第133話 あなた達みたいなドラマチックなイベントがあれば良いんですけどね
野営地に行くと、すでにテントが立っていたので中に入る。
そして、2人に先ほどのライオネルの忠告を伝えた。
「貴族の護衛に私ねー……私にそんな人はいなかったけど? 50代の爺さん1人よ?」
オラースな。
どうなったんだろう?
ダリアの連絡はまだか?
「イレーネさんは特殊でしたからね……でも、ありえないことはないです。帝国でも有力な家のご婦人には必ずと言っていいほどに魔法使いの侍女がついていました」
ついてたな。
「ふーん……じゃあ、ライオネルの言うとおりにした方が良いわね。でも、図書館で調べものをできるのが1日か。大丈夫?」
全部は無理だな。
というか、1日もない。
半日くらいだろう。
「できるだけのことはする。それに図書館はこの国だけじゃないし、次に回す」
「まあねー。この国ではCランクまで上がり、お金もかなり貯められた。十分ね」
十分すぎるほどだ。
「じゃあ、帰って2日後に出るでいいな?」
「ええ。そうしましょう。籠の鳥の次に籠になるのは嫌よ」
的確な表現だ。
「そうですね。当初よりちょっと早いですが、予定通りです」
俺達は予定を決めると、トランプをして、過ごし、この日は就寝した。
翌日、6時に起きた俺達は準備をし、森に入る。
今日は最初と同じ8時から9時の方向の区画だ。
「リーエ、いるか?」
「まったくいません。周囲に魔力反応がゼロです」
俺もだ。
「昨日のが当たりか」
「そのようですね」
「どうする?」
イレーネが聞いてくる。
「探してみよう。それで午後に一度、陣に戻る」
「了解」
俺達は魔力を探りながら奥に向かって歩いていく。
しかし、魔物が見当たらないどころかゴブリンの死体を見つけた。
「昨日、ここの担当だったロビン、アイリーンがやったやつでしょうね。まだ残ってるということは他の魔物に食べられていないってこと」
森で魔物を倒しても翌日には消えている。
それは魔物が食べるから。
以前もオークの上位種に群がっている魔物を見た。
「そこら中にいた魔物がいなくなったってところか?」
「そういうことね。ヴェルナー、これは無理よ」
死体が残っているということはそういうことだもんな。
「わかった。戻ろう」
俺達は引き返すことにし、9時過ぎには陣に戻る。
すると、他の冒険者連中が門の前にたむろっていた。
「レナート、ヴェルナー達も戻ったわよ」
ヴァンナがそう言うと、レナートが振り向く。
「ヴェルナー、戻ってきたということは魔物がいなかったってことか?」
こいつらもだな。
「ああ。死体まで見つけた」
「君達もか。実は俺達もなんだ。それで皆が引き返してきて、相談中さ。アイリーン、さっきの話をヴェルナー達にも」
レナートがアイリーンに振る。
「ええ。昨日、強い魔物が出たら弱い魔物が人里に出てくるって言いましたよね? あれ、強い魔物がいなくなると、一時的にですけど、魔物が嘘のようにいなくなるんです」
まったく状況が一緒だな。
「決まりっぽいな」
「はい。昨日、ヴェルナーさんがキングバイパーを倒されたんですよね? もうそれでしょう」
「おかげで今日は仕事にならないな」
レナートがやれやれといった感じで首を横に振る。
「そりゃ悪かったな」
「ここで君を責める奴は長くないね。冒険者は自己中心的であるべきだが、度を越した奴が長生きしたところを見たことがない」
「違いねえな」
「まったくだ」
高ランクの冒険者達が笑う。
多分、そういう奴をいっぱい見てきたんだろうな。
「とりあえずはライオネル様待ちだ」
俺達はこの場で待つ。
すると、1時間ぐらい経った辺りで森からライオネル率いる兵士と村人が出てきた。
「ん? お前達、仕事はどうしたんだ?」
ライオネルは手を上げて、村人を帰させると、こちらにやってくる。
「ライオネル様、森に魔物がおりません。この度の魔物増加はやはり昨日のキングバイパーが原因だと思われます」
代表してリーダーのレナートが答えた。
