第143話 やっぱり可愛い枠は私ですね
俺達が近づくと、金髪の女性が馬車から降り、深々と頭を下げてきた。
馬車を降りるとわかるが、本当に小さい。
140センチもあるだろうか?
「おはようです。ロズリーヌです。この度は護衛の依頼を受けてくれるということでありがとうです」
声もしゃべり方も子供だ……
一瞬、頭にロリリーヌってよぎったぞ。
「ヴェルナーだ。こっちがリーエ。ロズリーヌは何歳なんだ?」
「え……あ、はい……これでも29歳です」
「「「29!?」」」
あまりの衝撃に3人で口を揃えてしまった。
「すみません……いつもそんな感じです。二つ名は魔女です。心ない人は合法のロズリーヌって呼びます」
二つ名って……
「あ、いや、ごめんね。年上とは思わなかったから」
「良いんです」
俯いている姿は本当に子供だ。
「えーっと、ロズリーヌはどこまで?」
「とりあえずはマルーン王国の王都にある実家に帰ります。そこからはまた考えますね」
俺達はちょうどいいが……
「実は俺達もマルーン王国の王都に行くんだ。乗せてもらえるとありがたいが、大丈夫か?」
「もちろんですよ。私は見た目がこんなのなのでよく絡まれるんです。だから護衛がいてくれると助かります」
絡まれるだろうな。
「行商人に見えるが、1人か?」
「はい。1人ですね」
こんな治安の悪い町によく来るな。
「えーっと、大丈夫か?」
「あー……大丈夫ですよ。実は私、冒険者もやっているんです。こう見えてBランクなんですよ?」
Bランク?
あ、それで二つ名か。
それに魔力が高い理由もわかった。
「冒険者と商人を同時にやっているのか?」
「今年からですね。実家が店をやっているんですよ。そんな中、父が年を取り、足腰が弱くなったので私が代わりに買い付けなんかをしているんです」
そういうことね。
見た目がこうじゃなかったら納得がいく。
「なるほどな。でも、Bランクなら護衛も……あ、見た目だったな。すまん」
見た目がこれだから護衛がいるんだった。
「いえ、本当に絡まれるんですよ。わるーい大人が路地裏に連れ込もうとするんですよ。秒で腕を2、3本折ってやりますけどね」
腕は2本しかないぞー。
「ロズリーヌ、じゃあ、護衛をするわ。もう行ける?」
イレーネが確認する。
「あ、せっかくなので依頼にしますよ。ギルドに行きましょう」
ダリアの時と同じ指名依頼か。
「いいの?」
「どうせですから依頼にしておいた方が良いですよ。こういうのを地道にやってランクを上げるのです」
うーん……ベテランっぽいことを言う。
「じゃあ、そうしましょうか」
「ええ。あ、依頼料はどうします? 日当で1万ソルが妥当なところですけど」
金をくれるのか。
「どうだ?」
よくわからないのでイレーネに聞いてみる。
「安いけど、まあ、そんなもんじゃない? 馬車に乗せてもらうわけだし、何よりも本人が強いでしょうし」
まあ、俺達はほぼいるだけか。
「じゃあ、いいか」
「ええ。ロズリーヌ、それで」
「わかりました。それではギルドに行きましょう。後ろに乗ってください」
ロズリーヌがそう言って、御者台に乗り込んだので後ろに回って、荷台に乗り込む。
荷台は荷物が半分くらいしか乗っていなかったので結構、余裕があった。
「来年には30歳ですか」
「合法ねー……」
「Bランク冒険者だって。世界は広いな」
俺達がそれぞれ感想を口に出すと、馬車が動き出した。
「イレーネさんと同じBランクの二つ名持ちですね」
「あの容姿なら二つ名も付くわよ」
魔女か。
魔法を使うっていう意味ではないだろうな。
多分、歳を取らないっていう意味だ。
「まあ、ラッキーと思おう。キャラバンで行くよりも煩わしくない」
人が増えればトラブルが起きる可能性も高くなる。
「そうね」
荷台で待っていると、馬車がギルドの前に止まったので降りる。
ロズリーヌも御者台から降り、警報装置を取り付けた。
「それでは行きましょうか」
俺達はギルドの中に入る。
すると、俺とイレーネ的にはまだ早い時間なのだが、大勢の冒険者がおり、列を作っていた。
「あー、この時間は多いですかー」
ロズリーヌがそう言うと、並んでいた冒険者達が一斉にこちらを見る。
あまりにも一斉に見てきたのでちょっとびっくりした。
「ひっ!」
「魔女だ……」
「合法……!」
輩みたいな冒険者達は後ずさりすると、一斉に左右に分かれた。
まるでモーゼである。
「あ、空きました。皆さん、優しいです」
ロズリーヌはご機嫌に進んでいく。
「……何かしら?」
イレーネが小声で聞いてきた。
「……2、3本折ったんだろ」
「……なるほどね」
待っているわけにもいかないのでロズリーヌについていく。
「おや? ロズリーヌ様ではありませんか。それにヴェルナー様にイレーネ様」
受付は昨日と同じ男性だ。
「おはようです。マルーン王国に帰ることにしたんですけど、この人達を護衛に雇うことにしました」
「それは良いですね。では、こちらの書類を書いてください」
「はい」
ロズリーヌが書類を書き始める。
「……イレーネ、ここを頼む」
「……ええ」
この場をイレーネに任せると、左右に寄っている冒険者の中からまともそうな人間を探し、そいつのもとに向かった。
「……なあ、ロズリーヌって有名なのか?」
ちゃんとした革の鎧を着ている若い男に小声で聞く。
「……知らねーのかよ。マルーン王国で一番有名な冒険者だぜ。合法の魔女様だ」
「……一緒に行くのか? やめとけ。素手で岩を粉砕するお子様だぞ」
「……もう10人以上も病院に行ってるぜ」
「……あと1年である意味違法だなって笑った奴が翌日に路地裏で見つかったらしいぞ」
なんか他の冒険者も群がってきて、教えてくれる。
色々と尾ひれがついてそうだが。
「……そうか」
「ヴェルナーくーん、何のお話してるのー?」
ロズリーヌが書類に書き込みながら聞いてくる。
でも、声が低い気がする。
「いや、なんでもない……ん?」
群がってきた奴らがいなくなってる……
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