第135話 失敗など……
町中を歩いていき、北の区画にある図書館にやってくると、中に入る。
すると、この前と同じく、受付にはヴィヴィアンが座っていた。
「あ、皆さん、お戻りになられたんですね」
ヴィヴィアンが上品な笑みで迎えてくれた。
「ええ。ライオネル様のおかげでね」
「それは良かったです。それでランクは?」
ヴィヴィアンが聞いてきたのでカードを見せる。
「御二人共、Cランクになられたのですね。それは良かったです。それでは当館への入場を許可いたします」
やっとか。
「ヴィヴィアン、それでなんだけど、私達は明日には発たないといけないのよ」
「ええ。昨日の夜にライオネル様から伺っております」
夜というワードはいらん。
「あ、そう。それでね、ちょっと時間がないから魔道具の歴史なんかが書かれている本がどこにあるかを教えてほしいのよ」
「はい。それも言われております。どうぞ、こちらへ」
ヴィヴィアンが受付から出てくると、奥に向かったのでついていく。
そして、扉を開けると、中は複数のテーブルと共に大量の本が収められた本棚が並んでいた。
まさしく、図書館だ。
「すっご」
「当館は様々な本があります。子供が読むような絵本から専門書まで揃っています。本当はじっくり読んでほしいのですが、それはまた別の機会にお願いします。魔道具関係の本はこちらになります」
ヴィヴィアンが歩いていくと、左端の区画にやってきた。
「ここか?」
「はい。時間がないのは承知しておりますが、魔道具関係となりますとこのくらいにはなります」
100冊以上は入っている本棚が10以上もある。
これは得意の速読でもすべての本を読むのは無理だ。
「わかった。ある程度、絞って読んでみる」
「はい。皆様は北に行かれるんですよね? 今日だけで難しいでしょうし、北西のマルーン王国、北のカリス王国、北西のエオリア王国の王都にも図書館はございますのでそちらを利用されるとよろしいかと思います」
それが良さそうだな。
「わかった」
「あ、ヘブンバードのことが書かれた本ってない?」
イレーネがヴィヴィアンに聞く。
「鳥ですか? 鳥関係はこちらです」
ヴィヴィアンが歩いていく。
「ヴェルナー、先に読んでて」
「わかった」
俺とリーエはそれっぽいタイトルを手に取り、読んでいった。
すると、イレーネが戻ってきたので一緒に席につき、調べていく。
「あのさ、邪魔して悪いんだけど、それ、読んでるの? ヴェルナーもリーエもパラパラめくっているだけじゃない?」
「時間がないからそれっぽいワードを探しているだけだ」
「ある程度の見落としは仕方がありません」
「そ、そう? 私はゆっくり読むわ」
そうしてくれ。
俺達はその後も本を読んでいったが、特に良い情報は見当たらなかった。
そうこうしていると、昼になったので近くにある軽食屋に行き、昼食を食べる。
「あまり良い本はありませんね」
「何をいつ作ったとか、作った人物のことばかりだからな」
今は洗濯機を作った人間のことなんかどうでもいい。
「難しいかもしれませんね」
「仕方がない。なければないで別の国がある。イレーネはどうだ?」
ヘブンバードを調べているイレーネに聞く。
「ヘブンバードは北の方にいる鳥らしいわよ。なんで高いのかもよくわかった。ヘブンバードって季節によって味が変わるらしいの」
んー?
「なんで?」
「寒い地域にいる鳥らしくて、秋に大量に食べ物を食べ、冬はそれで凌ぐらしいの。しかも、巣に籠りっぱなしで出てこない。この肥えたヘブンバードが美味しいらしいのよ。それ以外は普通の鳥の味だって」
冬眠するのかね?
