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エピローグ~一つ目の真実~
楽しめたかな。
語り屋は囁くように問いかける。
分からない、怖かった、不思議だった。
楽しいと返ってこない。
誰もが怖れを、恐れを、畏れを、抱いたようだ。
語り屋は落胆せずに続ける。
何か言いたいことあるかね。
誰もが、ただ一つのことを聞く。
これは本当にあったことなのか、と。
実際にあったかのように話す語り屋の口上に引き込まれたのだろう。
優れた語り屋の口上は噂を真に塗りつぶす力を持つ。
さぁ、最後の仕上げだ。
……さぁ、どうだろうな。
語り屋は微笑んで答える。
たとえ、実際にあったとしても。
たとえ、実際にみたとしても。
たとえ、実際に経験したとしても。
語り屋は謎を残す。
これにてお仕舞い。
語り屋の、僕の、僕が、語る、モノ語りはここまで。
また、新しい物語が生まれることを期待して。
僕はあの人のためにあの店で待ち続ける。
あの人が怒り、愛でて、涙し、笑う、ために。
ここまで、愛し、求め、堕ちて、狂った、モノたちの物語を。
あなたが愛しつづける物語を僕にみせておくれ。




