第122話 3日でお風呂に入りたいって言います
翌日、雨も止み、快晴となったので買い物に出かけると、缶詰ショップに行き、見ていく。
「リーエはこれが食べたいの? 5万ソルもするけど」
イレーネがヘブンバードの缶詰を手に取り、怪訝な顔になった。
「らしい。俺はこれ」
ダークドラゴンフィッシュの缶詰を指差す。
「3万ソルもするわよ?」
「いや、食べてみたいってだけ」
「贅沢……ったく、その分、働いてよね」
イレーネがそう言って2つの缶詰をカゴに入れる。
なんかお母さんみたいだっただけど。
「しかし、缶詰だけで大丈夫ですかね? さすがにパンは7日ももちません」
微妙なところだな。
食べられないこともないと思うが、怪しい。
「村はダメか? パンくらい売ってくれないかね?」
「どうでしょうか?」
「ふっ、タダでくれるかもよ? 睡眠薬入りのやつ」
世界中の村の人に悪いが、もう村はダメだな。
まったく信用できない。
「やめとくか」
「クッキーとか乾パンを買いましょうよ。そういう缶詰もあるわ」
「そうするか」
俺達はクッキーや乾パンなども含めた様々な缶詰を買うと、時間があったので魔道具の店なんかも回り、宿屋に戻った。
「おかえりなさいませ」
受付にいる女性が一礼したので近づく。
「明日の昼食もお願いしたい。それとだが、明日から7日ほど仕事で遠征することになった。なので、明日でチェックアウトする」
「かしこまりました。お弁当の方も用意しておきます。戻られてからもぜひとも当館をご利用ください」
どうだろ……もう割引は利かないだろうしな……
「ああ。すばらしい宿屋だったし、機会があればそうさせてもらう」
これが大人の社交辞令だ。
申し訳ないが、正規料金は無理。
缶詰買っちゃったし。
「はい。次回も特別割引でご案内させていただきますので」
ここにしよ。
「感謝する」
俺達は部屋に戻ると、ソファーに腰かけ、荷物の確認や依頼の詳細が書いてある書類をチェックしていく。
「缶詰は念のため、分けて持っておきましょう」
リーエが食料を3等分し始めた。
「頼む。泊まりはテントか?」
紙を見ているイレーネに確認する。
「っぽいわね。まあ、兵士が何人来るかはわからないけど、冒険者が10人だし、そんなスペースを貸せる建物もないでしょ。村の敷地内を貸してくれれば良い方だわ。まあ、村の近くで野営じゃない?」
うーん……
「そっちの方が良い気がするな」
「フォレナ村のせいでね……兵士達が見張りをしてくれるだろうし、そっちの方が安心安全よ。あのライオネル様直属の兵なら民度も練度も高いでしょうし」
真面目だからな。
「ヴェルナー様、イレーネさん、缶詰を分けました。収納をお願いします」
「ああ」
「そうね」
俺とイレーネは缶詰を収納していった。
「それで今回の仕事を終えたら王都を出るということでよろしいですか?」
リーエが確認してくる。
「ええ。まあ、図書館のことがあるから数日はいると思うけどね。ただ、十分に稼いだし、もう良いでしょ。出るべきよ」
「ライオネル様の勧誘ですか?」
「それそれ。明日からの遠征でウチのヴェルナーが活躍するじゃない? まーた誘ってくるわよ。受けるつもりもないんだからしつこくなる前に出ましょう」
俺も同じ意見だ。
「この前はイレーネが何もしてなかったが、今回はそういうわけにもいかない。イレーネがあれだけ動けると知れば絶対に欲しがる。上手く断れると思うが、問題が大きくなる前に出るべきだ」
それに貴族はライオネルだけじゃない。
「十分稼げたしね。リーエ、今いくら?」
「190万……あ、先程の買い物で180万になりました」
この数日でかなり貯金ができたな。
「これに明日から依頼料が最低でも日当の20万……リーエももらえるのかしら? そしたら30万? うーん、まあいいわ。とにかく、最低でも140万プラスボーナスよ。十分、十分」
目標だった200万ソルを大きく上回るな。
「ここに戻って、数日で出るとして、次はどこだ?」
「うーん……とりあえず、北のルミフィアに行きましょうよ。そこから3国に行けるらしいし、そこで考えましょう」
クレイナの冒険者ギルドのベニーが言っていた町だな。
王都の次に稼げる町で北西のマルーン王国、北のカリス王国、北東のエオリア王国に行ける。
「じゃあ、そんな感じでいこう。リーエも良いか?」
「はい。帰ったらルミフィアに行く方法なんかをブリジットさんに相談しましょう」
詳しいだろうしな。
「そうするか」
「よし、明日からはこの宿と7日もお別れしちゃうし、豪遊するわよ。ホムンクルスちゃん、ワイン」
イレーネが紙を置き、リーエに要求する。
「まだ昼過ぎなんですけど」
「明日の朝は早いから先に飲むの。お風呂に入って、ちょっとゆっくりしたらすぐに寝る感じ」
「朝6時でしたね……5時起き、シャワーを浴びたいなら4時半起きになります」
浴びたいな……
「4時半ね。了解」
「リーエ、頼むわ」
「お任せください」
俺達は昼間からワインを飲み、トランプをする。
夕食もモルティスフィッシュの揚げ物を食べた。
お風呂もいつもよりもゆっくり入り、この宿を堪能すると、22時前には就寝した。
翌朝、リーエに起こしてもらった俺とイレーネは順番にシャワーを浴びる。
そして、朝食を食べ、受付で弁当をもらうと、宿屋を出た。
「さて、今日から当分はテント暮らしだけど、切り替えていきましょう」
「まあ、テントもそこまで嫌いじゃないしな」
「うんうん。じゃあ、西門に行きましょう」
俺達はいつもとは反対方向の西門に向かった。
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