第119話 イレーネさんがご主人様キラーになっちゃいました
「今何時だ?」
イレーネに聞く。
「14時半」
今から森に戻る時間でもないか。
「ギルドに行こう」
「そうね」
東門をあとにすると、すぐそばにあるギルドに入る。
そして、右端のブリジットのもとに向かった。
「あれ? 依頼は? もう終わったんですか?」
「終わったわね」
今日もブリジットの対応はイレーネだ。
「何かありました?」
「演習ということでライオネル様が色々と考えておられてね……昨日から寝てない兵士を連れてきたんだけど、昼でギブアップ」
「またすごいことしますね……あそこも危ない森なんですけど……」
ホントにな。
「それでも犠牲はなかったし、実りのある演習だってさ。早くなっちゃったけど、私達も何も問題ないし、満額もらえって」
ライオネルからもらった書類をカウンターに置いた。
「まあ、依頼主が良いならそれで構いませんが……」
ブリジットが書類を確認していく。
「あ、それと魔石ね」
リーエがゾンビとオークの魔石をカウンターに置いた。
「わかりました。では、依頼達成ということで処理します。少々、お待ちください」
ブリジットが書類と魔石を持って、奥に行った。
「ランクアップはなしか」
ちょっと期待していたんだが。
「さすがにね。でも、今回の評価ポイントは大きいと思うわ」
話をしていると、すぐにブリジットが戻ってくる。
「お待たせしました。依頼料が40万ソル、ゾンビの魔石が8000ソル、オークの魔石が5万ソルで合計45万8000ソルになります」
ブリジットがトレイを置いたので金を取り、イレーネと分ける。
「良い仕事だったわ」
「こちらとしても問題なく終わって良かったです。明日からはどうされますか?」
「正直、今日は消化不良だし、明日も森に行くと思うわ」
まあ、行くな。
「わかりました。頑張ってください」
「ええ」
あ、そうだ。
「ブリジット、頼みたいことがあるんだが、良いだろうか?」
「ん? 何でしょう?」
「実はこの手紙をCランク冒険者のベッキー・グッドウィンという女性に届けてほしいんだ」
「おや? ラブレターですか?」
イレーネの前で言うかね?
「違う。ベッキー宛だが、本当は一緒にいるトレイシー教授宛てだ」
「届けるのは良いですが、どこにいるかわかりますか? まさかダニア大陸ですか? 結構な料金がかかりますけど」
ダリアがそう言ってたな。
「いや、マルーン王国にいるはずだ。同じタイミングでダニア大陸を出たからまだいると思う。ただ、どこにいるのかはわからない」
「隣の国ですね……わかりました。2万ソルかかりますけど、よろしいですか?」
高いな、おい。
まあ、銃をもらったことを考えれば安いくらいだけど。
「ああ。頼む」
財布から2万ソルを取り、トレイに置く。
「ベッキーさん宛てに何かメッセージでも添えますか?」
「こっちは元気でやってるとだけ」
それで十分だろう。
「わかりました。では、マルーン王国のギルドに連絡し、ベッキーさん宛てに送っておきます。ちょっと時間がかかるかもしれませんが、それはご承知ください」
「ああ。大丈夫だ」
別に急いでいないし。
「じゃあ、私達はこれで帰るわ」
「はい。お疲れさまでした」
俺達はギルドをあとにすると、宿屋に戻った。
そして、リーエが淹れてくれたお茶で一息つく。
「問題なく終わったな」
「ええ。私達はね」
兵士達は問題ばっかりだったな。
まあ、一言で言えば寝不足だが。
「兵士も大変だ」
「仕官はどう?」
「ない。悪くない貴族だが、ちょっと真面目すぎるし、割を食いそうだ。それに女性関係が怪しい」
「ヴェルナーは私のことが好きだから心配よね」
イレーネがそう言って、手を握ってきた。
なんというか、本当に手を握るのが好きのようだ。
俺もだけど。
「だからイレーネに戦うなって伝えたんだよ」
「あー、それそれ。あれは何? 急に頭の中でリーエの声が聞こえてきたからびっくりしちゃったわよ」
「念話だな。そういう魔法だ」
俺とリーエはたまに使っている。
「そういうのもあるわけね」
「こうやって接触しているとやりやすいぞ。脳内の言葉を魔力に込め、相手に流すイメージだ」
実際に流してみるか。
『今日は肉と魚、どっちにする?』
「魚が良いかな……ヴェルナーさー、そこは愛の言葉を囁くところじゃない?」
ちょっと思ったけど、恥ずかしかったんだよ。
「悪いな。でもまあ、こんな感じでやるんだ」
「ふーん……」
イレーネが魔力を動かし始めた。
『トランプする?』
愛の言葉じゃない……
「するけど……いや、愛の言葉は?」
「それはまた今度ね……」
イレーネが人差し指を俺の唇に当て、ウィンクをした。
これを食らって、惚れない男はいないと思う。
「ああ……」
「よし、トランプよ。夕食までめちゃくちゃ時間があるじゃないの」
「そうだな」
俺達は夕食の時間までトランプをして過ごしていった。
そして、夕方になると、魚料理を食べる。
「今日の稼ぎでいくらになったんだっけ?」
「えーっと、120万ソルを超えていると思う」
「軽く大台を超えたわね……明日も森で良い?」
「ああ。200万ソルを目指して、やろうじゃないか。多分、そのくらいにCランクになってるだろ」
「じゃあ、やっていきましょう」
俺達はやる気を出し、夕食を食べていった。
しかし、ホムンクルスちゃんや、空気を読んでだんまりになるんじゃない。
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