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沈黙の琵琶湖 ― 壊れた日常の向こうへ ―  作者: リンダ


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離婚してください

 第27話「離婚してください」


 季節は進んだ。


 裁判、離婚、再出発。


 そのすべての先で、一絵の出産の日がやって来た。


 *


 夜明け前。


 一絵に陣痛が始まった。


 菊江が病院へ連絡し、一也が車を出す。


 梨花と麻里子にも、すぐに連絡が入った。


「一絵さん、始まったって」


 麻里子の声に、梨花はすぐ立ち上がった。


「行こう」


 *


 病院。


 一絵は痛みに耐えながら、必死に呼吸を整えていた。


 菊江が手を握る。


 一也は落ち着かない様子で廊下を歩く。


 そこへ梨花と麻里子が駆けつけた。


「一絵さん」


 一絵は涙を浮かべながら笑った。


「来てくれたんですね」


「当たり前やん」


 麻里子が言う。


 梨花もそばに立つ。


「一緒にいるよ」


 *


 長い時間が過ぎた。


 痛み。


 汗。


 涙。


 励ます声。


 握り返す手。


 そして――


 産声が響いた。


 *


「男の子です」


 助産師の声に、部屋の空気が一気にほどけた。


 一絵は泣いた。


 菊江も泣いた。


 一也は顔を覆った。


 麻里子は涙を拭きながら笑った。


 梨花も、静かに泣いていた。


 *


 赤ちゃんは小さかった。


 けれど、力強く泣いていた。


 一絵は胸に抱きながら、震える声で言った。


「生まれてきてくれて、ありがとう」


 *


 名前は、一幸。


 父・一也から一文字をもらった。


 たくさんの不幸と嘘の中から生まれた子。


 それでも、これから幸せを一つずつ重ねていけるように。


 そんな願いを込めた名前だった。


 *


 梨花は小さな一幸を見つめた。


 大輝が壊したものは多い。


 けれど、この命だけは、壊させなかった。


 麻里子が隣で言った。


「一幸くん、よう来たね」


 梨花もそっと微笑んだ。


「ここから、みんなで育てていこう」


 *


 次回予告

 第28話「証拠もないくせに」


 一幸の誕生により、一絵の日常は大きく変わる。


 梨花と麻里子も支えに入り、両家の絆は深まっていく。


 一方、大輝は塀の中で、子どもの誕生を知らされる。


 次回、

 第28話「証拠もないくせに」


 命は、嘘より強い。

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