第103話 (意味深)です
部屋に戻った俺達は順番に風呂に入る。
そして、最後に俺が上がると、テーブルでトランプを始めた。
「好感の持てる男とわかりやすい女だったな」
「私はロビンさんの鈍いところが評価できませんね」
「本当に気付いていないのかね?」
昔からそういう恋愛系の話を見て、常々思っていた。
いや、気付くだろって。
「ヴェルナー様は勝ち組になられましたが、それより前だったらわからないんじゃないですか? いきなり綺麗な人に言い寄られたらどうです?」
うーん……
「なんでって思うな……罰ゲームかなって疑ってしまうと思う」
自分に自信がなかったから。
「そういうケースもあると思いますよ」
なるほど……
「まあ、あれはどちらかというと、関係性が近すぎるせいじゃないの? アイリーンも気付いてって感じだと思うけど、関係性が壊れるのが怖くて口に出すのが怖いんでしょ」
幼馴染の王道パターンだ。
漫画で読んだことある。
「その点、イレーネさんは行動派ですもんね」
「あなた、絶対に起きてたわね」
多分、イレーネを救出して、キスした時の話だと思う。
「しかし、イレーネ、最初は嫌な顔をされてたな」
アイリーンは愛想の良い子だと思う。
でも、最初はイレーネを見て、そっけなかった。
「あの子、すごいわ。絶対に嘘がつけない」
顔を見ればわかるもんな。
「やはりアイリーンもBランクか?」
「どうだろ……正直って好感も持てるけど、トラブルにもなりやすいからね。Cランクもありうると思う。それでも強いのは確かだと思うけどね」
「確かに魔力は高かったが、イレーネの目から見てもそうか?」
イレーネはまだ魔力感知ができていない。
「雰囲気が強者だった。それに武器が弓オンリーだったでしょ。前にも言ったけど、弓オンリーってないわよ。パートナーをよほど信頼しているし、自信もあるんでしょう」
弓は接近されたら厳しくなるってやつだ。
イレーネも最初は弓オンリーだったが、すぐに剣を持ったって言っていた。
もちろん、ソロだったこともあるが。
「ロビンの方はどうだ?」
「あれは堅実ね。真っ当に強いタイプよ」
「馬も持っていましたし、稼げているんでしょうね」
羨ましいね。
多分、以前の俺だったら好意を持たれている幼馴染がいることも相まって、嫉妬マックスだったと思う。
「王都で会えるかね?」
「多分ね。まあ、トラブルになる感じではなかったから良いでしょ。逆に知らない土地だから教えてほしいものよ」
まあな。
昨日の缶詰を渡したやり取りを見てもロビンはわきまえている。
アイリーンもわかりやすい。
「さて、リーエ、明日は何時出発だ?」
「ゆっくり行っても大丈夫なようですし、8時に出ましょうか」
俺とイレーネは『ゆっくり行っても大丈夫』に笑顔になり、『8時に出ましょうか』でちょっと暗くなった。
「そうね」
「まあ、8時なら……」
「普通ですよ。そういうわけで手繋ぎタイムは明日の馬車にしてください」
魔法の練習タイムな。
「あ、そうそう。そろそろクリアダストを教えてよ」
「良いですよ。明日、教えましょう。そして、これができるようになったらいよいよ攻撃魔法です」
「攻撃魔法なの? ミスディレクションとか回復魔法が良いんだけど」
まあ、便利なのはそっちだ。
「順序がありますから。ミスディレクションと回復魔法はちょっと難易度が高いんですよ」
ちょっとね。
「そっか。じゃあ、攻撃魔法を教えてよ。なるべく目立たないやつ」
「わかってます。どうぞ」
「うん……ん?」
リーエがひょいっと1枚のカードを上げると、イレーネがそれを引く。
そして、苦い顔になった。
ババを引いたらしい。
俺達はその後もトランプをしていき、良い時間になったので就寝した。
翌日、当然のようにリーエに起こされると、準備をし、チェックアウトした。
そして、正面の定食屋で朝食を食べると、近くのパン屋でパンを買い、馬車に乗り込む。
「よし、行くか」
「天気も良いですし、れっつごーです」
「今日は私が操縦ね」
イレーネが馬車を動かし、町中を進んでいくと、すぐに門を抜ける。
天気も良いし、風も柔らかく、前方に広がる平野が綺麗で心地良かった。
「のどかで良いけど、魔物が出ないな」
「まったく見かけませんね。目的は王都に行くことですけど、儲かりません」
「焦らない、焦らない。儲かる時は儲かるし、休む時は休むべきよ。イレーネさんは逃げないから安心して」
イレーネがそう言って、手を握ってきた。
「一緒に逃げたしな」
「そういうこと。リーエ、クリアダストを教えてよ」
「わかりました。と言っても実はそんなに教えることはないんですよ。汚れを浮かせ、どこかに捨てるイメージでイレーネさんはできます。そういうわけで実践です」
リーエはムーブを使い、その辺に落ちている石ころを浮かせると、イレーネの前に持っていく。
「浮いてるけど?」
「イレーネさんは両手が塞がっているので仕方がありません」
片手は手綱、もう片手も完全に塞がっているからな。
「これをさっきのイメージで綺麗にすればいいわけ?」
「そういうことです。いっぱい落ちてますのでいくらでも失敗して良いですよ」
石ころだしな。
「よーし。あ、でも、リーエが疲れない? 物を浮かせ続けるって結構な魔力を使うでしょ」
イレーネはまったく苦にしないだろうがな。
「問題ありません。イレーネさんと手を繋げてハッピーなご主人様と実はいつも手を繋ぎたい奥様のためです」
そうなの?
「リーエも繋いであげようか?」
「親子になっちゃうので嫌です」
「それは私も嫌だわ。せめて、お姉ちゃん」
「では、お姉ちゃん、頑張ってクリアダストを覚えましょう。色んな場面でちょっと気になるなっていう時に使える魔法です」
クリアダストは本当に便利だもんな。
「わかった。頑張る」
イレーネが宙に浮く石ころをじーっと見始めた。
なんというか……ちょっとシュールだ。
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