第111話 石切したいです
「湖の方はどう?」
分岐点まで戻ってくると、イレーネが聞いてくる。
「多いな」
「朝よりも多いです。20人以上はいます」
「まあ、仕方がないわね」
人が多いのは最初からわかっていたことだ。
「俺だけミスディレクションを解くが、イレーネとリーエはそのままな」
どうしても美人のイレーネと子供のリーエは目立ってしまう。
「そうしてちょうだい」
「では、行きましょう」
自分のミスディレクションを解くと、分岐点から奥に進んでいく。
そのまま歩いていくと、広場に出たのだが、壮大な湖が広がっており、近くには何人かの冒険者が休んでいたり、観光客らしき人達が冒険者と共に湖を見ていた。
「想像以上に大きいわね」
「向こう岸がかろうじて見えるレベルです」
これは人気になるわ。
「人が少ないところに行き、採取をしますか?」
「そうする。私は下を見るからよろしくね」
「お任せください」
俺達は湖まで行くと、湖沿いを左回りに歩いていく。
「おっ、薬草発見」
イレーネがかがんで採取を始めたので学習ができる俺もすかさずしゃがんで手伝う。
「あれもか?」
同じような草が近くにも生えている。
「そうそう。結構あるわね。こんなに人が集まるところなのにこんなにあるって、ここも誰も採ってないわ」
まあ、どこもそうなんだろうな。
俺達は採取をしながら湖沿いを歩いていく。
すると、人が集まっているところからかなり離れた位置で紫色の怪しい草が生えているのを見つけた。
しかも、かなりの数がある。
「毒々しいな」
これじゃない?
「毒切草ね」
やっぱり。
「毒があるのか?」
「ええ。葉に毒がある。採取する時は葉に触れないように茎を折るの」
イレーネが器用に茎の根元を折った。
「イレーネは本当に器用だな」
「でしょ? 私、上手いもん」
本当に謙遜もしないな。
まあ、そこがイレーネの良いところでもあり、好きなところでもあるのだが。
「これ、いくらになるんだ?」
「1000ソルくらいじゃない?」
何も言うまい……
俺とイレーネがせっせと採取していき、リーエが辺り(湖)をぼーっと見張る。
すると、覚えのある魔力が近づいてきていた。
「ヴェルナー様、イレーネさん、ロビンさんとアイリーンさんですよ」
リーエがそう言うので立ち上がる。
すると、2人がこちらに近づいてきていた。
「よう。あんたらも来てたか」
「何をしているんです?」
2人が声をかけてくる。
「採取。ギルドに頼まれたんだよ」
「採取? よくやるな」
「全然、儲からないですよね?」
儲からないな。
「頼まれたから休憩がてらにやっているんだ。それに俺達はまだDランクだからな。地道にやっている」
地道に見せかけたごますりランクアップ戦法だが。
「ん? Eから上がったのか?」
そういや2人と話した時はEランクだったな。
「ああ。王都に着いたら上がった」
「それはおめでとう」
「良かったですね」
2人は嫌味なく、祝福してくれる。
「そっちは朝からか?」
知ってるけど。
「ああ。早速、始動だ」
「どんな感じ?」
「まあまあってところだ。良い依頼がなくてな。あればもっと儲かるんだが……」
Bランクだし、儲かるんだろうな。
「ああいう観光客の護衛は?」
いまだに湖を見ている人達を見る。
「あれも悪くない仕事なんだがな……」
「私は好きじゃないです。言うことを聞かないし、わがままばっかりですもん。危ないって言うのにどこかに行こうとするんですよね……」
あー、アイリーンが向いていないんだ。
「気持ちはわかるな」
正直、俺も向いていないと思う。
「ですよね? やるなら魔物退治ですよ。良い依頼があると良いんですけど……」
「まあ、その辺は追々だな。ある時はあるし、ない時はない。じゃあ、俺達はもう一仕事してくる」
ロビンが手を上げる。
「ああ」
2人はそのまま森の中に入っていった。
「よいしょっと」
話に入らず、黙々と採取をしていたイレーネが立ち上がる。
周りにはあれだけあった毒切草がなくなっていた。
「お疲れさん」
「ヴェルナーもね。採取はこんなものかな……」
「今、何時だ?」
そう聞くと、イレーネが懐中時計を取り出す。
「14時過ぎ……ギルドで精算して、図書館に行く?」
「そうだな……リーエ、良いか?」
ずーっと湖を見ているリーエに聞く。
「ええ。帰りましょう」
俺達は湖をあとにし、来た道を引き返していくと、森を出た。
そして、町まで戻ると、近くにあるギルドに入る。
ギルドはやはり数人の冒険者がいるが、朝と比べるとかなり空いていたので右端にいるブリジットのもとに向かった。
「おかえりなさい。どうでした?」
ブリジットが笑顔で聞いてくる。
「そこそこ。それにしてもすごい森と湖だったわね」
「でしょ? 自慢の稼ぎ場所と観光地なんですよ」
わかる、わかる。
湖なんかリーエが夢中だったし。
「ちょっと滞在して、稼ごうかと思っているわ」
「お願いします」
「じゃあ、今日の成果ね」
イレーネがそう言うと、リーエが3つの魔石と採取した薬草と毒切草をカウンターに置いた。
「オークが2でビッグボアが1ですか……すばらしいですね。早くBランクになってくださいよ」
俺達のことを二重登録って思っているし、元Bランクって思っているな。
イレーネは合ってる。
「上げてよ」
「上げたいですけど、規定があるんですよねぇ……いっぱい仕事をしてください。あ、それと薬草と毒切草もありがとうございます。大変助かりますよ」
「得意だし、良い気分転換だったわ」
ちょっと腰が痛いけどな。
「では、精算をしてきますので少々、お待ちください」
ブリジットが魔石を持って、奥に行く。
「カードを要求しないってことはランクアップはなしか」
「さすがに上がらないでしょ。昨日、Dランクになったばっかりよ?」
「まあな。しかし、ランクアップの基準を教えた方が冒険者のモチベーションアップに繋がらないか?」
目標がある方が頑張れる。
「単純な加点方式じゃなく、表に出せない基準があるんでしょ」
マイナスがあるのか……
アイリーンが依頼主と揉めたら評価が落ちるって感じだろうな。
「今のところ、俺達にマイナスはないよな?」
「ないと思う。最速最短で来ていると思うわ」
俺達が話をしていると、ブリジットが戻ってきた。
「お待たせしました。オークの魔石が10万ソル、ビッグボアが7万ソルになります。それと薬草が6000ソル、毒切草が1万4000ソルで合計19万ソルになります」
ブリジットがトレイを置いたので金を受け取る。
「どうも」
「明日も森に行かれますか?」
「そのつもりよ。今日はこれから図書館に行くけど、明日はフルだと思う」
「わかりました。当ギルドは朝の6時から8時、夕方の17時から18時は大変混み合いますので注意してください」
確かに朝、多かったな。
「ええ。了解。じゃあ、またね」
俺達はギルドを出た。
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