第107話 選ばれし私にふさわしい
ギルドを出た俺達はギルド横の道を通り、裏の通りに出る。
さっきの東の大通りより狭いが、それでも道は広い。
飲食店や宿屋が並んでいるが、ブリジットが言っていたようになんというか上品な感じがした。
「全然、違うわね」
「私達のように品のある人間はこっちですよ」
俺はあんまりない。
ただ、静かなこっちの方が性に合っているのはそう。
「えーっと、灯火の宿はどこだ?」
「うーん……ここからそんなに離れていないと思うんだけど……」
俺達は左右の通りを見渡す。
「あ、あれじゃないですかね?」
リーエが左の方にある建物を指差したので行ってみる。
すると、灯火の宿と書かれた2階建ての大きな建物があった。
「別館って書いてるけど……」
「本館は隣だな」
左隣の3階建ての大きな建物も灯火の宿だ。
「絶対に高くない?」
「俺には高級宿以外には見えない」
旅館みたいだ。
そりゃロビンとアイリーンもあんな顔をするわ。
「価格表は……ないようですね」
大抵の宿屋は外に価格表は貼ってあるが、この宿屋にはない。
「どうする?」
「手紙のことがある。最悪はそれを渡して、違う宿屋に行こう」
「そうしよっか」
俺達は本館の方に行き、中に入った。
中は大理石のように輝く床であり、いくつもの調度品が並んでいる豪華なエントランスだった。
奥には高級そうな木材で作られた受付があり、若い女性が立っている。
さらにはその隣に階段があり、赤いカーペットが敷かれていた。
「ここ、どこ?」
「さあな」
俺達が受付に向かうと、右の方に通路が見えた。
どうやら本館と別館は繋がっているらしい。
「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」
受付の女性がにっこりと微笑む。
ギルドのブリジットと比べると、華やかさはないが、上品で柔和な感じがする女性だ。
「いえ、仕事というほどでもないけど、届け物ね。店長さんはいらっしゃる? クレイナのお兄さんから手紙を預かっているのよ」
イレーネがそう言うと、リーエがカウンターに手紙を置いた。
「それはありがとうございます。少々、お待ちいただけますか?」
「え? あ、うん」
受付嬢がにっこりと微笑むと、奥の部屋に入っていった。
「なんか私とは違う感じの美人ね。あっちの方がモテそう」
どうだろ?
まあ、イレーネは明るい1軍女子って感じでさっきの子は物静かな1軍女子って感じだな。
どっちがモテるかは好みでしかない。
「イレーネさんの方が良いですよ」
「そうだな」
「そう? あなた達のそういうところが大好きよ」
イレーネが満足そうに頷くと、奥の扉が開き、先程の受付嬢と共にすらっとした細身の男性が出てきた。
「いらっしゃいませ。兄からの手紙を持ってきてくれてありがとうございます」
弟さんか……全然、似てないな……
お兄さんは筋肉質の強面だったし。
「クレイナで宿屋に泊まった際に王都に行くって言ったら手紙を託されたんだ。ついでだし、たいしたことじゃない」
「いえいえ、かなりたいしたことですよ。兄に子供が生まれたというのを知れました」
あ、そうなんだ。
それで手紙か。
「おめでとう」
「私もそのことを兄に伝えないといけないですね。この度は本当にありがとうございました。それでですね、兄が泊めてやれと言っているのですが、お客様は王都での宿泊先を決めておられますか?」
えーっと……
「いや、まだだけど……」
ここはないかなー……
「でしたらどうぞ、ウチに泊まってください」
「そのー、おいくらですかね?」
5万ソル以内、5万ソル以内……それなら1泊くらいはできる。
「3人部屋ですので1泊1万5000ソルになります。食事付きですと、1万8000ソルですね」
安っ……いや、高めではあるんだけど。
「良いのか?」
相当、割り引いてないか?
「兄がそう言うもので。それに兄に子供ができたのは大変喜ばしいことです」
ご祝儀かな?
俺達がもらうものじゃないけど。
「えーっと、じゃあ……」
イレーネを見る。
「うん、せっかくだし……」
イレーネが頷く。
「じゃあ、1万8000ソル」
財布を取り出し、料金を支払った。
「ありがとうございます。連泊する場合は出る時に受付にその旨を申し付けください。それと当館の説明を致します。当館は本館と別館がありますが、別館が個人のお客様、本館が複数人のお客様の部屋になります。ですので、お客様方はこの本館をご利用ください。部屋は1階の5号室になります」
受付嬢が鍵をカウンターに置いたので受け取る。
「食事は?」
「別館の方に食堂がございますし、部屋で食べていただいても構いません。部屋に呼び鈴がございますのでそれを鳴らしていただきますと、係の者が参りますので伝えてください。その他、ルームサービス等もございますし、何かございましたら気軽に呼んで頂ければと思います」
コンシェルジュかな?
「わかった。すまないが、俺達は冒険者で明日、東の森に行く。簡単なもので良いので弁当的なものを用意して欲しい」
「もちろんです。昼食代も料金に含まれておりますので用意致しましょう。出発の際に受付でお受け取りください」
気後れせずに言ってみるもんだな。
「じゃあ、それで頼む」
「はい。その他、不明なことがあれば何でも聞いてください。当宿はお客様に満足していただけることを追求し、また王都に来た時は泊まりたいなと思っていただけることをモットーにしておりますので」
すごいね。
「ああ。ゆっくりさせてもらうよ」
俺達は左の方の通路に歩いていき、5号室を見つけたので中に入った。
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