第137話 さらば、王都です
朝というか、暗い中でリーエに起こされた俺とイレーネは朝食を食べる。
「眠いな……」
「そうね……」
「もう何も言いませんよ。さっさと行きましょう」
そうだな。
「ライオネルが言うには早ければ今日にも貴族が来るんだったな」
「ええ。引き留められる前に出ましょう」
俺達は朝食を食べると、準備をする。
そして、6時前には部屋を出て、エントランスに向かった。
すると、店主がいたので受付に行く。
「ご出発ですか?」
「ああ。本当に世話になった。こんな良い宿屋を堪能できて良かった」
しかも、あんな値段でね……
「いえいえ。満足して頂けたのなら良かったです。それにこちらこそ、兄のことで大変お世話になりました。次はどちらへ?」
「ルミフィアだ。その後はまだ考えていない。まあ、ギルドと相談かな?」
3国のどこかに行くとは思うが、まだ決めていない。
「ルミフィアは人が多く集まる場所です。宿屋もギルドに相談した方が良いですよ」
うーむ……なんか聞いたことがあるような……
「ルミフィアって治安が悪いのか?」
「良くはありませんね。どうしても流れ者が増えますので」
まあ、俺達も流れ者なんだけどな。
「わかった。お兄さんに会ったらよろしく言っておいてくれ」
「ええ。これをどうぞ」
店主が弁当をくれる。
「ありがとう。じゃあ、行ってくる」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
俺達は宿屋を出ると、北門に向かう。
「この町も最後ね」
「そうだな。地味に一番滞在した町だ」
これまではほとんど逃亡生活だったから数日しか滞在していない。
まあ、今回も遠征があったからそこまでいたわけでもないが、なんとなく、長いこといたような気がする。
「この町に関しては良い出会いしかありませんでしたし、良い思いもしましたからね」
「今後もそうありたいものだ……ん?」
話をしながら歩いていると、北門が見えてきたのだが、見覚えのある人間がいた。
爽やかな顔をした遠征時のリーダーであるレナートだ。
レナートは俺達に気付くと、こちらにやってくる。
「やあ、おはよう」
レナートが挨拶をしてくる。
「ああ。こんな時間にどうした?」
「どうしたもこうしたもギルドから聞いたんだけど、もう出るんだって?」
「色々あってな。元々、あの仕事が終わったら次に行く予定だったんだ」
こんなに朝早くの予定はなかった。
それを考えると、こいつはこんな時間に……あ、いや、こいつらは始動が早かったな。
多分、これから森にでも行くんだろう。
「それは良いんだけど、ちゃんと受け取るものは受け取ってくれよ」
レナートはカバンから丸フラスコに入った液体を取り出す。
毒々しい紫の液体であり、見たことがなかったが、何となく察した。
「あー、毒消しのポーションか?」
「そうそう。ちゃんと返すよ」
使ってないんだけどな。
「じゃあ、もらうわ。しかし、こんなことでわざわざ?」
3本のポーションを受け取り、リーエに渡しながら聞く。
「大事なことさ。命の恩人だろ」
まあ、そうだけどな。
「律儀なことだ」
「そういうのが大事なんだよ。評判こそが冒険者の資産だ。ヴェルナー達はルミフィアに行くんだろ?」
「ああ。治安が悪いらしいな」
「悪いな。でも、冒険者は儲かる町だ。ただ、仲間に女性がいる場合は気を付けろ。ウチのヴァンナは行きたがらない町だ」
うーん……やっぱり聞いたことがある。
コスタリナ王国のミストラだ。
あそこも中継の町だったし、やはり良くない人間が集まりやすいんだろうな。
「わかった」
「じゃあ、気を付けてな。また、ここに来ることがあったら一緒に仕事をしよう」
レナートは爽やかにそう言うと、町の方に戻っていった。
「高ランクなことを置いておいても良い奴だな」
わざわざ見送りに来た。
「この国は優しい人が多かった気がします。そういうお国柄なのかもしれませんね」
確かに親切な奴が多かった。
貴族までそうだったし。
「良い感じのまま終わりたいわね」
ルミフィアに長居するのはやめた方が良さそうだな。
あの気の強かったヴァンナが行きたがらない町だ。
ミスディレクションがあるとはいえ、ウチには美人と子供がいる。
「まったくだ」
俺達は北門の方に向かった。
すると、右側の方に2頭の馬の世話をしている兵士がいたのでそちらに行ってみる。
「ん? もしかして、ヴェルナー殿だろうか?」
兵士がこちらに気付き、声をかけてくる。
「ああ。馬の運搬を頼まれている。この2頭か?」
「そうだ。では、ルミフィアの南門まで頼む。門番の兵士に渡してくれ」
兵士はそう言うと、馬を撫で、町に帰っていった。
「よし、さっさと行くか」
「そうね。リーエはこっち」
馬に跨ると、イレーネがリーエに手を伸ばす。
「またお姉ちゃんとですか……」
リーエは渋々、イレーネの手を掴み、馬に乗った。
「よし。行こう」
俺達は最後に町を眺めると、門を抜け、駆けだした。
「やっぱり馬は早いわね」
「良いですよねー。これだと移動がスムーズです。馬っていくらぐらいするんですか?」
「うーん……馬による。普通の馬だと50万ソルから100万ソルってところじゃないかしら? これが軍用馬だと跳ね上がる。1000万超えっていうのも聞いたことがあるわね」
やっぱり高いな。
それに加えて、当然、餌代なんかもいる。
「やっぱり難しいですかね?」
「Cランクになったし、これから依頼を回してもらえるようになるから大丈夫だと思うけどね。ただ、これからどこに行くかとか、どういう仕事をしていくかとかによるわ」
まあな。
「イレーネ、リーエ、今夜は野営になるだろうが、ちょっと相談をしよう」
「そうね」
「わかりました」
俺達はとにかく、進むことにし、平原が広がる街道を北上していった。
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