第3話 剣を振る理由
冒険者ギルドの木の扉を押し開けると、窓から差し込む午後の光が、古びた受付カウンターを白く照らしていた。
「ヒュー、マリア。ちょうどよかったわ」
受付係の女性が、二人を見つけて手招きする。冒険者登録から数日。ヒューとマリアは、荷物運びや配達、倉庫整理といった簡単な依頼を一緒にこなしていた。そして今日。受付係がカウンターへ置いた一枚の依頼書には、これまでとは違う文字が記されていた。
【街道付近のゴブリン討伐】
【討伐対象:三体】
ヒューの目が止まる。
「……討伐依頼」
「そう。街道から少し外れた森の入り口で、旅人から目撃報告があったの」
受付係が説明を続ける。
「今のところ被害は確認されていないけれど、放っておけば商人や旅人を襲う可能性があります。三体だけなら、あなたたちの最初の討伐依頼としては適当でしょう」
「俺たちが受けていいのか?」
「数日間の依頼を問題なくこなしましたからね。ただし」
受付係の表情が少しだけ厳しくなった。
「訓練とは違います。相手は本気であなたたちを殺しに来ます」
「ああ」
そう答えながらも、ヒューの胸の奥では、熱いものが疼いていた。ようやく。腰に下げた鉄剣を使う日が来た。十年間、振り続けた。雨の日も、雪の日も。腕が動かなくなるまで、あの日、夕焼けの中で剣を掲げた男の背中を追うために。
「任せてくれ」
ヒューは依頼書を手に取った。
「ゴブリン三体なら、すぐ片付けてくる」
隣でマリアが小さく息を吐いた。
「この前、ギルド職員に一瞬で転がされた人の台詞とは思えないわね」
「……あれは人間相手だったからだ」
「どういう理屈よ」
「今度はちゃんと剣を使える」
「だから、それが心配なんだけど」
マリアは呆れたようにヒューを見る。
「訓練と実戦は違うわよ」
「分かってる」
「本当に?」
「剣なら十年振ってきたんだ」
ヒューは腰の剣へ手を添える。
「ゴブリン三体くらいなら、やれる」
「……そう」
マリアはそれ以上言わなかった。ただ、小さく首を横に振った。
◇
街を出てしばらく歩くと、街道の左右に森が広がり始めた。風が吹くたびに、無数の葉がざわめく。鳥の鳴き声。木漏れ日。どこまでも穏やかな景色だった。これからここで命のやり取りをするなど、嘘のようだった。
「……いた」
ヒューが足を止めた。街道から少し外れた草むら。三つの小さな影がうずくまっている。緑色の皮膚。尖った耳。小柄な身体。手には粗末な棍棒や錆びた剣。
「ゴブリン……」
依頼書の通り。三体。ヒューが剣へ手を伸ばす。だが。
「待って」
マリアが袖を引いた。
「なんだ?」
「……変よ」
ヒューも目を凝らす。そこで初めて気づいた。三体とも、ひどく傷ついていた。身体のあちこちに噛み傷や爪痕が残り、緑色の皮膚は血と泥にまみれている。一体など、片足を引きずっていた。人間を待ち伏せしているようには見えない。むしろ。何度も森の奥を振り返っている。怯えている。
「何かから逃げてきた……?」
マリアが呟く。その瞬間、一体のゴブリンが二人に気づいた。
「ギギッ……!」
黄色く濁った目が大きく見開かれる。人間を見つけた喜びではない。追い詰められた獣の目だった。
「来る!」
「ギャァァッ!」
ゴブリンが泥を蹴った。棍棒を振り上げ。一直線にヒューへ飛びかかる。
◇
「っ!」
身体が勝手に動いた。鉄剣を抜く。ゴブリンが振り下ろした棍棒。軌道が見える。右足の踏み込み。肩の動き。腕の振り。十年間。何度も繰り返した動作が、ヒューの身体を動かす。半歩ずれる。
