壊したがりの男
あなたはこう思ったことはないだろうか?
何もかもが無くなってしまえばいいのに
これは全てを破壊した男性のお話。
科学が発達した世界で一つのゲームが大流行した。
リアルさが売りの世界創造のシミュレーションゲーム。
彼はそのゲームにはまっていった。
彼は笑う。
この世界の運命は自分の手にある。
全ては自分の思い通り。
彼は笑う。
嫌なヤツが居ないこの世界。
嫌いな物が無いこの世界。
彼は笑う。
彼は愉しむ。
彼が創り上げたこの世界で。
この世界は長くはなかった。
世界の寿命が切れ、世界は滅亡する。
彼は現実の世界に帰る。
この時、彼は悲しむ。
もっと、もっと、長くあの世界に居たい。
彼は望む。
彼は虚へ。
彼はそこに入って行く。
そこには、亡霊がいた。
何故か姿が見える。
彼は気に留めない。
亡霊は彼の望みを叶える物を与える。
赤いボタンが付いているだけの物を与える。
彼は笑う。
もう悲しまなくてすむ。
亡霊は笑う。
愉しくなりそうだ。
彼はこの叶える物を大事にしまう。
彼は現へ。
彼は虚へ。
彼は早速使う。
まずは、嫌なヤツを消していく。
最初に同級生。
次に知り合い。
次に家族。
次々に嫌なヤツを消していく。
彼は爽快に感じる。
嫌なヤツが消えていく様が。
彼は愉しむ。
彼は現へ。
彼は虚へ。
次に嫌いな物を消していく。
最初は学校。
次は役所。
次は機械。
次々に嫌いな物を消していく。
彼は爽快に感じる。
嫌いな物が消えていく様が。
彼は愉しむ。
徐々に理想の世界に近づく。
彼はたくさんのモノを消した。
彼はたくさんのモノを壊した。
彼の望みを叶える為に。
彼は壊し続けた。
理想の世界に近づくたびに、現と虚の区別が曖昧になる。
彼は思う。
今、現か虚か。
彼は信じた。
これは虚。
これはゲームの中の世界。
終わりのない。
彼は壊し続けた。
すれ違うヒトを壊し続けた。
目に入るモノを壊し続けた。
彼は思う。
全てが失われようとも、まだ未来が残っている。
何処かで聞いた言葉。
だが、彼は虚だと思う。
彼は証明した。
存在する全てのモノを壊し続けた。
そこには、彼と虚しか存在しない。
彼は証明した。
未来が失われた。
彼は嘆かない。
これこそが彼が求めた理想の世界。
彼は涙を流しながら笑う。
何故泣いているのか。
彼にも分からない。
亡霊は愉しそうに笑い声をあげる。
完




