第109話 消毒ですー
しばらく待っていると、さっきの受付嬢が料理を持ってきたのでテーブルで食べだす。
「うん、美味いな」
淡白な白身魚だが、旨味が強く、揚げてあるので満足度が高い。
しかも、レモンが良いアクセントになっているのでワインともよく合う。
「これは人気にもなるし、月に数回も事故が起きるのもわかるわね」
確かにそのリスクを考慮しても食べたいと思える料理だ。
「もし、食中毒になっても安心してください。毒くらいなら回復魔法とクリアダストの応用で何とかなります」
「良いわね。安心して食べられるわ」
俺達はあっという間に食べ終えると、ソファーでイレーネの魔法の練習をしながらワインやぶどうジュースを飲んでいった。
翌日、リーエに起こしてもらった俺達は風呂に入り、朝食を食べる。
「朝食なのにサラダに生ハムが入っている……」
「このパン、めっちゃ美味いな」
「美味しいですね」
朝食がすごく豪華だ。
「これは働かなきゃって思っちゃうわね」
「俺もそんな気がしてきた」
「頑張りましょう」
俺達は朝食を食べ終えると、準備をし、部屋を出る。
そして、受付に行き、昼食の弁当を受け取ると、今日も泊まる旨を伝え、宿屋を出た。
「さて、東門だな」
「表の通りに出ましょう」
俺達は昨日通った道を抜け、大通りに出た。
すぐ隣がギルドなのだが、外から見ても中に多くの冒険者がいることがわかる。
「さすがですね。森の中も多そうです」
「イレーネ、採取はどうする? 湖は多分、ベースキャンプになるから常時、人が多いと思うぞ」
さらには観光客もいる。
「まあ、仕方がないわ。最初にある程度、奥に行って、魔物を探しましょう。それで午後から湖で採取かな? 今日は早上がりだし、それでいきましょう」
「わかった」
俺達はこの場をあとにし、近くにある東門を抜けた。
すると、見渡す限りの森が目の前に現れる。
「なるほど……大森林ね」
「ミストラの迷いの森以上だな」
ブリジットが見ればわかると言っていた意味がよくわかった。
数百メートル先には森しかないのだ。
「とりあえず、行ってみましょう」
俺達は街道を進んでいき、森の中に入る。
森はそこまでうっそうとしているわけではないが、一本一本の木が高い。
「すごい木だわ。木こりも儲かりそうね」
木こりに良いイメージがないな。
あのフォレナ村のせい。
「あちこちで魔力を感じます。やはり魔物も多いようですが、冒険者も多いようです」
確かに周囲に大小の魔力を感じる。
「仕方がないわ。奥に行きましょう。ミストラみたいにトラブルが多いっていうわけではないでしょうけど、獲物のバッティングに良いことなんてないわよ」
「それもそうだな」
俺達はさらに歩いていく。
相変わらず、周囲に魔力を感じるが、街道に人や魔物が出てくるということはない。
「あ、知っている魔力を感じました」
「ロビンとアイリーンだな」
あの2人の魔力はわかりやすい。
「あー、そりゃあの2人もいるわよね。ここを勧めてきたのはアイリーンだし」
それにあの2人は朝が早い。
もう仕事をしているんだろう。
「挨拶でもしますか?」
「別にいいだろ。そのうち会う」
俺達は2人をスルーし、さらに奥に進んでいくと、右斜めと左斜めに分かれている分近点に到着した。
「右が湖ね」
「ここから300メートル先に10人以上の魔力を感じます。おそらく、そこが湖でしょう」
「そんなに離れてないのね。まあいいわ。そっちは後。私達はこっちね」
イレーネが左の方に行ったので俺達も続く。
すると、あからさまに人の魔力が減ってきた。
「減ったな」
「どうやらあそこより前で仕事をするのが普通のようですね」
そんな気がする。
「もう減ったの? じゃあ、入る?」
「そうですね……とりあえず、例によって、目印を作っておきましょう」
リーエは石ころを拾うと、魔力を込め、ポイッと捨てる。
「じゃあ、行ってみるか。なんか向こうに知らない魔力を持ったやつがいる」
そう言って、森の奥を指差した。
「大物を期待したいわね」
俺達は森の中に入ると、魔力を感じる方に進んでいく。
すると、大きな影が見え、木の根元を掘っていた。
俺達に背を見せているが、2、3メートルはゆうに超えている巨体であり、獣のように見える。
すでに10メートル以内に近づいているが、ミスディレクションをかけているので向こうがこちらに気付く様子はない。
「当ててあげましょうか? あれはビッグボアよ。イレーネさんの今日の一杯を賭けるわ」
「俺もそっちに乗る。外したら晩飯抜きで良い」
「どう見ても猪ですよ。間違いなく、ビッグボアです。賭けになりませんね」
ならないな。
「確か当たりだったな……」
ブリジットがそう言っていた。
「ええ。やりましょう。どうする?」
「猪は突進してくるイメージがあるが、すぐに逃げるイメージもあるな。このままやってしまおう」
ビッグボアに向かって、手を向け、魔力を込めた。
すると、ビッグボアの動きが一瞬止まり、ものすごい勢いで振り向く。
そして、そのままこちらに突進してきた。
「速っ!」
「チッ!」
とっさに使う魔法を変える。
すると、ビッグボアの足元が盛り上がり、ボンッという振動と共にビッグボアが数メートル浮いた。
「ホムンクルスレーザー」
リーエが宙に浮くビッグボアに向けて、魔法を使うと、白いレーザーが現れ、ビッグボアを真っ二つに焼き切る。
そして、二つに分かれたビッグボアは地面に落ち、当然、ピクリとも動かなくなった。
「おー、さすがは殺戮系ホムンクルス」
「殲滅完了」
リーエが無表情のままダブルピースをする。
「お手伝いさんな……」
いや、そうは見えんな。
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