剣を添える。――ガキン!棍棒を受け流した。
「……軽い」
思わず声が漏れた。いける。速くない。力も強くない。剣筋も何もない。ただ力任せに武器を振っているだけだ。これなら。斬れる。ヒューは剣を返した。がら空きになったゴブリンの胴。
そこへ刃を――
「……っ」
止まった。目が合った。黄色く濁った瞳。そこに、恐怖があった。鼻から血が流れている。荒い息を吐き。震えている。それでも、生きるために必死で棍棒を握っている。木人形ではない。斬れば。
死ぬ。――これを。俺が殺すのか?ほんの一瞬。剣が止まった。
「ヒュー!」
マリアの叫び。
「っ!」
遅かった。ゴブリンの棍棒が横薙ぎに振られる。完全には避けられない。鈍い衝撃が肩を打った。
「ぐっ!」
ヒューの身体がよろめく。ゴブリンがさらに棍棒を振り上げた。
「風よ、撃て――《風弾》!」
マリアの杖が光る。――ドンッ!圧縮された風がゴブリンの腹へ直撃した。
「ギャッ!」
小さな身体が吹き飛び、地面へ転がる。
「ヒュー!」
マリアが叫ぶ。
「止まらないで!」
「……」
「相手は待ってくれない!」
肩が痛む。冷たい汗が流れた。自分は、勘違いしていた。剣を十年振った。だから戦えると思っていた。違う。剣を振れることと。命を斬れることは、まるで違う。吹き飛ばされたゴブリンが起き上がろうとしている。まだ戦うつもりだ。
逃げない。いや。逃げられないのかもしれない。それでも、このままなら。自分か。マリアが傷つく。
「……やる」
ヒューは剣を握り直した。足が震えている。それでも、踏み込んだ。
「ギッ!」
ゴブリンが棍棒を振る。避ける。剣を振り抜いた。――ザシュッ!
「……っ!」
手に。伝わった。皮を裂く感触。肉を断つ重さ。その先にある骨へ、刃が触れる感触。木人形とは、何もかもが違った。血が飛ぶ。ゴブリンが地面へ倒れた。
「ギ……」
小さく身体を震わせ。やがて、動かなくなった。
「……」
ヒューは立ち尽くした。剣から、赤い血が落ちる。一滴。二滴。地面へ染み込んでいく。手が震えていた。自分が、殺した。分かっていたはずだった。冒険者になれば。魔物を殺すこともある。
頭では、何度も考えていた。けれど、頭で知っていることと。自分の手で命を断つことは、まったく違った。
「ヒュー!」
マリアの声で、我に返った。
「まだ二体いる!」
◇
残ったゴブリンが左右へ分かれた。一体はヒュー。もう一体はマリアへ。
「っ……!」
ヒューは踏み出しかけた。二体とも、自分が引き受ける。そう考えた。だが、脳裏に。荷物運びをした日の言葉が蘇る。――最初から一人で全部やろうとするからよ。一人では、力任せにやるしかなかった。二人なら。もっと上手くできた。
「マリア!」
「何!?」
「そっちは任せる!」
マリアの目が一瞬だけ見開かれた。だが、すぐに杖を構える。
「言われなくても!」
ヒューは自分へ向かってきた一体だけを見る。怖い。さっき斬った感触が、まだ手に残っている。それでも、今度は。止まらない。
「ギャァッ!」
棍棒。受けない。半歩ずれる。空振り。懐へ。一歩。
「はっ!」
剣を振る。一閃。ゴブリンの身体が崩れた。同時に。
「風よ、足を払え――《風払い》!」
マリアの杖から、地面を這う風が放たれる。最後のゴブリンの足元を襲った。
「ギッ!?」
体勢が崩れる。だが、倒れない。
「っ!」
ゴブリンが強引に踏みとどまり。錆びた剣をマリアへ振るった。マリアは咄嗟に杖で受ける。――ガンッ!
