第104話 得意……
クリアダストの練習をしていたイレーネだったが、昼過ぎにはできるようになったので攻撃魔法の練習をしていた。
やっているのは目立たない魔法ということで風魔法だ。
「うーん、難しい」
「目立たない魔法というのはやはり目に見えない魔法になります。当然、難しいですよ。火魔法とは訳が違います」
イレーネはもう大半の火魔法は使えるだろう。
でも、火魔法は一番目立つ魔法になる。
「お風呂上がりの風を出すくらいならできるんだけどねー」
イレーネがそう言って、そよ風を出す。
「まあ、それはそれで夏場には活躍しますよ。それに私もですが、イレーネさんは髪が長いので重宝するでしょう」
ドライヤーかな?
「髪を靡かせごっこもできるわね」
それは良いと思う。
「ゆっくりやれよ。すぐに必要な魔法じゃないからな」
「そうする」
イレーネはその後も風魔法の練習をしていったが、日が沈みだしたので野営をした。
翌日も早めに起こされた俺達は馬車に揺られながら王都を目指す。
今日はリーエが馬車を動かしているので俺とイレーネはリーエを挟んで座っていた。
「いつぐらいに着くかねー?」
もう昼は過ぎている。
「良いペースで来ていると思いますのでそろそろじゃないですかね?」
着いたら奥さんの家に行って、ギルドか。
今日はそれで終わりにしておこうかな……
「見て、見て。ミニサイクロン」
イレーネは手のひらを上に向け、小さな竜巻を作っていた。
「器用ですね」
「そこまでできるならエアカッターくらいできると思うんだが」
「それが難しいのよ。やっぱり見たことがないのが一番だと思う」
うーん……見たことがあるか……
ちょっと考えてみるかな。
「イレーネさん、魔法を消してください。魔力反応が後ろから急速に近づいてきます。もっとも、これはロビンさんとアイリーンさんですけど」
リーエがそう言うので荷台の横から後ろを見てみると、遠くに馬に乗る2人の姿が見えた。
「早いな。あいつら、今日出たんだろ」
定食屋でそう言っていた。
「朝早くに出たんじゃないですかね? できる冒険者は早いです」
できなくてごめんね。
でも、俺達、Eランクだから仕方がないんだ。
俺達がそのまま進んでいくと、左右から馬に乗ったロビンとアイリーンが並んできた。
俺側がロビンでイレーネ側がアイリーンだ。
「よう」
「追いついたわよ」
2人が笑顔で声をかけてくる。
「早くないか? 何時に出たんだ?」
「何時……4時くらいか?」
「まだ暗かったし、そんなものね」
はえーよ。
「よく起きるな」
「やることないし、早寝早起きだよ。それよりもここまではどうだ? 何か出たか?」
ロビンが聞いてくる。
「何も。平和なのは良いことだが、何も出なくて儲からない」
「ははっ、この街道はそんなものだ」
「この街道と王都から北のルミフィアに行く道はまず魔物は出ませんよ」
ダニア大陸でも主要な道はそんな感じだったな。
「まあ、主目的は馬車の運搬だから平和は良いことなんだが」
「そうよねー……」
「わかります。どうしても儲けを考えちゃいますよね。あ、そういえば、王都で泊まるところは決めていますか? 紹介もできますけど」
アイリーンがイレーネに聞く。
「ありがたいけど、クレイナの町の宿屋で紹介されたわね。弟さんがやっている【灯火の宿】って宿屋」
「灯火の宿……あそこかな?」
アイリーンがちょっと驚いた表情でロビンを見る。
「他に知らないな……あそこだろ」
んー?
「有名なの?」
「老舗の高級宿ですよ。大丈夫ですか?」
高級……いくらするんだろ?
「え、やめとく?」
イレーネが聞いてくる。
「一応、近況報告の手紙も預かっているからな……」
それを無視するのもどうなんだ?
「一泊くらいはしても良いと思いますよ。それから考えましょう」
「そうしよっか」
いくらかは知らないが、金はある。
1泊くらいなら贅沢をしても良いだろう。
でも、5万ソルを超えたらやめとこ。
「宿屋を替えるなら言ってくださいね。紹介しますので」
アイリーンが苦笑いを浮かべながら言う。
「ええ。その時はお願いするわ」
「では、私達は先に行きます。もう少ししたら川が見えてきます。その川の先が王都ですのでもうすぐで着きますよ」
「あと1、2時間ってところだな」
ほう?
「わかった。教えてくれて助かる」
モチベーションができた。
「ああ」
「じゃあ、王都で」
2人は馬を走らせ、あっという間に行ってしまった。
「良い馬に乗ってるわね」
「さすがは高ランクだな」
「馬を買ったら移動がかなりスムーズになるな」
何日もかけている移動がかなり早くなる。
「難しいけどね。リーエは私のところに乗せるとしても2頭買わないといけない。高いわよ」
あの2人はそれでもペイできるくらいに儲かっているんだろうな。
「そういえば、イレーネさんは乗馬もできるんですか?」
「私? ちょー得意よ。護衛なんかの仕事で乗ったりするし、練習したもの」
そういえば、キャラバンの周りにいた護衛の冒険者は馬に乗っていたな。
「へー……馬って借りられるんですか?」
「キャラバンとかの護衛だと商業ギルドが用意してくれるし、牧場の人に頼めば有料だけど、貸してくれると思うわよ。ただ、これもやっぱり信用のある高ランクだけね。Eランクはよほどの伝手がないと無理」
まあ、そうだろうな。
俺が馬主でも貸さない。
「やはり目先のお金を稼ぐよりもランクを上げることを重視した方が良さそうですね。結果的にはそちらの方が早道です」
「そう思うわね。ほら、この前の定食屋で2人に会った時もギルドの厚意なんて聞いたことないって言ってたでしょ? あれはあの2人がギルドのお願いを聞いてこなかったからなのよ。Bランクはすごいけど、実力だけでのし上がったタイプね。近道はそうじゃないわけ」
儲けの良い仕事ではなく、評価の上がる仕事を選んだ方が良い。
「実力もある我々がギルドのお願いを聞けば、あっという間にランクアップですね」
「そういうこと。そろそろDランクに上がるわ。多分、Cランクも射程圏内だと思う」
ミストラのギルドの受付嬢があと何個かギルドのお願いを聞けばDランクに上がるって言ってたしな。
話をしながら進んでいくと、川が見え、さらに奥には大きな町が見えてきた。
「あれが王都だな」
「ええ。稼ぐわよー」
「おー」
俺達は馬車を走らせ、王都に向かった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
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