空っぽの指輪
第47話「空っぽの指輪」
麻里子と陽介の結婚式が終わった夜。
梨花は自分の部屋で、小さな箱を開けた。
中に入っていたのは、かつての結婚指輪だった。
もう誰の指にもはまっていない。
ただ、空っぽの輪としてそこにある。
*
指輪を見た瞬間、胸が少し痛んだ。
でも、涙は出なかった。
あの頃の自分は、本当に幸せになれると思っていた。
その気持ちまで嘘だったとは思いたくない。
けれど、そこから先を壊したのは大輝だった。
*
梨花は指輪を布に包み、小さな箱へ戻した。
捨てるのではない。
戻るのでもない。
ただ、過去として置いていく。
*
翌日。
麻里子の結婚式で再会した徳田薫から、梨花に連絡が入った。
《昨日は久しぶりに会えて嬉しかったです》
梨花は少し迷ってから返信した。
《こちらこそ。懐かしかった》
それだけのやり取りだった。
けれど、心の奥に小さな風が入った気がした。
*
空いた場所には、いつか新しい風が入る。
急がなくていい。
怖がってもいい。
それでも梨花は、少しだけ前を向いていた。
*
次回予告
第48話「再出発の朝」
梨花は新しい朝を迎える。
病院での仕事。
週末の実家。
徳田薫との静かなやり取り。
一方、一絵は板前見習いとして初めて客前の料理を任される。
次回、
第48話「再出発の朝」
朝は、昨日を消すためではなく、今日を始めるために来る。