「きゃっ!」
細い腕が弾かれた。
「マリア!」
ヒューが走る。ゴブリンがもう一度剣を振り上げた。その背後へ、間に合った。
「そこだ!」
ヒューの剣が走る。最後のゴブリンが地面へ倒れた。
「……」
「……」
静かになった。ヒューは肩で息をする。肩には棍棒を受けた傷。マリアも痛そうに腕を押さえている。
「大丈夫か?」
「痛いけど……折れてはいないと思う」
「そうか」
「ヒューは?」
「俺も大丈夫だ」
勝った。しかし、完璧な勝利ではない。泥だらけ。傷だらけ。連携も滅茶苦茶だった。それでも、二人とも。生きている。
◇
そのときだった。――ドシン。
「……?」
ヒューが顔を上げる。――ドシン。森の奥。何かがいる。――ドシン!鳥たちが一斉に飛び立った。
「ヒュー……」
「ああ」
木々の間から、巨大な影が現れた。
「……嘘だろ」
若いオーガだった。成熟した個体ほどではない。それでも、ヒューの倍近い巨体。太い腕。異様に発達した筋肉。手には、巨大な木の棍棒。だが、オーガも無傷ではなかった。肩。背中。脚。
いたるところに深い傷がある。血と泥にまみれ。激しく息をしていた。そして、何度も。森の奥を振り返っている。
「……こいつも?」
マリアが呟いた。ヒューも気づいた。ゴブリンだけではない。このオーガも、森の奥から逃げてきた。何かがいる。ゴブリンも、オーガさえも。逃げ出す何かが、だが。それを考える時間はなかった。
「グォォォォッ!」
狂乱したオーガが咆哮する。こちらを見た。その瞬間、街道の向こうから。ガラガラと車輪の音が聞こえてきた。
「……まずい」
商人の荷馬車。一台。こちらへ向かってきている。まだ。オーガには気づいていない。
「止めないと」
ヒューが剣を握る。
「無理よ!」
マリアが叫んだ。
「あれを正面から斬るつもり!?」
「じゃあどうする!」
「考える!」
オーガが一歩。街道へ近づく。
「急げ!」
「分かってる!」
マリアが周囲を見回した。そして。
「……あれ」
「何?」
「あの荷車!」
街道脇。道の補修作業で使われていたらしい古い荷車が置かれている。荷台には、石材。その横には太い縄。そして、荷車の先には緩やかな下り坂。マリアの目が鋭くなる。
「使えるかもしれない」
「どうする?」
「私が荷車を軽くする」
「それで?」
「あんたが坂の上まで運ぶ」
「そのあと落とすのか」
「そう」
ヒューは荷車を見る。オーガを見る。
「やるぞ」
「最初からそのつもりよ!」
マリアが杖を構える。
「巡る風よ、重きものを下より支えよ――《浮揚》!」
風が。荷車の下へ集まる。石を満載した車体が、わずかに浮いた。
「今!」
「ああ!」
ヒューが荷車を掴む。
「うおおおっ!」
押す。重い。魔法で軽くなっている。それでも重い。坂の上へ、一歩。また一歩。
「もう少し!」
「分かってる!」
押し上げる。木へ縄を巻く。車輪を固定する。
「できた!」
マリアが膝へ手をついた。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫か?」
「これくらい……平気」
明らかに平気ではない。だが、時間がない。
「俺が誘導する」
「無茶しないで」
「できるだけな」
「それが信用できないのよ!」
ヒューは笑った。そして、オーガの前へ飛び出す。
「おい!」
剣を掲げた。
「こっちだ!」
「グォォォォッ!」
オーガが反応する。
「そうだ!」
ヒューは剣で地面を叩いた。
「こっちへ来い!」
巨体が走り出した。――ドン!――ドン!――ドン!
「速っ……!」
想像以上だった。ヒューは横へ飛ぶ。巨大な腕が振られた。
「ぐっ!」
避けきれない。腕の先が身体へ当たった。ヒューが地面を転がる。
「ヒュー!」
「大丈夫!」
痛い。息が詰まる。それでも、立つ。
「まだだ……!」
もう一度、オーガの前へ。
「こっちだ!」
「グァァァッ!」
走る。荷車の進路へ、一歩。二歩。
「ヒュー!」
まだ。
「もう少し!」
まだ。オーガが迫る。
「今!」
ヒューが横へ飛んだ。
「マリア!」
「分かってる!」
杖が振られる。
「風よ、断て――《風刃》!」
風の刃が、縄を切った。荷車が動く。ガタン。最初はゆっくり。しかし、坂を下るにつれ。加速する。ガラガラガラガラッ!