「冬ねー……これからだっけ?」
「ええ。当初の計画では冬は南ですごし、暖かくなってきた辺りで北上って考えていたけど、ヘブンバードを捕まえるためには北に行っても良いかもね」
まあ、ありといえばありだな。
それだけの価値がある鳥だ。
「考えてみるか」
「そうね。午後からも調べてみるわ」
「頼むわ」
昼食を食べ終えた俺達は図書館に戻り、調べものを再開する。
しかし、一向に良い情報は得られずに時間だけが過ぎ、17時を回った。
「ヴェルナー、無理じゃない?」
とっくの前にヘブンバードを調べ終わったイレーネが暇そうに頬杖をついて聞いてくる。
「先に帰っても良いぞ」
「いや、帰んないけどさ。明日のことも考えてね。ルミフィアまで馬で行っても3日よ?」
そうだったな。
「無理か……」
本を閉じる。
「そのような気がしますね」
リーエも読んでいた本を閉じた。
「どうする? 閉館は18時らしいけど」
あと1時間弱では無理か……ん?
「あれ? ヴィヴィアン?」
ヴィヴィアンがこちらにやってきた。
「どうですか?」
ヴィヴィアンが聞いてくる。
「無理だな。やはり別の国でじっくり調べた方がよさそうだ」
「そうですか。あの、ちょっと来てもらえますか?」
ヴィヴィアンがそう言って、出入り口の方に向かう。
「何だ?」
もう帰れってことかな?
「さあ?」
「とりあえず、行きましょう」
俺達は立ち上がると、本を戻し、ヴィヴィアンを追う。
すると、受付まで戻ってくる。
「中に入ってください」
ヴィヴィアンはそう言うと、受付の中に入り、奥にある扉を開けた。
「ここは?」
「受付の休憩室です。どうぞ」
促されたので中に入る。
中は6畳くらいの部屋であり、テーブルがあるくらいだった。
俺達が中に入ると、ヴィヴィアンも入ってきて、扉を閉める。
「どうしたんだ?」
「ヴェルナーさん、おそらくですが、あなたが求めている本は1階にはありません」
そんな気はしていた。
俺達が知りたいのは魔法に関係する歴史だ。
そういうのが書かれている本は重要な文献だし、庶民が利用できる区画にはないと思う。
「ダメか……」
「いえ、これを」
ヴィヴィアンが本を渡してきた。
随分と古臭い本だ。
「これは?」
「5階にある本です」
この図書館の4階、5階は国の許可を得た人間しか入れなかったはずだ。
「良いのか?」
「良いわけありません。もし、バレたら私はクビで済めば良い方です。15分で読んでください。それでは」
ヴィヴィアンが部屋から出ていく。
「危ない橋を渡ったわね」
「ライオネルが頼んだんだろうな」
「急ぎましょう。御二人の厚意を無駄にはできません」
俺達は席につくと、本を読んでいく。
本は歴史の本のようで主に昔の戦争のことが書いてあった。
その戦争では主に魔法が使われ、民間人も含め、多くの犠牲者が出たようだ。
「これ、前に言った魔法使いを中心とした大きな戦争の話よ」
例のやつか。
「2国が争っていたのにそれがどんどんと広がっていったようだな」
「でも、とある国の一強のようですね。覇権国家、ネブラ・マギカ魔導帝国……え?」
「は?」
ネブラ・マギカ魔導帝国?
「どうしたの?」
イレーネが首を傾げる。
「イレーネ、この戦争は何年前だ?」
「え? えーっと、かなり前とは聞いている。数百年くらいだと思う。ちょっと具体的な数字はわからないけど」
そうか。
「リーエ、すまん。俺の魔法は大きく失敗した」
「いえ……あの場から逃げるという意味では成功しております。ヴェルナー様に失敗などありえません」
そうか……
「どうしたの?」
イレーネは困惑している。
しかし、俺達の比ではないだろう。
「俺達は魔導帝国の人間だと言っただろう?」
「え?」
「もう一度、名乗ろう。俺はヴェルナー・ランゲンバッハ。ネブラ・マギカ魔導帝国所属の第一級魔導士だ」
俺達は次元転移ではなく、時を飛んでしまったようだ。
ここまでが第3章となります。
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