第151話 ずーっとトランプも疲れますね
ロズリーヌがテントの中に入ったので焚き火に当たる。
「ロズリーヌにも思うことがあるんだな」
「みたいね。私はああいうことを考えたことがなかったわ。いつも聞かれたら普通に答えていた」
イレーネは優しいからな。
けっして、ロズリーヌが優しくないという意味ではない。
「積極的には教えなかったか?」
そう聞きながら隣に座っているイレーネの肩を抱き寄せた。
すると、イレーネが頭を預けてくる。
「ソロだしねー……身内であるヴェルナーに教えるのとは意味が違うわ」
最初から親切に教えてくれていた気もするが、まあ、最初から一蓮托生か。
「ロビンやアイリーンも親切だったが、やっぱり奥に行くことは言わなかったしな」
アイリーンはトカゲというか、蛇が奥にいそうなことは教えてくれたが、やはり抜けがけをしていた。
まあ、俺達も含めた全員がやったわけだが。
「確かに私もあの場面だったら言わないわね。ロズリーヌが言っているのはそういう意味か……」
「どうしても教えすぎじゃないかって思ってしまってな……ありがたいが、ちょっと気になったんだ。俺達の業界ではまず教えない。リーエはともかく、弟子にもそこまでのことは教えないもんなんだ」
魔法の技術は秘匿する者がほとんどだ。
俺みたいないくつもの魔法を発表してきた研究者でも教えてない技術が多い。
「私には教えてくれるじゃないの」
「弟子じゃないからな。身内だ」
意味合いがまったく違う。
「……キスする?」
「リーエが白い目で見ているからやめとくかな」
抱き寄せた辺りからすんげー見てる。
「気にしないくせに」
「まあ、それでもな……」
なんかすごい見ているんだもん。
「私のことは気にしなくていいですよ。メイドのことを気にする人はいませんし、ましてや、私はホムンクルスです。好きなだけイチャイチャすればいいと思います。でも、今は仕事中ですよ?」
まあな。
「よし、切り替え。仕事、仕事。それで見張りの分担はどうする?」
んー……
「リーエ、先にやるか?」
「いえ、やはり私は真ん中を担当します。私は起きるのも寝るのも得意ですから」
俺達も寝るのは得意だな……
あ、いや、得意じゃないから起きるのも苦手なんだ。
「イレーネ、俺が先にやるよ」
「じゃあ、私があとね。リーエ、寝ましょうか」
「ええ」
2人が立ち上がってテントに行ったので火や星を見たりするだけの見張りを始めた。
やはり暇だったが、特に問題もなく、過ごしていくと、時間になったのでリーエと交代する。
そして、リーエの番が終わった時に一度起きたが、そのまま就寝した。
翌日、イレーネに起こしてもらい、テントを出る。
すると、焚き火の前でリーエがロズリーヌに見守られながら何かを解体していた。
「何してんだ?」
「あ、ヴェルナー君、おはようです。見事にウサギがかかってましたよ。これを焼いて、朝食と昼食にしましょう」
マジでかかったのか。
「ちょっと見たかったな」
「私は見た。可愛いウサギだったわね」
うーん……見なくて正解かもしれない。
テントを片付け、イレーネと共に焚き火の前に腰かけると、リーエがウサギ肉を焼いていく。
「そういえば、俺、ウサギを食べたことがないな」
軍にいた時も経験がない。
「そうなの? 美味しいわよ」
「ハーブを少しかけると美味しいですね」
へー……
リーエが焼いた肉を皿に乗せると、ロズリーヌが自前のハーブをかけ、俺達に渡してくれる。
「どうぞ、食べてください」
勧められたので一口食べてみる。
すると、鶏肉にも似た味わいだが、どこか違う独特な味がした。
しかし、普通に美味しいし、パンチの利いたハーブとよく合っている。
「へー……美味いな」
「ハーブがすごいわ。香りも良いし、良いアクセントになっている」
「でしょー? ウチで売ってます」
商売上手だな。
俺達はウサギ肉を食べていき、残った肉をしまうと、出発する。
「リーエ、ウサギも解体できそうか?」
「ええ。ばっちりです。もう猪でも解体できますよ」
猪ねー……全部は食べられないし、残った肉は売れないかね?
「罠も含めてその辺を揃えてみるか」
「ええ。そうしましょう。缶詰も悪くないけど、やっぱり獲れたてを調理した方が良いわ」
「賛成です」
俺達は頷き合うと、トランプを始めた。
この日も天気が良く、平和な雰囲気で過ごしていく。
昼には残ったウサギ肉を食べたが、冷めていても十分に美味しく、満足のいくものだった。
そして、午後からもトランプをしていくと、徐々に日が落ち始める。
「今日中に着くかしら?」
「どうですかね?」
「ちょっと聞いてみる」
立ち上がると、荷台から身を乗り出して、前方を見る。
すると、かなり遠いがぽつんと白いものが見えた。
「ロズリーヌ、あれかー?」
「ええ。もうちょっとです。多分、暗くなりますが、間に合うと思います。このまま宿屋に向かってもよろしいですか?」
宿屋を知らないから任せるべきだな。
「ああ。頼む」
「わかりました。それではもう1、2時間お待ちください」
「わかった」
頷くと、荷台に戻る。
「あとちょっと?」
「ああ。もう少しだ。待とう」
俺達はトランプをしていったのだが、辺りが暗くなり始めたのでやめ、到着を待つ。
すると、日が完全に落ち、夜になったところで町に入った。
町は夜だが、どこもかしこも灯りがついており、夜なのにかなり明るかった。
それに人も多く、賑わっている。
「かなり大きい町みたいだな」
「治安はどうですか?」
「悪くないと思う。女性が一人で歩いている」
ミストラやルミフィアではまず見なかったことだ。
そのまま町中を見ていると、馬車が止まったので降りた。
「お待たせしました。こちらになります」
ロズリーヌがこちらにやってくる。
「ああ、お疲れさん」
「はい。例によって、チェックインをしてきますので馬車を見ていてください」
「わかった」
ロズリーヌが宿屋に入っていったのでその場で待っていると、しばらくして戻ってきた。
「部屋を確保できました。ヴェルナー君達は2階の8号室ですね」
ロズリーヌが鍵を渡してくる。
「いくらだった?」
「1泊2食付きで1万4000ソルです。また、食事は1階の食堂で食べるそうです。もうこんな時間ですし、ご一緒しませんか?」
「そうするか。じゃあ、先に行って、席を取っておく」
「お願いします」
ロズリーヌが御者台に乗り、馬車を動かしたので宿屋に入ると、エントランスの奥に受付があり、その右に食堂があったのでそちらに向かった。
食堂は混んでいたが、空いているテーブル席を見つけたので席につき、ロズリーヌを待つ。
すると、すぐにロズリーヌがやってきたので料理を頼み、一息ついた。
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