな白衣を着た男性が座っていた。
若い女性は小柄であり、ショートカットの茶髪だ。
軽装の装備であり、ショートソードを持っているところを見ると冒険者のようだ。
男性は40代くらいであり、身体つきが華奢で装備も持っていないため、冒険者ではない。
しかし、ぼさぼさの髪に眼鏡、さらには白衣を着ているので研究者のような気がする。
「あ、こんにちは。乗られますか?」
若い女性冒険者の方が聞いてくる。
「ああ」
「どうぞ。教授、ずれてください」
「まったく。他の客が来るとは……」
男性の方がぶつぶつ言いながら端に避けた。
「そういうこと言わない。すみません、社会不適合者なんです」
ずきっ。
「い、いや、人には人のペースというものがあるし、それぞれの考え方というのがある。俺は気にしない」
「まったくもってその通りだ。良いことを言うな、君は」
うん……
同意されちゃった……
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