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【速報】元LU℃ENTリンダ、熱愛発覚!?  作者: 来襲さん


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第11話

次の日になり、夫の上司のお宅へお邪魔した。


社員家族が数人。


「紬さん、お久しぶり」


「綾子さん、お久しぶりです」


綾子さん。


夫の上司の奥様。


とてもエレガントで素敵な方。


「お顔、どうなさったの?」


眉を下げ、とても痛々しそうな顔で私を見る。


私が口を開こうとすると、夫の視線を感じた。


思わず私は視線を逸らしてしまう。


「お散歩中のワンちゃんにガリっと…」


手で頬をかく仕草をする。


「両頬とも?心配だわ、病院には行かれたのかしら」


「ええ、幸い何も異常は見当たりませんでした」


夫が私と綾子さんの間に割って入る。


「妻の可愛い顔になんてことをしてくれたんだと、怒りが湧きます」


よく言うよ、自分がやったくせに。


この人はなんなの?


綾子さんは微笑ましそうに笑う。


夫も楽しそうに笑う。


私は、笑えない。


笑えなかった。


愛想笑いもできない。


窮屈だ。


辛い。


しんどい。


めまいがする。


夫に“可愛い”なんて言われても嬉しくない。


それも嘘だから。


家に帰ればまたあれが始まる。


夫は会社の方たちの前では愛妻家として名が知られているそうだけれど。


逆です。


家では妻を虐げ、殴りますよ。


妻の顔に残りそうな傷をつけても自分の体裁を気にするような男ですよ。


言いたかった。


今まで何度も言いたくなった。


でも言えなかった。


頭の中では何度も何度も食事会を私がぶち壊した。


ワインの入ったグラスを夫に投げつけ、綺麗に並べられた料理たちもグチャグチャになる。


白いテーブルクロスや床は赤く染まり、カーテンや他の方々にも飛び散る。


その中私は割れたグラスを持って、夫に馬乗りになって追い詰める。


何度も、何度も。


圧倒的弱者である私に泣きながら頭を下げ、許しを乞う哀れな夫。


でも誰も私を止めようとはしない。


そんな妄想は一度も現実にはならないまま、今に至る。


この日だけは可愛い服を着られる。


でも嬉しくはなかった。


夫のため可愛い服を着るのは、嫌。


幸いなことに、優しい方しかいないから夫の存在以外は苦ではなかった。


その中でも特に良くしてくださる綾子さんには、非常に感謝していた。


綾子さんにだけは、夫のことを伝えてもいいか悩んでいたときがあるほど。


あの優しい綾子さんに負担をかけたくなくて、相談することは一度もなかった。


この日も柔らかな雰囲気で、平和に終わった。


みなさんの楽しい時間を私なんかが奪ってはいけない。


「紬さん」


後片付けをしている時に、綾子さんがこっそり話しかけてきてくれた。


「この間、紬さんに合いそうな素敵なリップを見つけてね、思わず買ってしまったの。受け取ってくれる?」


「…綾子さん」


フフッと優しく笑う姿が、どことなくリンダくんと重なった。


だから私、綾子さんが好きなんだ。


「ありがとうございます」


思わず涙ぐんでしまった。


一度涙が流れると止まらなくて、つい泣きすぎてしまった。


「何かあったらいつでも聞くからね」


綾子さんは私にそう言ってくれた。


…もしかしたら、もう気がついているのかもしれない。


私と夫のこと。


この傷も、夫によってつけられたものだと。


そう思った。


その日は21時頃の解散となった。


食事会の後の片付けも終わり、帰りのタクシーの中。


「なぜ泣いていた」


夫に冷たく聞かれる。


“リップをもらって嬉しかったからです”


なんて言えなかった。


せっかくいただいたものなのに、取られると思ったから。


捨てられると思ったから。


…なんて言おう。


「奥様から何を頂いた?」


「!」


バレていた。


「…リップです」


「お前は昔からそういうところがある。せっかく頂いたんだ、大切にしろ」


夫の口から思いもよらない答えが返ってきて、困惑した。


「…はい」


それは素直に嬉しかった。


家に帰り、開けるのが楽しみだった。


やっぱりなんでもない日にもらえるプレゼントは嬉しいな。


これも、リンダくんから預かっている恐竜のおかげかな。


今日はいい日で終わりそう。


こちらからメッセージを送らずとも、向こうからメッセージを送ってくれた。


[今日はどんな1日だった?]


リンダくんの気遣いがとても嬉しかった。


“恐竜のおかげで、良い1日で終わりそうです。ありがとう”


[それはよかった。次の月曜日にまた会えないかな?]


次の月曜日、か。


今日は土曜日だから明後日。


私に予定なんてあるわけがない。


“大丈夫です”


[よかった。連れて行きたいところがあるんだ]


まさかこんな早く、会えるなんて思っていなかった。


嬉しい。


次会う時は、この恐竜を返さないと。


…次が最後かもしれないから。


もう会ってもらえないかもしれないから。


昨日のことがもうずいぶん昔のように感じてしまう。


現実味がなさすぎて。


私はあのリンダくんと会って、話したんだ。


昔話に花が咲いて楽しかった。


まさかリンダくんが私の存在を認知していて、覚えていてくれたなんて思わなかった。


少しずつだけれど、私の人生は良い方向に向かっていっている気がした。


枯れかけていた花にリンダくんという太陽、綾子さんという水が栄養を与えてくれて、少しずつ咲いてきている。


そんな気がした。


お願いだから、私からこの2人を取らないで。


この夜、綾子さんから頂いたリップはボルドーだった。


私が挑戦をしたことのない色だった。


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