才能を欲した男
あなたはこう思ったことはないだろうか?
才能こそが絶対
これは努力を続けた男性のお話。
彼は人一倍の努力家であった。
それでも、越えることができない絶対的な壁が確かに存在していた。
彼には、それを越える才能はない。
それでも、彼は努力を続けた。
しかし、越えることはない。
隣のヒトは簡単に、軽々と、その壁を越える。
努力の欠片もない怠惰なヒトは簡単に越えた。
彼は嘆き、悔しむ。
努力もしない怠惰なヒトが越えなかった壁を越える。
彼は憎しむ。
そのヒトが憎い。
才能のない自分が憎い。
努力を評価しない世界が憎い。
絶対的な壁が存在している事が憎い。
彼は憎しみながらも努力を惜しまない。
たった一つの言葉を信じて。
努力は才能を越える
それでも彼は才あるヒトを越えることはない。
ようやく、彼はその事実に気付く。
彼は、憎しむ。
そうして、一軒の店が目の前に現れる。
彼の記憶とは違う店がそこにある。
それでも、彼は何も考えずにそこに入って行く。
そこには、ふざけた実験内容を書いた紙切れが残っていた。
脳に強烈な電流を流して100%の力を発揮させる。
奇妙に思いながらも、彼はその実験を自らの身体に自ら施した。
そうして、実験は見事成功した。
彼は才あるヒトになった事に非常に喜ぶ。
異常な程に喜ぶ。
彼の周りのヒトは彼を恐れるようになった。
ヒトではない彼を恐れるようになった。
奇妙なモノの実験、才能を得る実験は見事成功した。
それ以外の事は知らない。
彼の姿が崩れ去ろうと彼自身はそれに無関心。
才能は得た。
それだけで、充分。
たとえ、この姿が異形のモノであろうと。
彼は喜びながら、その才能を振りかざす。
そうして、彼の周りにはヒトはいなくなった。
彼は泣きながら、その才能を振りかざす。
彼のそばには小さな小さなみすぼらしい泥人形があった。
その今にも崩れ去ろうとしている泥人形は笑っているように見えた。
彼は狂いながら、その才能を振りかざす。
決して止める事の出来ない才能を振りかざし続ける。
完




