第110話 今夜は早く寝るべきですね
リーエが魔石の採取を始めたので周囲を見回す。
「いる?」
「ゴブリンやコボルトはいるな」
「そういうのを地道に倒す方法もあるし、大物狙いもあるわよ」
ふーむ……
「今日は初日だし、早上がりだ。大物狙いでやってみないか?」
「良いわよ。じゃあ、それでいきましょう」
俺とイレーネが方針を決めると、リーエが戻ってくる。
「お待たせしました。こちらになります」
リーエが回収した魔石を見せてきた。
「ほう」
「良いわね」
大きさもあるし、赤みのある魔石だ。
オークよりも高く売れそうな気がする。
「リーエ、1万ソル以上の大物狙いだ。探すぞ」
「はい。では、奥に参りましょう」
俺達は奥に進んでいく。
あちこちに魔力を感じるが、どれも1万ソル以下だ。
しかし、そのまま歩いていくと、明らかに大きい魔力を感知した。
「オークだ」
「あっちですね」
リーエが右の方を指差す。
「良いじゃない、良いじゃない。行きましょう」
オークに狙いを定め、歩いていく。
すると、向こうもこちらに気付いたようで近づいてきた。
「オークは感覚が鋭いな」
以前もだったが、鈍そうな見た目なくせにミスディレクションを看破してくる。
「来てる? どうするの?」
「リーエがやる。イレーネ、エアカッターのやり方を教えるからよく見ておけ」
「やり方は習ったんだけどね……」
「見えないからわかりづらいんだ」
そう言うと、魔法を使い、白い霧を出した。
霧が俺達の下半身、リーエの首くらいまで上昇し、この辺り一帯を覆う。
すると、オークが顔を覗かせてきた。
ただ、オークは霧が気になっているようでまだ襲ってこない。
「おー、これでかく乱?」
違う。
「霧の動きをよく見ておけ。リーエ」
「エアカッター」
リーエがエアカッターを使うと、霧を巻き込んだ三日月状の刃がそのままオークの身体を両断した。
「おー、あんな感じなのね」
イレーネもちゃんと見えたらしいので霧を消すと、リーエが魔石の採取に向かった。
「ああいう風の刃物みたいなのを飛ばすイメージだ」
「なるほどね。剣でやった方が良さそう」
イレーネが剣を抜く。
すると、剣に魔力を込め出した。
「待て、待て!」
慌ててイレーネの腕を掴む。
「え? 何?」
「剣に魔力を込めるな。その剣はそういうエンチャントしてないから壊れるぞ」
高い剣だろ。
「そうなの?」
「剣を杖代わりにする魔法使いもいる。ただ、それはそういうエンチャントに耐えられる性質に変えないと、武器自体が持たない」
「私の魔力障害みたいなもん?」
イレーネは完全に治ったけどな。
「ああ、そんな感じだ」
「そっかー……剣ならできそうな気がするんだけどね」
斬るの延長だからかな?
魔法はイメージが大事だから魔法剣士はそういうことをすることが多いと聞いたことがある。
「ちょっと見せてみろ」
「剣? はい」
イレーネが剣を渡してきたので見てみる。
「ふーむ……」
本当によくできている剣だし、高いのも頷ける。
名剣と言っていいだろう。
「何? ヴェルナーが変えてくれるの?」
エンチャントか……
「イレーネさんがキスしてくれたらやりますよー」
「いや、してほしいならいつでもするけど……」
だってさ。
「まあ、できないことはない」
「え? キス? する?」
イレーネが人差し指を唇に持っていき、可愛らしく首を傾げた。
「そこから離れろ。剣の性質を変えることだよ」
ちょっとドキッとしたのは内緒。
「冗談よ。できるの?」
うーん……
「やってもいいが、そもそもそういう意図で作られた剣じゃないからな。イレーネが本気で魔力を込めたらそれでも折れるぞ」
イレーネ、魔力が大きいし。
「逆にイレーネさんがエンチャントを覚えれば良いんじゃないですか? 剣を丈夫にしたりもできますよ」
リーエが真面目モードで話に入ってきた。
「できるか?」
「今は無理でもその方向で教えても良いと思います。イレーネさんはバカでかい魔力のくせに器用ですからできるようになると思います」
「言い方」
イレーネがツッコむ。
「美人なイレーネさんは何をやらせても一級品ですので分野を絞らずに広く魔法を教えた方が良いと思います」
「うんうん。可愛い子ね」
イレーネが満足そうにうんうんと頷いた。
「じゃあ、そうするか」
「そうしましょう。はい、魔石です」
リーエが魔石を見せてくる。
普通のオークの魔石だ。
やはり最初に出会ったオークはかなりレアのようだ。
「じゃあ、次に行くか」
俺達はその後も魔物を探していく。
そして、オークをもう1匹倒したところで昼になったので昼食を食べることにした。
「がっつり弁当だな」
米と焼いた牛肉がメインであり、副菜も色鮮やかだ。
「美味しいわね。実に贅沢だわ」
「叡智の魔勲章は最高の魔法使いとその奥様である公爵令嬢にふさわしいと思います」
どちらも表に出せない肩書だ。
「まあいいか。午後からは採取か?」
「ええ。目標だけど、この国にいる間に150万ソルを儲けることとCランクになりたいわね」
カードの色が変わるCランクか。
「DからCって大変そうだな」
「いける、いける。ギルドの私達に対する信頼って相当だもん。あのブリジットにしてもこの森に行くのを止めもしないし、奥に行くなっていう忠告もしなかったでしょ。Dランクに成りたてならまずするわよ」
オークもビッグボアも普通に考えたら強敵だもんな。
「やっぱり駆け落ちによる二重登録って思われてるのかね?」
「思ってるんじゃない? まあ、素知らぬ顔で良いでしょ。向こうもそうだし」
ギルドとしても実力があり、問題を起こさないなら別にいいというスタンスだ。
「Cランクになったら依頼が来だすんだったよな?」
「ええ。本番はそこから。儲けが倍になると思っていいわ」
そこから一気に金を貯めていくか。
「よし、採取をするか」
「そうね」
「実はちょっと湖が気になっています」
俺達は昼食を食べ終えたので引き返し、街道に戻ると、分岐点に向かった。
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