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他人になりたかった女

あなたはこう思ったことはないだろうか?

あのヒトになりたい

これは自らを嫌った女性のお話。


彼女は自分自身が世界で一番嫌いなモノだった。

それを捨てる事が出来たら。

彼女は常に思う。

でも、死にたくはない。

生きて、それを捨てる事が出来たら。

そう、思った。

けれども、それは叶わない。

ただ、思う。

そう、思いながら、毎日、毎日、床に就く。

ある日、彼女が目覚めると彼女は彼女でなかった。

自分自身が消えた。

そこには、誰かがいる。

彼女一人だけだが。

彼女は自分自身を捨てた。

生きながら、自分自身を捨てた。

彼女はひどく喜ぶ。

誰かは分からないが。

そのヒトに感謝する。

そうして、彼女はいなくなる。

彼女は他人となって生きていく。

他人となった彼女を知るヒトはいない。

ヒトは彼女は行方不明になったと信じた。

そうして、徐々に徐々に彼女は忘れ去られる。

彼女は生きているのに。

ヒトは彼女を認識しない。

彼女は存在しない。

目の前にいるのに。

誰も認識しない。

存在しないはずのヒトだから。

彼女は苦しむ。

存在するのに、しない。

ゆらゆらとそこにいるだけのヒト。

ヒトですらもない。

ヒトは認識できるから。

存在できるから。

彼女はヒトの姿をしたヒトでないモノだった。

彼女は苦しむ。

苦しむ。

抜け出したいと願う。

そこに存在しないはずの店が存在する。

『なんでも叶えます』

彼女は誘われるように入って行く。

そこには仮面を着けた貴族らしきヒトがいた。

彼女は願う。

貴族らしきヒトは彼女の願いを叶える。

喜びながら、彼女の顔を剥いで。

彼女の願いを叶えた。

彼女は断末魔の悲鳴をあげる。

そこで、目覚める。

彼女は元に戻る。

彼女は泣いて喜ぶ。

元通りの生活にひどく喜ぶ。

仮面を着けた貴族らしきヒトは喜ぶ。

データが取れた。

貴族らしきヒトの手には他人になる前の彼女の顔を模した仮面があった。


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