第123話 お馬さんです
西門にやってくると、すでに30人近くはいる兵士とロビンとアイリーンを含む10人の冒険者、それに豪華な鎧を着たライオネルの姿が見えた。
「皆さん、おられますね」
「まだ30分前なのに偉いわ」
「さすがはBランクだ」
Dランクの俺達が一番遅い。
「ライオネル様に挨拶しましょう」
ライオネルに近づくと、ロビンとアイリーンが俺達に気付いたが、先に挨拶なので軽く手を上げるだけに留める。
「ライオネル様、おはようございます」
「おー! ヴェルナー、ちゃんと来たな」
「いや、来ますよ」
「そうか? 来ないことも予想していたぞ」
どういう意味ですかね?
「私は密偵の類じゃないですよ」
「そうだろうが、そう疑われることすらも嫌がると思っていた。それを証拠に歩き方に違和感がないぞ。たった数日でもう修正してきたか。実に怪しいな」
やめてっての。
「疑われて良いことなんてありませんから。私は普通の冒険者です」
「そうか。まあよかろう。それで今回もその子を連れていく気か?」
ライオネルがリーエを見る。
「ええ。邪魔になるようなことはしません」
「大人しい子だったしな。しかし、さすがに依頼料は出せんぞ? 一応、ギルドを通している仕事だからな」
それはそうだろうな。
リーエは冒険者じゃない。
「ええ。わかっています。正直、このメンツにDランクの自分達がいることすら変です。感謝しています」
「ふむ……まあ、期待している。たくさん働いてたくさん稼いでくれ。私は働く者を優遇する」
「わかりました」
一礼し、その場から離れると、ロビンとアイリーンのところに向かった。
「よう」
「おはよう」
2人が挨拶をしてくる。
「おはよう」
「おはようございます」
「よう。アイリーンも来たんだな」
こいつこそ、断るかと思っていた。
「指名依頼ですからね。断ったら次が来ませんよ。というか、なんで指名依頼なんですかね? 私、そんなに有名じゃないですし、あの貴族様も知りませんよ」
「それについては悪い。俺のせいだ。あの貴族様と今回の遠征の演習に付き合ったんだが、その時に他の冒険者のことを聞かれたからロビンとアイリーンの名前を出した。お前達しか知らないんだよ」
これに関しては俺の性格とか社交性は関係ない。
むしろ、頑張った方だと思う。
「あー、それで……」
「指名依頼の理由がわかったな。アイリーン、貴族様や兵士だけじゃなく、冒険者にもあまり絡まないようにしてくれよ」
「私から絡んだことなんて一度もないわよ。向こうから絡んでくるの」
アイリーン、見た目も良いし、すらっとしていて姿勢も良いからな。
目を引く女性ではある。
「わかるわね」
自他共に認める美人のイレーナさんが頷く。
「どう対処してます?」
ミスディレクション。
「はっきり断ることね。今は大丈夫だけど」
イレーネが俺を指差してくる。
「ご夫婦でしたね……ハァ……」
ため息の意味がわかるのは俺とイレーネとリーエだけ。
多分、ロビンはわかっていない。
「ロビン、他の冒険者連中を知っているか?」
「全員、顔は見たことあるし、知っているな。ただ、俺達はスリーフの町の人間だし、話したことがあるのは数人だ」
そういえば、スリーフの町出身で王都に出てきているんだったな。
「他意はないんだが、気を付ける奴はいるか?」
「いや、皆、名の売れている冒険者だ。特に問題を起こすような奴はいない。でも、あの金髪の男だけは知っておいた方が良い」
ロビンが視線を向けた先にいるのはサラサラヘアーの若い優男だ。
仲間と思われる同年代の男女と話をしている。
まあ、魔力的に見れば、ここにいる人間の中では頭一つ抜けていた。
もっとも、それでもイレーネの半分もないが。
「あれは?」
「ウチの国にはAランク冒険者が2人いる。3人目になると言われているのがあのレナートだ。実力はピカ一だし、正直、Aランクの実力は十分にある」
へー……
「話をしている男女はパーティーメンバーか?」
「ああ。オネストとヴァンナだ。共に実力者だな。あの3人は安定したパーティーだ。貴族の依頼だし、ギルドが入れとけって思ったんだろう」
ふーん……まあ、3人共、ダリア以下だな。
問題ないだろう。
「イケメンさんね?」
「そうですか? 私はもっと誠実そうな人が良いです」
「そう?」
イレーネ、にやにやしてる……
からかっているな。
「他は?」
「他も優秀だ。まあ、優秀じゃない奴はここにはいない」
Dランクですまんな。
「全員、集まれ!」
話をしていると、ライオネルが集合をかけてきたので皆が集まる。
ライオネルの後ろにはずらっと兵が並び、俺達はライオネルの正面に横一列で並んだ。
「今日はよく来てくれた。これから7日間、君達にはぜひとも働いてほしい。私は身分にかかわらず、優秀な働き者が大好きだ。働いた者にはそれ相応のものを出す。十分に期待してほしい。それでは参ろうと思うが、その前にこの中でエリーフ村に行ったことがある者はいるか?」
ライオネルが聞くと、俺達とロビン、アイリーン以外の冒険者が手を上げた。
「ふむ。では、諸君らが前で先行してくれ。その後ろに私と兵が行く……お前達は後衛だ」
ライオネルがこちらを見て、指示してきたので頷く。
「よろしい。それでは出発だ。馬は用意してあるから乗ってくれ」
門の近くには馬がずらっと並んでいた。
俺達はそれぞれ馬に近づいていく。
「リーエは私のところに乗せるわ」
「私も乗馬くらいはできるんですけどね」
万能ホムンクルスだもんな。
「絵面が心配だからダメ」
心配だな。
「リーエ、大人しく乗っとけ」
「わかりました」
馬に乗ると、イレーネとリーエも乗った。
他の人達も乗ると、ライオネルの指示通りに冒険者達が門を出て、それに兵士とライオネルも続く。
そして、最後に俺達が続き、門を抜けた。
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