第126話 もぐもぐ
「要塞みたいだな」
村は森に囲まれた広場にあるのだが、2、3メートルはある丘の上に作られており、さらには丸太で壁が作られている。
以前に見たフォレナ村の簡易な柵とは違い、かなり防御力のありそうな村だ。
「普段から魔物が多いってことかもね」
俺達は村の入口の前までやってくる。
入口も坂になっており、昼間なので門は開いているが、これまた丸太をくくられて作られたものであり、かなり頑丈だ。
「到着だ! これより村長と話をしてくるから休憩とする。冒険者も1人だけついてきてほしい」
ライオネルがそう言うと、全員がレナートを見る。
「俺か……ライオネル様、私が同行します」
「よし、ついてこい」
ライオネルとレナートが村の中に入っていくと、兵士達が簡易な基地を設営しだした。
俺達冒険者も馬を兵士に返すと、自然と集まる。
「明日から調査って話だけど、今日はどうすんの?」
レナートの仲間の女性が皆に聞く。
確かヴァンナだったかな?
「さあな」
「稼がせてほしいが……」
「今日は設営で終わるんじゃないか?」
皆が意見を言っていく。
「ヴェルナー、ライオネル様はどうだ?」
ロビンが聞いてくる。
「わかってるだろ。あれだけ細かく、働けって言う男だぞ? 無駄な時間なんか作らない」
「あんた、ライオネル様のこと知ってんの?」
ヴァンナが聞いてくる。
「今回の遠征の演習に付き合ったんだ。例の説明書を見ればわかると思うが、きっちりした人間だ。多分、お前らが思っている倍以上は細かい」
「じゃあ、これからも仕事ね。各自で昼食にしましょう。依頼主がそうなら戻ってきたらすぐに動けるようにしないと。それが高評価に繋がるわよ?」
ヴァンナがそう言って、仲間のオネストと離れていったので各自がばらけていった。
俺達も兵士が作ってくれた作戦会議用のテーブルにつき、缶詰を食べだす。
「あのヴァンナもぶっきらぼうなしゃべり方だが、随分と優しいな」
わざわざ高評価を促してきた。
「まあ、助け合いだしね。それに全員が高評価だったとしてもライオネルは出すでしょうし、それなら好印象を残して次に繋げたいんでしょ。貴族とコネクションを作るのも高ランクにとっては大事なことだし、逆に貴族の依頼を失敗すると、その貴族が冒険者自体を嫌って、二度と仕事を回さないっていうこともあるからね」
ハンターでもそういうのがあったな。
貴族の中にはハンターは使えないって愚痴っている奴も多かったし。
そして、どちらかというと俺もそちら側だった。
俺達がもぐもぐと缶詰を食べていると、ライオネルとレナートが戻ってくる。
そして、こちらにやってくると、ライオネルがテーブルに地図を広げた。
「全員、集合!」
そう言うと、皆が集まってきた。
俺達は座っているから楽で良いなと思いつつ、リーエはまだ食べている。
「村長と話をした。やはりこの人数の部屋は確保できないそうだ。したがって、我々は村の前で陣を敷き、野営とする。また、食料の提供も難しいそうだ。ただ、水の提供はしてくれるし、村の中に規模は小さいが、店があるらしく、それの利用は認めてもらった。しかし、18時以降は門を閉めるのでそれまでに済ませてくれ」
俺らはいいや。
水も出せるし、別に買うものもない。
しかし、リーエは我関せずに食べてるな。
ミスディレクションをかけているのに説明するライオネルの横で食べているから全員がチラチラ見ている。
「午後から仕事ですか?」
レナートが聞く。
「ああ。兵士達はまだ設営があるだろうが、動ける者から動いてほしい。事前に地図を見ていると思うが、これを見ろ」
ライオネルがテーブルの地図を見ると、皆が見る。
大きさは違うが、説明書にあった村周辺の地図である。
そして、その地図は村を中心に時計のように12区画に分かれていた。
これは事前にもらった地図にも描かれていたものだ。
「調査の範囲ですか?」
「その通りだ。私は無駄が嫌いだから事前に範囲を分けておいた。調査及び討伐はこの区画を割り当て、その範囲で行ってもらう」
さすがはライオネルだ。
「どう分けますか?」
「兵士の方で0時から8時を担当する。冒険者は8時から12時を頼む。細かい振り分けはそっちで話し合ってくれ」
まんま時計だな。
俺達冒険者が南西から北の4区画というわけだ。
わかりやすい。
「わかりました」
「よろしい。今日、明日は調査だ。出発時間、帰還時間は君達の裁量に任せる。事前に伝えた通り、魔物を倒してもいいが、メインは調査だ。森に怪しいところはないか、どれだけの魔物がいたかなど細かいことを報告してほしい。基地には必ず、誰かがいるようにするし、緊急性のあることはすぐに報告だ」
とにかく、報告ね。
ライオネルは報連相が好きだしな。
「わかりました。区画を割り当て、すぐにでも動きたいと思います」
「そうしてくれ。兵士達も設営を終えたら動け。それでは解散」
ライオネルはそう言って、再び、村の中に入っていく。
そして、兵士達が散らばり、設営を再開していくと、この場には冒険者の俺達だけが残された。
「さて、どう分けようか?」
あんまり意見は言わないようにしていたが……
「レナート、その前にリーダーを決めよう。お前だ」
「お願いね」
「頼むわ」
「よろしく」
俺の意見に全員が頷いた。
「わかった……じゃあ、どう分ける?」
「俺とイレーネはパーティーだ。俺達で動く」
「あ、俺とアイリーンもだ」
俺とロビンが手を上げる。
「それが良いな。俺達もパーティーだし、これで3区画になるが、君達はどうする?」
レナートが残っている男性冒険者3人を見る。
「まあ、俺達3人でいいんじゃないか?」
「知らない人間じゃないしな」
「俺達は付き合いが長いし、別にいいぞ」
王都の人間なんだろうな。
それでBランクなんだから付き合いもあるだろう。
「では、そうしようか。担当は……別に差はないし、どうでもいいか。ヴェルナー達が8時から9時、ロビン達が9時から10時、俺達が10時から11時、アダルベルト、カスト、ガストーネは11時から12時を頼む」
異論はないので頷く。
全員もそのようで頷いた。
高ランクしかいないから揉めることもなく、実にスムーズだ。
「では、後は各自だ。ただ、何かあったら俺に言ってくれ」
リーダーだしな。
「了解」
「じゃあ、そんな感じでいこうか。解散」
皆が解散すると、リーエが食べ終わった。
「俺達も行くか?」
「ここにいてもやることないしね」
「行きましょう」
リーエが立ち上がったので俺達も立ち上がり、割り当てられた区画の森に入っていった。
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