第130話 私の名を入れなかったことにツッコまない私は空気が読めます、です
翌日、リーエに起こされた俺とイレーネはなんとか起き、朝食を食べる。
そして、テントを出ると、まだ薄暗いのに他の冒険者、兵士達も起きており、出発の準備をしていた。
「今、何時だ?」
「5時半ね。皆、早いわ」
「暗い中での森は危ないっていうのにな」
「まったくよ」
働き者ばかりだな。
「布団大好き夫婦、ぐちぐち言ってないで私達も行きますよ」
事実だけど、布団大好き夫婦はやめろ。
「ヴェルナーさん、おはようございます。今日は早いんですね」
イレーネとリーエがテントの収納を始めると、アイリーンがやってくる。
ロビンじゃなく、アイリーンだ。
「おはよう。昨日、遅かったから今日は早めにと思ってな」
「そうですか。ちょっと良いですか?」
んー?
「どうした? 珍しいな」
アイリーンは基本的に同性のイレーネと話す。
「ちょっとお耳に入れておきたいことがあります。大物の魔物がいないだけでなく、獣がいないのは聞いていますか?」
「ああ。罠にもかからないらしいな」
「実は私、スリーフの町の猟師の娘なんですが、こういうのってたまに起きるんですよ」
猟師の娘か……
それで武器が弓なんだな。
「そうなのか?」
「ええ。こういうのは大抵、強い魔物が出た時です。獣は遠くに逃げますし、弱い魔物が人里に出てくるんです。獣は人を怖がりますが、魔物はそうでもないですからこういう現象が起きるんです」
魔物は積極的に襲ってくるからな。
「つまり例のでっかいトカゲか?」
「その可能性が高いです。十分に気を付けてください。それでは……」
アイリーンはロビンと共に森の中に入っていった。
他の冒険者や兵士達も森に入っていく。
「アイリーンは何て? 私じゃなくて、ヴェルナーに話しかけるのは珍しいわね」
テントを片付け終えたイレーネとリーエがこちらに来た。
「そりゃ、あなた方が地味に同性としかしゃべらないからですよ。宿屋でもギルドでもほぼそうです。嫉妬深いご夫婦ですよ、まったく」
いや、俺は異性としゃべるのがあまり慣れてないから……
仕事と割り切れるが、それでもちょっとね……
「ヴェルナーは私のことが好きだから仕方がないわよ。それで? 何て?」
それでいいや。
「アイリーンは猟師の娘らしいんだが、経験的にこの状況はでっかいトカゲがいそうだってよ。強い魔物のせいで獣がいないし、人を恐れない雑魚魔物が人里近くまで出てきているんじゃないかって」
「なるほどね……そういうこと……他の連中、言わないだけでそのでっかいトカゲ狙いね」
仕事だから雑魚狩りもしているんだろうが、そっち狙いに切り替えたわけか。
「俺は意図していなかったが、シャッフルはでっかいトカゲ探しってことか」
アイリーンは善意で忠告だろうな。
俺達、Dランクだし、でっかいトカゲに気を付けろってことだ。
「でしょうね。まあ、私達には関係ないわ。昨日と同じように調査と雑魚狩り」
「いいのか?」
「でっかいトカゲって知らないけど、強いんでしょ? だったらあなた達の魔力感知で探せるじゃないの」
積極的に探さないでも大きい魔力ならわかるか。
「わかった。じゃあ、それでいこう」
俺達も森の中に入り、調査と魔物狩りを始める。
やはりゴブリンとコボルトばかりなのでそれを重点的に倒していった。
この日もすぐに数えるのをやめ、ひたすら作業をこなしていくと、昼になったので昼食を食べる。
「でっかいトカゲはいる?」
イレーネが聞いてくる。
だが、当然、いたら言っている。
「いや、そんな気配はない」
「相変わらずですね。しかし、多いです。倒しても倒しても全然、減らないですよ」
減らないな。
今もその辺にいる。
「ライオネルが動くかもな……」
「というと?」
「昨日の報告の時に兵士が俺達に頑張れって言ってきただろ? あれは他の冒険者も結構な数の魔物を倒しているから出る言葉だ」
あいつらが全然、狩っていないならいくら最初に俺達が後衛だったとしてもこちらの方が上のはずだ。
でも、あの口ぶりは俺達があいつらの下とは言わないが、上とも言えない感じだった。
「そういうこと……当然、兵士達も狩っているでしょうし、それなのに魔物が減る様子がない。あの貴族様なら次の手を考えそうね」
ライオネルはそういう男だ。
「となると、明日からは元凶であろうでっかいトカゲ探しになると?」
「その可能性が高いってことだな」
明日か、明後日か……いや、ライオネルなら早めに動く。
「どうします? すでにこの区画の調査は終えてますけど」
俺達は調査を終えたので昼食にしたのだ。
「もっと奥に行ってみるか?」
「良いんですかね?」
うーん……
「イレーネ、どうだ?」
「良くはないわね。ただ、ライオネルは私達に任せると言ってたし、今日だって十分な成果を上げているわ。それに正直なことを言えば、こういうのを抜けがけって言うんだけど、よくあることね。最低限のことを最低限の力でやり、もっと大きな功績を取りに行く。こういうずる賢いというか、要領の良いことをしていくのが高ランクね」
というより、そういうのができる人間が上に行くんだな。
だって、俺達がやっていたギルドのお願いを積極的にやるっていうのもずる賢いというか、要領の良いことだし。
「他の連中は?」
「アイリーンとロビンは確実にやる気」
声をかけてきたからか。
「他の連中は?」
「やるでしょ。ゴブリンやコボルトで満足する人達には見えなかった」
Bランクだしな。
「白銀さんは?」
「セシリアさんはソロだったからやらないわね。でも、イレーネさんはヴェルナーがいる。あなたに任せるわ」
ふむ……
「行くぞ」
「ええ」
「では、参りましょう」
俺達は昼食を食べ終えたのでさらに奥に進むことにした。
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