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魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに旅をします~  作者: 出雲大吉
第3章

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第102話 わかりやすい人です


 部屋はそこまで広くもないし、ベッドとテーブルがあるだけだったが、ちゃんと浴槽もあったし、これで1万ソルなら良い値段だと思う。


「ふう……馬車も嫌いじゃないけど、振動とお風呂に入れないのが嫌よね」


 お風呂は8割だと思う。


「そうだな。風呂に入るか?」

「あ、いや、それは後ね。実はこの宿屋って料理が出ないらしい。代わりに正面にあったお店の割引券をもらった。親戚らしいわよ」


 そういうことね。


「じゃあ、夕食を食べてからだな。今、何時だ?」

「15時前。微妙な時間だわ」


 確かに微妙だ。

 出かける時間でもないし、夕食を食べる時間でもない。


「イレーネが好きなトランプでもするか」

「そうね。ヴェルナーが好きなトランプをしましょう」


 俺達はトランプをしながら時間を潰していくと、16時半を過ぎたので宿屋を出て、正面の定食屋に入る。

 定食屋は5つのカウンターと3つのテーブルがあり、他の客はいなかった。


「いらっしゃい。3名様ならテーブルにどうぞ」


 キッチンにいる大将が笑顔で勧めてきたのでテーブルにつく。


「色々ありますね」


 リーエがメニューを広げたが、本当に品数が豊富だ。


「おっ、米がある」

「ホントね。珍しいわ」


 帝国では米がなかったが、この世界にはあるらしい。


「俺、野菜炒め定食にする」


 久しぶりに米が食べたい。


「私はひき肉のパスタにします」

「私、揚げ魚定食。すみませーん。野菜炒め定食とひき肉のパスタと揚げ魚定食でー。あとワイン2つとぶどうジュースをおねがーい。あ、前の宿屋の客で割引券があるわー」


 イレーネがキッチンにいる大将に注文した。


「あいよー」


 ちょっと待っていると、奥から奥さんっぽい人が出てきて、グラスのワインとぶどうジュースを持ってきてくれたので乾杯する。


「たまには外で飲むのも良いわね」

「イレーネさんが外で飲んでいると、ナンパされそうですね」


 回数無限だからな。


「リーエもされるかもよー?」

「即、警邏を呼んでください」


 その前に俺が殴るわ。


 俺達が待っていると、料理がやってきたので食べだす。

 すると、ぽつりぽつりとお客さんがやってきた。


「美味いな」


 やっぱり米だわ。


「そうね」

「んー?」


 リーエがフォークを止めた。

 それを見た俺も気付いた。

 この魔力は……


「どうしたの?」


 俺達が出入り口の方を見たのでイレーネもつられて、同じ方向を見る。

 すると、扉が開き、男女の冒険者が入ってきた。


「あっ、あんたは……」


 男の方が俺に気付く。

 男は昨日、缶詰を分けたロビンだ。

 俺とリーエはロビンがこの店に近づいてきたので感じ取っていた。


「よう。無事に着いたんだな」

「ああ。おかげさまでな。助かったよ」

「ロビン、どちら様?」


 連れの女性の方が首を傾げる。

 女性は軽装の冒険者服で背中には弓と矢筒を背負っていた。

 長い黒髪であり、イレーネよりも背が高く、すらっとしている。

 しかし、ちょっと不機嫌そうだ。

 まあ、最初にちらっとイレーネの方を見たことが影響してそう。


「ほら、缶詰が腐って大変だったって話をしただろ? その時に分けてくれた人だよ」

「あー……」


 女性がちょっと申し訳ない顔になった。

 どうやら誤解が解けたらしい。

 まあ、そもそも対応したのが俺なのでイレーネとリーエはロビンの顔を知らないし、向こうもそうだ。


「その節はロビンがお世話になりました。私はこの人とパーティーを組んでいるアイリーンです」


 この人も魔力が高いな。

 同じパーティーらしいし、Bランクかもしれない。


「そういえば、ロビンにも自己紹介をしてなかったな。俺はヴェルナーだ。こっちがイレーネでこの子がリーエ」


 2人を紹介すると、軽く会釈をする。


「よろしくお願いします。ロビン、座りましょうよ」

「ああ。そうだな」


 2人は隣のテーブル席につき、メニューを見始めた。

 そして、注文をすると、こちらを振り向く。


「そういえば、見たことない顔だけど、旅人か?」


 ロビンが聞いてくる。


「んー? ああ。ダニア大陸から来たんだ」

「あー、なるほど。遠征だな。王都に行くのか?」

「そんなところだ。商人の馬車を運ぶ仕事をもらった」

「へー……ランクは?」


 あまり言いたくないが……


「Eランクだ」


 いつかAランクだって言いたい。


「ん?」

「Eなんですか? Eランクでよくそんな仕事が回ってきましたね?」


 アイリーンが驚いたような表情で振り向き、話に入ってきた。


「ギルドの厚意だと思う」

「厚意ねー……聞いたことないな」


 あるよ。

 多分。


「あの、御二人はご夫婦ですか?」


 アイリーンが聞いてくる。


「ああ。家族で旅をしているんだ」

「そうですか」


 すごい……あからさまにほっとした表情になった。


「そっちは?」


 イレーネが聞き返した。


「俺達は違う。幼馴染の腐れ縁だ」


 ロビンが苦笑いを浮かべる。

 一方でアイリーンはちょっと不満そうな顔になった。

 なんというか、わかりやすい2人だ。

 恋愛漫画の教科書みたいである。


「ここの出身?」

「はい。いつもは王都にいるんですが、実家に顔を見せに来たんです。明後日には王都に帰ります」


 目的地は一緒か。


「王都ってどう? 儲かる?」

「もちろんですよ。近くに湖がある大森林があるんですよ。そこが主な稼ぎ場ですし、依頼もたくさんあります」


 アイリーンは感じの良い子だな。

 ちょっと感情が顔に出すぎだが……

 多分、ダリアのような密偵ではない。


「良いわね」

「ええ。多分、そっちが先に王都に着くと思うけど、王都で会ったらよろしく」


 食べ終わったのでイレーネが立ち上がったのですでに終わっている俺とリーエも立ち上がる。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「あ、ヴェルナー、ここは俺が払うよ」


 ロビンが手を上げる。


「良いのか?」

「ああ。礼だ。本当に助かったんだよ」


 まあ、奢ってくれるって言うならありがたいことだ。


「感謝する。また王都で」

「ああ。ギルドに行けば会えると思う。世話になったよ」


 俺達は会計を2人に任せると、宿屋に戻った。


お読み頂き、ありがとうございます。

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