第117話 微妙……
そのまま歩いていくと、森の中に入る。
特に止まることなく、街道を進んでいくが、やはりあちこちに魔力を感じた。
「ヴェルナー、君達はどこの出身だ?」
ライオネルが聞いてくる。
「私達はダニア大陸のコスタリナ王国から来ました」
嘘は言ってない。
「ほう? 海を渡ったわけか。何か問題でも起こしたか?」
兵士さん達が緊張するようなこと言わないでほしいな。
「そんなことないですよ」
「そうか? 君の奥さんは慣れているように思えるし、君の歩き方は軍人のそれだ。ただのDランク冒険者とは思えん」
軍人と聞いた兵士さん達の緊張がすごいことに……
「軍にいたこともありますよ。ただ、大きな声では言えないのですが、イレーネと一緒になることに周囲から反対を受けましてね。それでまあ……」
ギルドが思っていることに乗っかっておこう。
「ははっ、どこぞの令嬢か? それとも略奪愛か? まあ、男らしくて良いじゃないか」
そうかな……
「あのー、あまり言わないでもらえると……」
「わかっている。私も女性関係に関しては人に自慢できるものではない」
愛人さんがいますしね。
「お願いしますね。俺達は新天地で新しい人生を歩み始めたところなんです」
これは嘘じゃない。
「良いことだ。頑張ってくれ」
ライオネルが上機嫌に頷いた。
「ありがとうございます」
その後も歩き続け、分岐点を右に行き、さらに進んでいく。
そして1時間くらい歩くと、ライオネルが手を上げ、行軍が止まった。
「ここらへんで良いだろう。疲れは?」
「「問題ありません」」
前と後ろにいる兵が答える。
「よろしい。それではこれより森の中に入る。前列の部隊は左の森に入り、1時間ほど魔物を倒してこい。後列はここで待機し、部隊が戻ってきたら報告せよ。我が隊は右に入る」
「「「はっ」」」
兵士達がそれぞれ動き出すと、俺達も右の森に入る。
隊列は前に3名、後ろに2名、真ん中がライオネルと俺達だ。
「ヴェルナー、これから魔物が出ると思うが、まずは君達が倒してくれ。それで魔石も採取して欲しい。時間を知りたいのだ」
「わかりました」
このまま進むとゾンビに遭遇するな……
『リーエ、ゾンビは俺が倒す。お前とイレーネは動くな』
『わかりました。イレーネさんにも伝えます』
そのまま歩いていくと、10メートル先にゾンビが見えた。
「ライオネル様! ゾンビです!」
前方の兵士が告げる。
「うむ。ヴェルナー、早速だが、頼む」
「はい」
俺はまずライオネルから離れると、さらに兵士達の前に行き、ようやく剣を抜く。
そのまま近づいてくるゾンビに剣を向けた。
動きが遅いし、こっちから行った方が早いなと思いつつ、間合いに入ってくるのを待つ。
そして、間合いに入ってきたので踏み込むと、ゾンビを肩口から両断した。
「おー! すばらしいな! 見たか!?」
「ええ。見事な剣術です」
後ろで称賛の声が聞こえていると、リーエがやってきて、魔石の採取を始める。
そして、数十秒待っていると、リーエが魔石を採取し終えた。
「ライオネル様、終わりました」
「ふむ……このくらいか……これなら認めても良いかもしれないな」
どうかねー?
「ライオネル様、あまり認めない方が良いですよ」
イレーネが進言する。
「ほう? 何故だ?」
「際限がないからです。それにリーエは上手ですが、必ずしも冒険者全員がそうとは限りません。ある程度、魔物にランク付けをし、一定以上なら魔石を採取しても良いと認めた方が良いと思います」
ダリアの護衛依頼を受けた時にベッキーから聞いたな。
「ふむ……そのランクはどれくらいがいい?」
「オーク以上が良いかと。オークは5万ソルですのでちょっと後ろ髪を引かれます」
「わかった。貴重な意見に感謝する。それにしてもヴェルナー、見事な腕だな」
頷いたライオネルが改めて褒めてくる。
「いえ、これくらいは……」
「謙遜するな。実に見事だった。部下に欲しいくらいだな」
いやー……
「過分ですが、そのように評価していただき、感謝します」
「はっはっは。お前、貴族に仕えてたか? すばらしい断り方だぞ」
魔導帝国の皇帝陛下に仕えてました。
「いえ、そんなことはないです」
「ふっ、思ったより面白い駆け落ちのようだ」
違うよー。
多分、あなたが思っている以上のことをしたよー。
海に身を投げだよー。
「あの、あまり詮索は……」
「わかっておる。さて、君達は少し休んでいいぞ。これからはこちらの兵士が魔物を狩る。ついてこい」
「わかりました」
元の隊列に戻ると、さらに奥に進んでいく。
『リーエ、イレーネに今日は戦うなと伝えてくれ。ライオネルは冗談めいていたが、結構、本気で仕官を持ちかけていた』
頷いたら本当に雇ってくれたと思う。
もし、イレーネの剣まで見たら本気で欲しくなるだろう。
『わかりました。その方がよろしいと思います』
その後も奥に進んでいくと、コボルトが出た。
これを兵士があっという間に倒すと、さらに奥に進んでいく。
そして、これを1時間ほどやると、休憩となったのでなるべく、ライオネルとの間に兵士がいるように位置取りしながら木に背を預けた。
「ヴェルナー、王都の冒険者は何人くらい知っている?」
休んでいると、ライオネルが聞いてくる。
「2人ですね。道中で出会った者です」
「名前とランクは?」
「ロビンとアイリーンの2人パーティーです。ロビンはBランク、アイリーンは聞いてないのでわかりません」
「ふむ……君の目から見て、どうだ?」
本番の遠征に誘うのかな?
「ロビンは堅実ですし、実力もあります。アイリーンも実力があるのは間違いないのですが、ちょっと素直というか、感情がそのまま顔に出ますので護衛等には不向きですね」
一応、言っておく。
「そうか……他は知らんか?」
「私達はここに来たばかりですので」
「それもそうか。わかった。参考にしよう」
入れるのかな?
アイリーンは大丈夫だろうか?
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