第105話 新人類です
進んでいくと、門をくぐり、王都に入る。
王都はやはり発展した町並みであり、人がかなり多い。
「さすがね」
「リーフェルの王都並みですね。イレーネさん、商人さんの家はどこですか?」
「えーっとね……あ、とりあえず、このまままっすぐ行ってちょうだい」
イレーネが王都の地図を取り出し、正面を指差した。
すると、再度、馬車が動き出し、通りを進んでいく。
かなりの人がいるが、道もその分、広いので移動の支障になるということはない。
「イレーネ、王都はどういう感じなんだ?」
「んー? こんな感じ」
イレーネがリーエの前に地図を開き、見せてくる。
「邪魔ですよー」
俺とイレーネが身を寄せ合ったため、間にいるリーエが鬱陶しそうな顔になる。
しかも、地図があるため、前が見にくいようだ。
「よいしょっと」
イレーネはリーエを抱え、地図を俺の前に広げた。
「そういうことじゃないんですけど……」
子供扱いされたリーエは不服そうだ。
「お姉ちゃんに甘えて良いのよ?」
「お姉ちゃん、おっぱいを押し付けないでください。嫌味です」
「あなたも将来があるわよ」
何回目かのやり取りだ。
「ふーむ……私はヴェルナー様が作りしホムンクルス……きっとそういう調整をしているでしょうから期待が持てそうです」
いや、そんな調整はしてない。
というか、どうやって調整するんだよ。
できるのは性別と年齢くらいだ。
「そういえば、ホムンクルスってどうやって作るの? というか、ホムンクルスのことをよくわかってないけど」
イレーネが聞いてくる。
「ホムンクルスは魔法で作られた人工生命体だ」
「それは前にも聞いたけど、よくわかんないのよね」
説明が非常に難しいな。
「材料があって、それに魔法をかければ人ができるんだよ」
おおざっぱに言えばこういうこと。
「すごいわね……」
「実際、すごいぞ。ホムンクルスを作るには国の許可がいるが、そもそも作ることができる魔法使いは限られている」
非常に高度なのだ。
ホムンクルス作成魔法の第一人者の先生がいるが、そいつの口癖が『ホムンクルスを作りたかったら嫁さんを作れ』だったからな。
なお、俺も習いに行った時に言われたが、『そっちの方が難しい』と答えた。
「リーエってすごいのね」
「すごいんですよ。魔法学の結晶です。選ばれた民です。尊敬してください」
尊敬は違わないか?
あとなんか反乱を起こしそうなセリフだ。
「調整ができるの?」
「いや、そういうのはできない。そもそも材料に元となる人物の髪の毛がいるんだが、これは相手の了承がいる」
当たり前だ。
知らない人が勝手に自分に似たホムンクルスを作っていたら気持ち悪いどころの話ではない。
それに貴族や王族といった高貴な血筋のこともあるし、そこは非常に難しいところなのだ。
「え? じゃあ、リーエは?」
「俺」
当然、俺には頼める人なんていない。
というか、あくまでも補佐役だから自分でいいのだ。
「あー、髪が一緒ね」
リーエは長さが違うが、俺と同じ髪質だ。
「顔も似てるだろ」
「全然」
リーエが即否定した。
「うーん……魔法の優秀さは似ているかもね。あと、たまに物騒なところも」
え? ククリナイフを持って、戦闘用ホムンクルスを名乗るのって俺に似たの?
「ヴェルナー様の家族を知りませんが、きっとすらーっとして、大きい人です。私もそうなります」
孤児院育ちなんで俺も知らないなー……
「私も17を超えてからだったから頑張って」
「はい」
ふーむ……複雑。
「まあいい。このまま行けば中央の広場か?」
地図を見ながらイレーネに確認する。
「ええ。広場からそのまままっすぐ行けば城や役所なんかの公共施設の区域ね」
図書館もそこだ。
「冒険者ギルドや飲食街が東だな」
「ええ。商人さんの家は西。リーエ、そういうわけだから広場に着いたら左に行って」
「了解です」
そのまま進んでいくと、広場に到着した。
広場はかなり広く、屋台なんかもあり、お祭りのように賑わっていた。
「憩いの場か?」
「そんなところじゃない? あ、あそこの通りだわ」
「では、参ります」
リーエが馬車を動かし、左の方に見えている通りに向かった。
そして、さらに道を進んでいく。
「えーっと、どこだ?」
「家具屋の隣って書いてあるわね」
ベニーが書き込んでくれている。
「家具屋ならあれじゃないですか?」
リーエが前方を指差す。
すると、確かに家具屋があった。
「そこの手前だ」
「わかりました」
リーエが家具屋の手前の建物の前に馬車を止めたので降りる。
「ここか?」
普通の一軒家だ。
「多分ね。すみませーん!」
イレーネが扉をノックした。
『はーい。ちょっと待ってくださいねー』
中から女性の声が聞こえたので待つ。
そのまま待っていると、扉が開き、若い女性が顔を覗かせた。
「アルバータさん?」
イレーネが聞く。
奥さんの名前は手紙の封筒に書いてあるのだ。
「え、ええ……どちらさまでしょうか……あれ? ウチの馬車?」
どうやら商人の奥さんで間違いないらしい。
「私達はギルドから依頼を受けた冒険者よ。クレイナから来たの」
「クレイナ……主人が買い付けに行っている町です。何かあったんですか?」
「実はご主人が階段で足を滑らせちゃって、骨折したらしいのよ。それで荷と手紙を運ぶ依頼を受けたわけ。これが手紙」
イレーネが手紙を渡すと、奥さんが読みだす。
「あー……おっちょこちょいなところがある人でしたが……」
「命に別状はないっぽいけど、少しの間、絶対安静らしいわ」
「そのようですね……わかりました。荷を売ったら迎えに来てほしいとありますのでそうします」
「そうしてあげて。それで依頼完了のサインが欲しいんだけど」
イレーネが今度はギルドからもらった書類を取り出した。
「ええ」
奥さんが書類にサインをした。
「どうも。じゃあ、馬車と手紙は渡したからね」
「はい。はるばる来ていただき、ありがとうございました」
「いいの、いいの。御主人にお大事にって伝えてちょうだい。じゃあ、私達はこれで」
俺達が軽く頭を下げると、奥さんも下げ返したのでこの場をあとにし、広場の方に引き返した。
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