第124話 同じテントでドキドキしているご主人様ウケる
西門を出ると、穀倉地帯がずーっと広がっていた。
そこに街道が伸びており、そこをゆっくりと進んでいく。
「この国って平野が多いよな」
「そういえばそうね。進みやすくて良いわ」
まあな。
「しかし、ゆっくりなペースですね」
リーエが言うように馬が普通に歩いている。
「例の説明書に書いてあったけど、西門から出て、しばらくは穀倉地帯らしい。そこは農家の人達の迷惑になるから走れない。だからそれまでの間に馬に慣れてくれってさ」
そんなことまで書いてあるのか。
「さすがはライオネル。細かい」
あいつの部下は本当に苦労しそうだ。
「ねえねえ、ヴェルナーさん達は遠征の演習に付き合ったんですよね? 依頼主ってどんな人? 私もその説明書を見て、何これって思ったんですけど」
アイリーンが聞いてくる。
「その説明書通りだ。真面目な性格で非常に細かいところまで考える人間だ」
「そういうのって怖いんですよね……自分の思い通りにならなかったらキレだす」
そういう人間もいるな。
「いや、柔軟でもあるぞ。なんというか、非常に良い人間性の貴族様だ。ただ、友達にはなれないタイプだ」
「わかりますね。あの人がご主人様だったら怖いです」
「私も仲間だとちょっと困るわね。こういうチームを組む遠征ならまあいいけど、常時、あれだと無理」
まあな。
イレーネみたいにもうちょっと寝ようと提案してくる人が良い。
「ふーん……変な貴族様なんですね」
「アイリーン、確かに貴族っぽくないが、本人や兵士の前でそういうことを言うなよ」
ロビンが窘める。
「わかってるわよ。昨日、言われた通り、私は極力、しゃべらないようにする」
そういう話し合いがあったらしい。
「頼むぞ。今回はかなりの報酬を見込める。変に気分を害して、めちゃくちゃになるようなことは避けてくれ」
「わかってるっての。私もBランクよ」
あ、そうなんだ。
「アイリーンもBランクなのね。ロビンがBランクなのは聞いていたけど」
イレーネがちょっと意外な顔をする。
「昇格したばかりですよ。だからこの依頼で失敗したら降格もありえます」
「それは頑張らないとね。私らもこれでCランクなのよ」
「あ、そうですか……というか、あなた達、絶対に2回目ですよね?」
あ、気付いた。
まあ、今のイレーネの言い方は完全に上からだったからな。
先輩風が吹いていた。
「違う、違う」
「いや、いいんですけどね。不必要な詮索をしないのが冒険者のマナーですから」
ぐいぐい聞いてきたベッキーが懐かしいな。
俺達は話しながら進んでいくと、穀倉地帯を抜けた。
すると、前方が走り出したので俺達も続く。
とはいえ、全速力といった感じではなく、流す程度の走りである。
まあ、長距離を進むのでこのペースだろう。
「リーエ、大丈夫?」
「大丈夫です。やっぱりなんか嫌ですけど」
リーエはイレーネの前に乗ってるからな。
「我慢して」
そう言われたリーエは口がへの字だ。
「ヴェルナー」
ロビンが近づいてきた。
「どうした?」
「念のための確認だ。魔物が出た場合はどうする?」
あー、それか。
「後衛の俺達で出張ることがあるか?」
「だから念のためだ。それに森まで行ったら出るぞ」
うーむ……
「馬上から斬れるか?」
「できないことはない。慣れてはいないがな」
「アイリーン、馬から弓を撃てるか?」
「やったことないです」
馬を持っているのにか。
いや、移動手段にしか使ってないからか。
「イレーネは?」
「できるわよ」
「さすがは何でも一級品のイレーネさんですね」
「まあね」
イレーネは本当に何でもできるな。
絵はあれだけど。
「俺達がやろう。複数出てきたら頼む」
俺も馬に乗ったまま剣を使える。
魔法使いだが、馬術は帝国軍人の基礎なのだ。
最初は魔法使いがなんで馬術なんか習わないといけないんだって不満だった。
実際、その不満を教官に言った者もいる。
そいつは演習でただ一人、馬に乗せてもらえず、走らされていた。
それを見た皆が真面目に練習をするようになったのだ。
「わかった。指示をくれ」
「了解」
方針を決めた俺達は平野を走り続ける。
ちょこちょこ馬の休憩をしたり、昼に昼食を食べたりしたが、魔物も出ることがないのでひたすら進んでいった。
そして、日が沈み始めたところで野営をすることになり、馬を止める。
「皆の者、今日はご苦労だった。順調に来ているし、明日の昼前には着きそうだ。今日はここで野営をするが、見張りは我が兵がやる。各自休んでくれ。また明日からも同じ隊列で進んでいく。明日は6時出発となるので十分に休み、遅れないように。では、休め」
ライオネルがそう言うと、皆が馬から降り、野営の準備をする。
「ヴェルナー、あんたらはどうするんだ?」
ロビンが聞いてくる。
「俺達は缶詰だし、早々にテントに引っ込む。俺とイレーネは朝が弱いからさっさと寝るんだ」
「なるほどな。俺達はこの辺で焚火を起こし、それからテントだ。何かあったら言ってくれ」
冒険者って焚火が好きだよな。
俺も嫌いじゃないけど。
「わかった。じゃあ、また明日な」
「ああ」
ロビンとアイリーンが焚火の準備を始めたのでテントを設営していった。
そして、中に入ると、缶詰を食べる。
「あー、疲れた」
「1日中、馬でしたもんね」
馬車とは違うわな。
「食べ終わったらトランプでもするか?」
「する」
「御二人共、好きですねー」
リーエも好きだろ。
「まあ、軽くやって早めに寝よう。明日も馬だしな」
「まあね。あと、今日は寝巻きに着替えるわ。7日もこのまま寝るのは嫌」
あー、まあ、そうかもな。
それにあれだけの兵がいれば盗賊も来ないし、問題ないだろう。
「そうするか」
「着替える時間も必要ですから5時起きですね」
まあ、そうなっちゃうね。
夕食を食べ終えると、クリアダストをかけ、寝巻きに着替える。
そして、トランプをしていったが、さすがに早めに休むことにした。
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