第146話 旅も大変ですね
「それでは私はお先に休みます」
夕食を終えると、ロズリーヌが立ち上がった。
「ああ。見張りはしておく」
「お願いします。もし、何かあったら遠慮なく起こしてください。遠慮される方が困るので」
ロズリーヌが苦笑いを浮かべる。
まあ、Bランクからしたら当然の反応だ。
「わかっている。明日は何時出発だ?」
「6時には出ます」
まあ、そんなものか。
「わかった」
「では、おやすみなさい」
ロズリーヌは自分のテントに入っていった。
「イレーネ、今、何時だ?」
「19時前ね……見張りの分けはどうする?」
「うーん……」
6時出発ってことは1時間前には起きるな……
となると、19時から5時の10時間か……
「最初に4時間、後は3時間交代だな」
「そんなところね」
「ふーむ……私が真ん中をやりましょう」
リーエの最後はない。
ロズリーヌにリーエが見張りをしているところを見られると、ちょっとマズいのだ。
「じゃあ、先に俺がやるからイレーネは最後を頼む」
「わかったわ。じゃあ、お願いね」
イレーネは懐中時計を取り出し、渡してくる。
そして、立ち上がると、リーエと共にテントに向かった。
1人になってしまったので周囲を探りつつ、火を見る。
パチパチという焚き火の音がどこか哀愁を漂わせていた。
1人だとやることないな……
昔はずっと1人だったし、それが気楽で良かった。
むしろ、誰かといることが疲れたし、きつかったまである。
でも、今はリーエがいてくれるし、イレーネもいる。
もう1人でいる時間の方が少ないくらいだ。
それでも一切、疲れないし、心地が良かった。
何よりも1人だとつまらないし、寂しいと思うまである。
それほどまでにリーエとイレーネがそばにいてくれることが当たり前になっているのだ。
変わるものだなと思いながらひたすら時間が過ぎるのを待ち続けた。
そして、長い時間、焚き火を見ながら過ごすと、23時になったのでテントに向かう。
テントではイレーネとリーエが布団に入ってすやすやと寝ていた。
「リーエ、リーエ」
リーエを起こすのは珍しいなと思いつつ、声をかけながら身体を揺する。
すると、リーエが目を開けた。
「もう時間ですか……では、行ってきます」
リーエは眠そうな顔で身体を起こし、布団から出る。
「2時までな」
そう言って、懐中時計を渡した。
「承知しました。ヴェルナー様はゆっくりとお休みください」
リーエがテントから出ていく。
「終わったのー……?」
起こしてしまったようでイレーネが薄目を開けていた。
「終わった。1人はつまらんぞ」
「そんな気がする……寒かったでしょ?」
「ちょっとな」
頷き、布団に入る。
「冷たいぃ……」
「温かいな……おやすみ」
「おやすみ……」
安心感と共に目を閉じると、すぐに眠気が襲ってきたのでそのまま就寝した。
次に目が覚めた時はリーエがイレーネを起こす時だったが、すぐに二度寝する。
そして、朝になり、イレーネに起こしてもらうと、テントを出た。
「おはようです。何もなかったようで何よりです」
ロズリーヌが挨拶をしてくる。
「ああ。今日は森だが、魔物が出てきた場合はどうする?」
「無視ですね。この森はウルフが多いのでそこまで稼げません」
ウルフか。
「ウルフは森から飛び出して、襲ってくるイメージがあるんだが」
「襲ってきますね。まあ、すぐに撃退です」
ロズリーヌがカバンからテニスボールくらいの石を取り出した。
「魔道具か何かか?」
魔力は一切、感じないが。
「ただの石ですよ。これはこう使うんです」
ロズリーヌは石を投げる。
すると、とんでもないスピードで平原を飛んでいった。
とんでもない肩だ。
「ピッチャーやれよ」
「ぴっちゃー? よくわかりませんが、これが古き良き人間の武器である投石です。ウルフ程度ならこれで追い払えます」
追い払うというか、即死しそうだ。
「じゃあ、任せる」
「ええ。あなた達は夜をお願いします。それではテントを片付けたら出発しましょう」
「ああ」
俺達はテントを片付けると、荷台に乗り込む。
すると、すぐに馬車が動き出し、森に入った。
「暗いわね……」
朝早いとはいえ、かなり暗い。
木の数も多いし、その木の1本1本が高いのだ。
「眠かったら寝ていいからな」
「多分、昼過ぎには寝るわね。だから今夜は私が最初にやる」
となると、俺が朝までだな。
「見張りはどうだった?」
「暇。つまんないからエンチャントの練習をしてたわね」
「私は星空を見ていました。もしかしたら帝国で見た星空と一緒なのかなと思いました」
リーエは可愛いな。
「トランプでもするか。ずーっとやりたいって思ってた」
「良いわね。実に良いわね。私もそう思ってたわ」
「同感です」
俺達はトランプを始める。
たまにウルフの鳴き声が聞こえてきたりもするが、特に止まることなく進んでいき、昼になると、昼食を食べた。
午後からはイレーネが寝始めたのでリーエとトランプをする。
途中、休憩を挟んだりしながらも進んでいくと、ちょっとした広場に出た。
すると、馬車が止まったのでイレーネを揺する。
「イレーネ、着いたみたいだぞ」
「んー……早いわねー……って、まだ森じゃないの」
寝ぼけてるな。
「今日の野営地だよ」
「あー、森で一泊だったわね」
イレーネが身体を起こしたので馬車から降りると、ロズリーヌがやってくる。
「今日はここで野営をします」
「良い具合の広場があるんだな」
これまではずっと森だった。
「ここは地元の有志が作った野営場です。ありがたいですよね。さて、今日も鳥を獲りにいきますが、せっかくですし、ご一緒しますか?」
「あ、じゃあ、私が行ってくるわ」
イレーネが手を上げる。
「頼む。俺達はテントの設営と焚き火の準備をしておく」
「お願いします」
「よろしくね」
ロズリーヌがテントと野営グッズを置き、イレーネと共に森の中に入っていったので俺とリーエは手分けをして、野営の準備を始めた。
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