第108話 緑の悪魔はポイッでーす
部屋の中に入ると、リビングスペースを見回す。
何故、リビングスペースかというと、この部屋にはベッドがないのだ。
扉がいくつかあり、寝室が別にあるのだろう。
「広いわね」
「ああ」
部屋には大きなテーブルがあり、その横にはお茶セットやワインセラーまである。
暖炉もあるし、その前にあるソファーも大きい。
「ここ、1万5000ソル?」
「その5倍はしそうだが……」
「まあ、良いじゃないですか。それよりもお風呂に入られますか?」
うーん、リーエは大人だ。
「イレーネ、先に入ってこいよ。時刻も16時だし、順番にゆっくり入っていけば夕食の時間になるだろ」
「そうね。じゃあ、お先に入るわ」
「ゆっくりで良いからなー」
イレーネが歩いていき、扉を開ける。
「あ、寝室だった。おー、すごい」
イレーネは間違えたようだが、手招きをしてきたのでリーエと共に向かう。
部屋の中はベッドが3つ並んでいるだけなのだが、そのベッドが大きかった。
「昔のお屋敷のベッドより大きいです」
俺より良いベッドで寝ていたリーエが嬉しそうな顔になる。
「逆にでかすぎるがな」
「どうぞ、御二人で寝てください。私は広々ベッドでぬくぬくです」
リーエだったら4、5人は寝られそうだな。
部屋を出ると、イレーネが今度こそ、風呂に入ったのでソファーに腰かける。
「俺達も出世したもんだな」
「Dランクですしね」
普通のDランクはこんなところに泊まらない気がする。
しばらく待っていると、風呂場の扉が開き、髪を下ろし、寝巻き姿のイレーネが出てきた。
「いやー、お風呂もすごいわよ。良い意味で貴族令嬢時代を思い出しちゃった」
イレーネは満足顔だ。
「リーエ、入ってこい」
「わかりました」
リーエも風呂場に行き、しばらくすると、イレーネと同じように満足顔で出てきたので最後に俺が入る。
風呂は綺麗な白の壁と床であり、浴槽もかなり広かった。
そりゃ2人も満足顔になるなと思いながら久しぶりに湯船を堪能する。
そして、十分に温まると、風呂から上がり、リビングに戻った。
「良いな」
2人が暖炉の前にソファーに座っていたので頷きながらイレーネの隣に腰かける。
「明日からの仕事も頑張れそうよ」
「なあ、明日の稼ぎ次第だが、少しの間はここで頑張っても良くないか?」
「賛成。もう急ぐ旅でもないし、稼げるところで稼ぎましょうよ」
イレーネが頷いた。
「現在の所持金は30万ソルちょっとです。目標は100万ソルくらいですかね?」
リーエが聞いてくる。
「どーんと150万ソルにしましょう」
「では、そのように致しましょう。明日は6時起きですね」
「まあ、それでいいわ……」
イレーネは渋々だ。
「俺も6時起きでいいが、明日は早めに上がりたい。図書館に行ってみたいんだ」
「あ、それがあったわね。いっそ明日は1日、図書館でも良いんじゃない? 本を読むのも時間がかかりそうだし」
かかるだろうな。
1日で終われば良い方だ。
「明日はまず、そもそも図書館に入れるかの確認だけで良い。それにまずは稼ぐことだ。図書館は稼いでからでもいいし、休憩する日を使って、調べていこうと思っている」
焦ることでもないのだ。
「じゃあ、それでいきましょうか」
「はい。明日はそのように致しましょう。そろそろ夕食にしますか?」
時刻は17時を回っている。
「そうしましょうか。呼び鈴ってこれ?」
イレーネがローテーブルの上にある鈴を見る。
「そうじゃないか? 鳴らしてみ」
そう言うと、イレーネが鈴を取り、ちりんちりんと鳴らした。
「魔力を感知しました。魔道具のようですね」
多分、遠くまで聞こえる魔導具だろうな。
鈴の音自体は小さかったが、受付まで聞こえているんだろう。
そう思って、待っていると、ノックの音が聞こえてきた。
『お客様、お呼びでしょうか?』
さっきの受付にいた女性の声だ。
「私が出るわ」
寝巻き姿のイレーネが立ち上がり、扉の方に行く。
「ヴェルナー様もイレーネさんもわかりやすいですよね」
「何が?」
「いーえ」
リーエが笑うと、イレーネが扉を開けた。
「夕食にしたいんだけど、持ってきてくれる?」
「かしこまりました。魚料理と肉料理がありますが、どちらになさいますか?」
選べるのか……
「ヴェルナー、リーエ、どっちがいいー?」
「ふーむ……あのー、モルティスフィッシュってありますか?」
リーエが受付嬢に聞く。
「ございますよ。揚げたものにレモンを少し絞ったものが人気です」
美味そう。
「私はそれで」
「俺も」
「じゃあ、私も。あ、毒は勘弁ね」
「もちろんですよ。当宿は王宮で料理人をしていた者が作ります。問題ありませんし、自信をもってお出しできるものを提供しております」
すごいね、ここ……
「じゃあ、お願い。あ、それとあのワインセラーにあるワインは飲んでいいの?」
「はい。あちらはサービスドリンクとなっております。上がワインで下がジュースになっております。ご自由にお飲みください」
すごすぎるね、ここ……
「わかったわ。じゃあ、料理をお願い」
「かしこまりました」
受付嬢が恭しく一礼すると、扉を閉め、イレーネが戻ってきた。
そして、手を握ってくる。
「将来、大きなお屋敷を建てるってなってるけど、こんな感じになるわけ?」
「なります。この私は万能ホムンクルスなので料理でも何でもできます」
リーエが力強く頷いた。
「栄養バランスの良い料理を作ってくれるぞ。しかも、ピーマンが出てこない」
リーエが嫌いだから。
「それは良いわね。さすがは選ばれし万能ホムンクルス」
イレーネも嫌いらしい。
まあ、俺も嫌いだけど。
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