愛し続けた女
あなたはこう思ったことはないだろうか?
愛するヒトの本音を知ることが出来たら
これは一人の人間を愛し続けた女性のお話。
彼女は一人の人間を愛した。
たった一人の人間を愛した。
そのヒトは彼女を知らない。
そのヒトは幸せな家庭があった。
それでも彼女はそのヒトのみを愛した。
そのヒトが自分を知らなくても。
彼女は愛し続けた。
そうして、彼女は望む。
そのヒトが本当に欲しいモノを知ることが出来たら。
そのヒトは自分を見るようになるだろう。
彼女は強く望む。
そこに店が現れる。
『なんでも叶えます』と書いてある。
彼女は警戒しなかった。
自然に入って行く。
中へと。
そこに、奇妙な物体が見える。
彼女はそれに惹かれる。
何の変哲もない眼鏡。
それはどす黒いもやに包まれている。
それでも彼女はそれに惹かれる。
辺りには店長らしきヒトはいない。
彼女はそれに触れた。
そこで変化が訪れる。
何もないところから現れる。
いなかったはずの店長らしきヒトが現れる。
それは眼鏡と同じようにどす黒いもやに包まれている。
顔は見えない。
ただ、ひたすらどす黒い。
彼女は恐怖を抱く。
店から飛び出る。
眼鏡を持ったまま。
店がある後ろの方で音がする。
甲高い歓喜の声に似た音がする。
彼女はひたすら前を向いて走り去る。
ここは愛するヒトがいる世界。
眼鏡をかけた彼女がいた。
本音が読める。
彼女が欲しがっていたモノ。
これで愛するヒトの欲しいモノが分かる。
彼女はひたすらそれを与え続ける。
ようやく、愛するヒトは彼女を見る。
その目は恐怖に見え隠れている。
彼女はそれに気づかない。
ただ、喜ぶ。
愛するヒトはまた願う。
命を。
彼女は喜びながら、捧げる。
共に死ぬことで命を捧げる。
愛するヒトと共に死ねる。
彼女は喜ぶ。
どす黒いもやに包まれた店長はさらに高い歓喜の声のような音を出す。
完




