第047話 そりゃ友達もいないのに作ったんだからそうでしょうよ……
「仲が良いことは素晴らしいことだと思います。でも、トランプは少し待ってください。ヴェルナー様、銃とは?」
リーエが本題に戻す。
「ああ。俺がいた世界は本当に魔法がなかった。魔導具すらもない。ただし、代わりに科学が発展した社会であり、正直、この世界や帝国と比べると天と地ほどの差があるほどに発展していた」
「以前、そう聞きましたが……」
リーエには色々と話をしてある。
「全然、想像が付かない」
イレーネはそうだろうな。
「とんでもないスピードで走る馬の要らない車もあったし、空を飛ぶ機械もあった。そして、宇宙まで行く乗り物まであったんだ」
「宇宙?」
イレーネが首を傾げる。
「夜に空を見ると、星々が見えるし、綺麗な月が見えるだろ?」
厳密には俺が知っている月じゃないと思うけど。
しかし、月ってどこにでもあるんだな。
「ええ。見えるわね」
「あの月にすら行ける乗り物があったんだ」
「ごめん。説明されても全然、想像が付かない」
正直に言えば、俺もよくわかっていない。
「まあ、そういうとんでもなく発展した世界だと思ってくれればいい。そして、発展した世界だからこそ、武器も発展していたんだ。その1つが銃だ。詳しい仕組みは俺もわかっていないが、火薬という爆発する粉を使い、矢じりを勢い良く飛ばす武器だと思ってくれ」
実際はあの銃から魔力を感じたので火薬ではないと思うが。
「ふーん……とんでもない速度だったわよね? 暗かったとはいえ、まったく見えなかったわ」
「普通の弓矢と比べると速度が段違いなんだ。あのサイズだとそこまでの威力は出ないが、それでも当たれば致命傷だし、当然、急所に当たれば死ぬ。そして、一番恐ろしいのが力のない子供でも扱える武器だということだ。たいした技術もいらない」
弓は鍛錬がいるが、銃はたいした鍛錬を必要としない。
もちろん、技術としては上には上があるが、使い方さえわかれば誰でもその辺にいる人間を殺せる武器だ。
「魔道具が発展した世界と思っていましたが、この世界にはそんなものまであるんですね。たいした脅威のない世界だと思っていましたが、認識を改める必要がありそうです」
俺もそう思っている。
正直、あの銃はかなり焦った。
「そうは言うけど、あんなの絶対に普及してないわよ? いくら私が2年ほど花嫁修業をしていたとはいえ、あんなのが出てきたらさすがに耳に入るもの。革命よ、革命」
銃が出てきた辺りから戦争のやり方が変わったって話だからな。
「普及はしていないが、一部の人間は持っていると思った方が良い」
「貴族ね……」
「ああ。イレーネは強いんだと思うが、絶対に慢心するなよ。ある程度の傷なら俺とリーエが治してやるが、頭や心臓を撃たれたらさすがに助けられない。俺はまだ人を生き返らせるだけの魔法は使えないんだ」
それこそ神域だ。
「とんでもないことをさらっと言う」
「ヴェルナー様は恨まれたことで追われることになりましたが、罪状は禁術に手を出したことです。適当な理由だなと思っていましたが、あながち間違ってなさそうなんですよね」
「人を生き返らせるとか絶対に禁術よね。冒涜よ」
「ギルティ……」
リーエとイレーネがじーっと見てくる。
「研究をしているだけだ。使ってないからセーフ」
「「ギルティ……」」
口を揃えるな。
「そこはいいから。とにかく、注意だけはしてくれ。リーエもな」
「わかった」
「わかりました」
2人が頷く。
「そんなところだな」
「よし、トランプをしましょう」
好きだなー……
いやまあ、魔力障害のこともあるから良いんだけどさ。
俺達はその後、トランプをしながら過ごしていく。
そして、夕方になり、夕食を部屋で食べると、順番に風呂に入った。
昨日とは違い、1人1人ゆっくり入ると、ソファーで注文したルームサービスのワインとぶどうジュースを飲む。
「あー、幸せね」
「そうだな」
「美味しいです」
久しぶりの贅沢だ。
そんなに高くないワインだが、味なんかわからないので別にいい。
「ヴェルナー、自慢話でもしてよ」
イレーネは本当に良い奴だな。
「そうだなー……戦争の話ばかりしてたから研究職の時の話をしよう。何を隠そう、ミスディレクションを作ったのは俺だ」
あ、ミスディレクションで町中で裸になったバカは俺じゃないぞ。
「そうなの?」
「戦争で活躍し、そこそこ有名になったことと、町を歩いている時に話しかけられるのが好きじゃなかったから目立たないようにする魔法を作ったんだ。これを作った時にあいつは強いだけでなく、こういうこともできる天才だと評判になったんだな。それで年で一番魔法に貢献したという功労賞をもらった。なお、そこから3年連続で取ったな」
すごかろう?
「さすヴェルねー……でもさ、そこまで功があったのに追われる身になっちゃったの? そりゃ周りから嫉妬や妬みで恨まれるかもしれないけど、王様とかの上の方は庇うんじゃない?」
うーん……
「庇ってくれる気配はなかったな……やっぱり嫌われてたんじゃないか?」
さすがに陛下や大臣相手に自慢話なんかしてないし。
「おそらくですが、脅威に感じられたのだと思います。功績は素晴らしいですし、これからも帝国のために頑張ってくれるならこれ以上の味方はいません。しかし、一方で変わり者で結婚もせず、少女のホムンクルスを作って悦に浸っている引きこもりです」
おい……
「そこまで言う?」
「言います。これは実際がどうかではなく、周りがどう思うかなんですよ。家族がいないというのは身軽ということです。それでいて、庶民で帝国への忠誠も微妙です。そして何よりも何を考えているかわからない人間というのは怖いんですよ」
「それがとんでもない天才だもんね。ちょっとわかるわ」
そうなのか……実は何も考えていないのに……
「そういう目で見られていたのか……」
「おそらくですが……そう思っていたから上も止めなかったんじゃないですかね?」
ちょっとショック。
国のためにあれだけ貢献してきたのに。
まあ、半分は自己顕示欲を満たすためだったけど。
もう半分は魔法への意欲……あ、確かに帝国への忠誠心はないわ。
「知らない人間は怖いか……少しわかるな。俺は人付き合いが苦手だった。それは嫌われるのが怖いのもあるが、相手を知らないから何を話していいのかわからないこともある」
知ろうとしないから知らない。
「ヴェルナー、それはね、向こうも思っていることなのよ。あなたが何が好きで、何が嫌いか、もっと自分の人となりや趣味嗜好を話せば、向こうも話してくれるわ」
イレーネがうんうんと頷きながら肩に手を置いてきた。
「イレーネはトランプが好きだな」
あと自分の容姿。
「あなたは自慢話が好きね。ほら、どんなことでも良いからもっと自分をさらけだして、話してみて。お嫁さんにしたい冒険者ナンバーワンと評判の私が受け止めてあげるから」
多分、自称。
「俺、本当にロリコンじゃないぞ」
「知ってる。大人が怖かったから子供のホムンクルスにしたのよね」
「イレーネさんの胸元や足をチラチラ見ていますもんね」
まあ……
うーん、さらけだして良いもんか?
いや、さすがに性的嗜好は違うか。
「実は俺もトランプが好きなんだ」
「良いわね。やりましょう」
俺達はワインやぶどうジュースを飲みながらトランプをしていき、いい時間になったので就寝した。
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