「そうか。先程、私もキングバイパーを見てきた。大きなトカゲを見た目撃者もこれで間違いないと言っていた」
蛇だけどな。
「それでは仕事は終わりでしょうか?」
「そうなる。これから村長に報告するが、お前達も戻っているなら陣を解体した後に帰還することにしよう。今から帰れば明日の夕方までには王都に帰れる。あ、ちゃんと7日分の日当は出すから安心しろ」
それは良かった。
「わかりました。我々も帰還の準備に入ります」
「そうしてくれ。ご苦労だった」
ライオネルは頷き、村に入っていった。
それと同時に兵士達が動き出し、陣を解体し始める。
「どうやら仕事はこれで終わりのようだ。もっとも、帰るまでが仕事だ。帰りにミスをするようなことはするなよ」
「私らは特にね」
「ホントにな」
ヴァンナとオネストが笑う。
「まったくだな。よし、準備をしよう」
冒険者達が陣に入り、片付けを始めた。
俺達は別にやることがないのでこの場で待つ。
1時間後にはあっという間に陣も解体されたので各自が馬に乗り、帰ることになった。
俺達は行きと同じで後衛を進んでいくが、来た時とは打って変わって、魔物が出てこず、すぐに森を抜ける。
そして、平原を進んでいくと、ロビンが近づいてきた。
「ヴェルナー」
「何だ?」
「キングバイパーはどうだった?」
んー?
「まあ、強かったと思うぞ」
俺の相手じゃないがな。
「そうか。レナートでも敵わなかった相手を倒すのはすごいな」
噂を聞いた貴族にもそう思われるわけだ。
なるほど……Aランクに最も近い男であるレナート以上の男女の冒険者がいると思われるんだ。
ライオネルが言うように貴族の勧誘が来る。
「レナートは不意を突かれただけだ。お前とアイリーンでも倒せる相手だぞ」
あ、また“でも”って言っちゃった。
「そうか? 俺はキングバイパーを知らないからな」
「前言撤回。毒にやられると思う」
「調べとくか」
そうしろ。
「ロビン、俺からも話があるんだが、王都に戻ったら2日後には出る」
「急ぎだな?」
ホントにな。
「ライオネルから忠告をもらった。貴族の勧誘が来そうだから出た方が良いってな。俺達は旅人だ。次の国に行くよ」
「そうか……北のルミフィアか?」
「ああ。そこに行ってからどこの国に行くかを考える」
当てもないからな。
「寂しくなるが、仕方がないな。アイリーンも楽しそうだし」
アイリーンはイレーネと話をしている。
たまに『えー……無理ー』とか『そうですかねー?』とか言っている。
内容は御察し。
「お前達は王都で続けるのか?」
「どうかな……ちょっと考えてみる。俺もなんか世界を見たくなった」
うーん……
「アイリーンも連れていけよ」
「向こうがどう思うかだな」
頷くよ。
「お前さ、アイリーンのことをどう思ってんだ?」
ちょっと聞いてみよう。
「アイリーン? なんでだ?」
「いや、男女のパーティーなんだからそういうこともあるだろ」
ウチとか……
「あー……難しいところだ。俺達は今の関係で上手くいっているからな。これを崩すのは難しい」
あれ? 好感触じゃない?
というか、聞いたことあるような言葉だ。
『イレーネ、ロビンはいけそうだぞ。こいつ、興味ないふりをしているムッツリ野郎だ』
『了解。そうじゃないかと思ったわ』
『ひどい言いようですね……』
ひどくない。
「そうかい。まあ、気長にやりな。ロビン、王都に着いたらお別れだ。旅をするならまた会えるかもしれないし、北に行くなら手紙でもくれ」
「ああ。世話になったな」
主に最初の缶詰を渡したやつな。
「いや、こっちも助かった。今回の仕事で俺達のことを先に言ってくれたのはお前だろ」
俺達、DランクがこのBランク集団に入っているのに誰も文句を言ってこなかった。
事前に誰かが言ったからだ。
「つまらん揉め事は不要だと思っただけだ」
「ありがとよ」
「別にいい」
アイリーンがこいつを好きになった理由がよくわかる。
そして、進展していない理由もよくわかった。
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