第118話 兵隊ゾンビです
休憩していると、兵士が走ってきた。
「ライオネル様、こちらの演習を終えました。負傷者はいません」
「よろしい。交代して森に入れ。我々ももう1時間ほどしたら戻る」
「はっ!」
兵士が走っていく。
「ふむ……伝令も上手くいっているな……」
「ライオネル様、我々ももういけます」
「わかった。では、前列と後列を入れ替え、もう一度やるぞ」
「「はっ!」」
休憩を終えたのでさらに森の奥を進んでいく。
やることがないなーと思いながら歩いていると、オークの魔力を感じた。
大丈夫かなと思いつつ、言うわけにもいかないのでそのまま進んでいくと、オークが現れる。
「オークです!」
「落ち着け! 巨体だが、たいした相手ではない。冷静に立ち回って対処せよ」
前列の兵士3人はオークを囲むと、巧みに戦っていく。
さすがは鍛えられた兵士なだけあって、木々を使って、オークの攻撃を躱しながら攻撃し、ついには1人の兵士が心臓に剣を突き立て、倒した。
「うむ! 良いぞ! 少し休め!」
「「「はっ!」」」
兵士も寝てないのに大変だ。
「ヴェルナー、魔石を回収していいぞ」
「俺達は何もしてないんですが……」
「私達はいらないのだ。落ちているんだから拾えばいい」
貴族さんは5万ソルなんかいらないらしい。
「ありがとうございます。リーエ」
「わかりました」
リーエが休んでいる兵士の横でオークの解体を始める。
「ふーむ……ヴェルナー、どう思う?」
「何がでしょう?」
「森での動き、兵士の戦い方などだ。何でもいいから意見を言え。そのために雇ったのだ」
うーん……
「ライオネル様の指揮も兵士の練度も言うことがないです。ただ、さすがに疲れが濃いです。今日は何とかなるかもしれませんが、明日は確実に犠牲が出ます」
当たり前だ。
寝てないんだから。
「もし、森で不測な事態が起きても耐えられるのは1日までか」
「実際は1日耐えれば良い方かと……」
普通は脱走兵が出る。
「所詮は演習だからな……わかった。よし、街道まで戻るぞ。そこで休憩とする」
「「「はっ!」」」
リーエが魔石の回収を終えると、引き返していく。
道中にゴブリンやコボルトが出たが、それも兵士達が蹴散らして戻ると、兵士達が街道でへたり込んでいた。
「疲れたか?」
「かなり……実際に森で動くのは訓練とは違います」
1人の兵士が弱音を吐く。
そりゃそうだ。
寝てないんだから。
「よし、休憩だ。君達も休んでいいぞ」
「わかりました」
ちょうど昼の時間だったのでライオネルや兵士達から少しだけ距離を取り、弁当を食べる。
「食べにくいわね……」
「まあな……」
兵士達は不味いと評判の携帯食料だ。
一方で俺達は豪華な弁当。
疲れも違うし、この差がすごい。
「これ、夕方までやるんですかね?」
「じゃない? まあ、念には念を入れる貴族様だわ」
付き合う兵士も大変だ。
俺達は弁当を食べ終えた後も待つ。
正直、森で稼ぎたいなと思わないでもないが、そういうわけにもいかないので待ち続けた。
そして、1時間以上経つと、ライオネルがこちらにやってくる。
しかし、兵士がついてくる様子はない。
「ヴェルナー、イレーネ、これ以上の訓練に意味があると思うか?」
ライオネルもわかっているだろう。
「思いません。昼食を食べ、休憩となったことで兵士達の緊張の糸が切れました」
「ライオネル様がこちらに来たのに護衛の兵士がついてきていません。完全に士気がなくなっています。やはり眠気には勝てないのでしょう」
わかる、わかる。
眠いのは無理だよ。
「すでに何人か寝ているし、残りも睡魔と戦っている感じだ。これから森に入れと命じても犠牲が出ると思う」
当たり前だ。
寝てないんだから。
「だと思います。これは演習です。犠牲を出してはいけません」
「わかった。今日はここで引き上げるとしよう。ああ、もちろん、依頼料は満額出すから安心してくれ」
ライオネルはそう言うと、兵士達のところに戻っていく。
「鬼ではないんだよな」
「兵士のことを気遣える人ね。ただ、真面目すぎ」
同感だ。
「起きろ! 休憩は終わりだ! 今日はこれで帰還する! さっさと帰って、ベッドで寝ろ!」
兵士達が起き出した。
「俺達も行くか」
「そうね」
ライオネルと兵士達のところに行くと、再び、隊列を組んで、来た道を引き返していく。
足取りは重いし、行きの時はあれだけ警戒していた兵士達に緊張感はない。
それでも歩き続け、森を抜けると、町に戻った。
「よし、今日はここで解散とする。家に帰って休むと良い」
ライオネルがそう言うと、兵士達はぞろぞろとゾンビのように町中を歩いていった。
「ライオネル様、不測なことが起きたとしても睡眠は必要ですよ」
「そのようだな。午後になると、完全に終わった。何にせよ、実りのある演習だったと思う。君達はよくやってくれた」
「いえ、こちらも勉強になりました」
無茶はするなってことだ。
「うむ。では、これをギルドに持っていけ。少し早くなったが、何も問題なかったと報告すればいい。それで金を受け取れる」
ライオネルが依頼の書類を渡してくる。
見てみると、既にサインがしてあった。
「ありがとうございます」
「ああ。実に良い演習だった。それではな」
ライオネルは門の近くにある詰所の前にいる馬に跨ると、そのまま帰っていった。
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