第6話
本当に友人との予定があったわけではなかった。
外に出るにも、許可、許可、許可。
スーパーへ行くことすら許可が必要になる。
夫が仕事を頑張ってくれているから、私は生きていけている。
“29歳にして役職持ちだなんて、出来た旦那さんね”
そう言われることも多かった。
外面がいいから、私の苦労なんて誰も信じてくれない。
それに合わせてヘラヘラと笑う私が大嫌いだった。
周りから見た私たちは幸せで、悩みなんかなさそうに見えるんだろうな。
仕事ができて高収入の夫に、専業主婦の妻。
加えて息子と同じく外面が無駄に良い義母。
現実はドロドロとした最悪の家族で、健康に悪い食事のレパートリーが無駄に増えていくだけだった。
街を歩いていると、ふと目に入る綺麗なワンピース。
とてもキラキラして見えた。
こんな可愛い服、最後に着たのはいつだろう。
今は私の好みとはかけ離れたものばかり。
私は、着る服すら選べない。
「…楽しくないなあ」
気がつけば私は、しばらく使われていないリンダくんのあのアカウントを開いていた。
最後の更新は3年前だった。
“よーし!今日もレコーディング頑張るぞーー!!!!!”
これが最後の投稿だった。
18件のいいねと、13件のリプライ。
丁寧に“ありがとう”と返していた。
一度も使われることのなかったメッセージ機能が、妙に私の気を引く。
誰にも見られない気がした。
誰にも、何も言われない気がした。
“消えたい”
そう打った時、目から涙がこぼれた。
あぁ、私もう限界なんだ。
こんなに皮肉な性格になっちゃって。
こんなに醜い自分が、嫌い。
それとは対照的にキラキラと輝くリンダくん。
住む世界が違いすぎる。
スマホに涙が落ちる。
すぐに、服の袖でスマホを拭った。
「…あ」
拭いた拍子に、メッセージが送られてしまった。
どうしよう、取り消しできる?
メッセージを長押しして、削除できる項目を探してみるけれど、なかった。
…まあ、いいか。
どうせ使われていないアカウントだろうし。
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そう思っていたんだけど、この出来事が私のこれからの人生を大きく変えた。
退屈でつまらない毎日に、花が咲いた。




