第131話 言ってることがイレーネさんと一緒です
森の奥を歩いていくが、相変わらず、ゴブリンとコボルトの反応しかない。
「どーお?」
「変わらずです」
イレーネの問いにリーエが答える。
「じゃあ、この辺にはいないってことね。そのでっかいトカゲから逃げているわけだし」
そうか……確かにそうだ。
「リーエ、魔物が少ない方向に行こう」
逆に言えば、そっちを探せばいいんだ。
「そうしますか。迷子になりそうなのでそこら中に魔力を込めた石を置いておきましょう」
「あ、何もしてない私がやるわよ」
イレーネが石を拾い、魔力を込めた。
そして、ポイッと放り投げる。
「ポイ捨てとは悪い奥様です」
「リーエがいつもやっていることでしょ」
リーエは悪いもんな。
いやまあ、石を戻しただけだが。
「よし、行こう」
俺達は魔物が少ない方向を選んで進んでいく。
右に行ったり、左に行ったりと、かなりジグザグに進んでおり、方向を変える度にイレーネが石ころに魔力を込めていった。
「イレーネさんの魔力はわかりやすいですね。これからイレーネさんにお願いしましょう」
魔力の大きさもだが、質が良いからな。
「魔力も魅力的なんじゃない? 輝いてない?」
「その自己主張の強さが魔力にも移っているんじゃないですか?」
お前も相当だぞ。
「私なんか全然可愛くないですよって言えばいいわけ? 嘘じゃないの」
すごい。
目に一点の曇りもない。
「まあ、嫌味っぽくはなるな」
「さすがはイレーネさんです。略してさすイレー」
さすイレー。
「というかね、自己主張の強さであなた達にとやかく言われたくないわよ」
言われてんぞ、自称、選ばれた新人類の超可愛い万能殺戮系戦闘用ホムンクルス。
「何だよ、その顔は?」
リーエがにやけながらこちらを見ていた。
「お互い、同じような表情よ。同じようなことを思ってそうね」
はいはい。
自慢話ばかりですみませんね。
イレーネが聞いてくれるのが悪い。
でも、『じゃあ、聞かない』って言わないでね。
「おや? ヴェルナー様、北北東に魔物がいません」
方角はわからんが、左の方にコボルトやゴブリンがいないな。
というか、明らかに周囲の魔物の数が減っている。
「近いか?」
「かもしれません。イレーネさん、ミスディレクションをかけていますが、お気を付けください。爬虫類系、猫系などは感覚が鋭く、ミスディレクションが効きません」
「ええ。大丈夫」
イレーネが頷いたので魔物がいない方向に行く。
すると、幅が2、3メートル程度の川に出た。
「川か……」
「どうします?」
「上流に行ってみよう」
方向的にはそっちなのだ。
俺達は右の方向である上流に歩いていく。
すると、前方から大きな魔力を感じた。
「500メートル先に魔力反応4……うち3人はレナートさん、オネストさん、ヴァンナさんです」
もう1つは……
「魔物か?」
「知らない魔力ですからおそらくは。例のでっかいトカゲではないでしょうか?」
ここはあいつらの区画からも離れている。
やはり抜けがけか。
「行ってみるか」
「ええ。イレーネさん、この場合、どうすれば?」
「戦闘中に邪魔をするのは絶対にダメ。それと向こうが助けを求めてこない限りは手助けしたらダメ」
黙って見ているだけか。
「何にせよ、行こう。相手もかなりの魔力だ」
「魔力自体はレナートさんの方が上ですね。ただ、私達が遭遇した魔物の中では飛び抜けています」
あのオークの上位種よりも上だ。
「急ぎましょう」
走って、現場に向かうと、開けたところに出た。
そこには滝があったのだが、倒れているオネストとヴァンナ、膝をついているレナートの姿がある。
そして、その前には巨大な蛇がいた。
「あ、キングバイパー……」
イレーネが声を上げる。
「キングバイパーって例のやつか?」
前に聞いたイレーネが倒した最大の大物だ。
「くっ! お前達、逃げろ!」
俺達に気付いたレナートが叫びながらキングバイパーに剣を向けた。
一方でキングバイパーの方も首を上げ、臨戦態勢を取りながら舌をちろちろと出している。
『イレーネ、この場合は? 負傷しているようだし、どう見ても今のレナートでは勝てんぞ』
念話で確認する。
『基本的にピンチだったら助けるけど……ただ、揉める要因でもあるわね。ピンチかどうかなんてお互いに主観でしかないから。このケースは見捨てるのが常識』
うーん……レナートは助けを求めてはいない。
ただ、それは獲物を奪うなという意味ではなく、自分が食い止めるからそのうちに逃げろという自己犠牲の精神からだ。
『逃げて良いのか?』
『いや、あれは私でも勝てる相手よ。ただ、安全を期するなら魔法で倒すべき。でも……』
見られるか。
『リーエ、勇敢な冒険者は気絶してしまった。そこを俺達が助けたといこう』
『了解です。スリープ』
リーエが魔法を使うと、レナートがガクッと倒れた。
それと同時に俺とイレーネが駆け出す。
「イレーネ、3人を頼む。ケガがあるならリーエに頼め」
「了解」
イレーネが頷いたと同時にキングバイパーに向けて、エアカッターを放つ。
しかし、見えない風の刃のはずなのにキングバイパーは首を下ろして躱し、さらに地を這って、俺達から距離を取った。
躱したのはすごいと思うが、距離を取ったのはこちらにとって好都合だ。
俺は寝ている3人の前に立ち、キングバイパーと対峙する。
「オネストとヴァンナも生きてる。ただ、毒をもらってるわ。そいつは毒の息を吐くから気を付けて」
蛇って牙から毒を流し込むんじゃないのか?
というか、白銀のセシリアさんって本当にすごくないか?
毒持ちの大蛇を一人で倒したらしい。
「ああ。毒の種類はわかるか?」
「たいした毒じゃないから毒消しのポーションで治せる」
「じゃあ、リーエに頼め」
「もうやってまーす」
リーエはすでに治療を始めていた。
もう大丈夫だろう。
「さて……」
一歩前に出る。
しかし、キングバイパーは舌をちろちろと鎌首をもたげたままだ。
「来る時は一気に来るわよ」
「ああ」
頷き、もう一歩近づく。
すると、キングバイパーの魔力が激しく動き出した。
直後、キングバイパーが口を開け、毒霧を吐き出してくる。
しかし、構わずに突っ込んだ。
「ヴェルナー!」
イレーネが叫ぶがまったく問題なく、毒霧を突き抜けると、腰の剣を抜き、一閃させた。
すると、毒霧を吐くために突き出していたキングバイパーの首が宙を舞う。
「ふっ、大魔導士に毒が通じると思ったか? 俺は幾千の強敵に勝ってきた最強の英雄だぞ」
かっこいい……
「ほら、自己主張が強いです」
「ほら、一撃じゃないの」
ほらほらうるせーよ。
「素直に褒めろよ。自分に正直になれ」
「さすご主ー」
「さすヴェルー」
それ、褒めてんのかね?
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