「グォッ!?」
オーガが気づいた。遅い。石材を満載した荷車が、巨体へ。激突した。――ドォンッ!
「グァァァッ!」
オーガが倒れる。荷車が横転し。石が散らばる。
「ヒュー!」
「ああ!」
走った。今しかない。オーガが起き上がろうとする。片腕を地面へつく。巨大な身体を持ち上げようとする。その胸へ、ヒューは。両手で剣を突き立てた。
「うおおおっ!」
深く。もっと。体重を乗せる。剣が。心臓へ届いた。
「グ……ォ……」
巨体が震える。そして、力が抜けた。
「……」
終わった。ヒューは荒い息を吐きながら、剣を引き抜いた。自分一人では、絶対に勝てなかった。剣だけでも、勝てなかった。マリアの魔法。荷物運びで覚えた。二人で一つのものを動かすやり方。その全部が、必要だった。その瞬間。――ズキン。
「……っ?」
胸の奥。何かが、揺れた。心臓ではない。もっと。深い場所。見えない何かへ、一滴。最後の何かが落ちた。満たされた。そんな。奇妙な感覚。
「ヒュー?」
「……いや」
胸へ手を当てる。
「何でもない」
すぐに、感覚は消えた。
◇
商人たちへ事情を説明し。討伐証明を回収したあと。ヒューは、三体のゴブリンを振り返った。最初に斬った一体。まだ。あの感触が残っている。
「ヒュー」
マリアが隣へ来た。
「……後悔してる?」
「何を?」
「ゴブリンを斬ったこと」
ヒューは黙った。しばらく、答えが出なかった。
「分からない」
ようやく言った。
「……分からない?」
「ああ」
ヒューは剣を見る。
「殺して気分がいいなんて思わない」
「うん」
「できるなら、あんな感触は二度と味わいたくない」
それでも、剣を握る。
「でも」
ヒューは街道を見る。少し先で、助かった商人たちが荷馬車を確認している。
「俺が斬らなかったら」
十年前。村。血に濡れた母。冷たくなっていった手。
「今度は誰かが」
あの日の自分と同じになるかもしれない。
「だから」
ヒューは静かに言った。
「必要なら、俺は斬る」
「……」
「命を奪ったことは、忘れたくない」
剣を鞘へ戻す。
「でも」
ヒューは前を見る。
「守るために必要なら、剣を抜く」
マリアは、しばらく何も言わなかった。やがて。
「そう。何でも一人で背負わないで」
短く答えた。そして、ヒューの傷ついた肩へ手を伸ばしかけ。
「痛っ!」
「触るな!」
「怪我を見ようとしただけじゃない!」
「そこ、殴られたところだぞ!」
「先に言いなさいよ!」
「見れば分かるだろ!」
「分かるわけないでしょ!」
ヒューは思わず笑った。
「何笑ってるのよ」
「いや」
少しだけ。身体の震えが止まっていた。
◇
ギルドへ戻った頃には、日が傾き始めていた。
「ゴブリン三体。討伐確認しました」
受付係が証明部位を確認する。
「初討伐依頼、お疲れさ――」
「それだけじゃないんです!」
後ろから、商人の声。受付係が顔を上げる。
「この二人が、オーガまで倒したんです!」
「……はい?」
受付係の動きが止まった。
「街道へ出てきたんですよ! 私たちの馬車のすぐ前に! この二人が止めてくれなかったら、今頃どうなっていたか……!」
「オーガ?」
近くにいた冒険者が振り返る。
「新人が?」
「嘘だろ」
受付係も驚いていた。
「本当に?」
「ああ」
「若い個体だったけど」
マリアが付け加える。
「それでも……」
受付係は頭を押さえた。
「初討伐でオーガに遭遇するなんて……」
「運が悪かったな」
「そういう問題ではありません!」
「そうなのか?」
周囲から笑いが起きた。
「大した新人じゃねえか!」
「オーガを二人で倒したのか?」
「やるな!」
褒める声。感心する声。ヒューは、なぜか。素直に喜べなかった。英雄。十年前。村人たちは、あの男をそう呼んだ。ありがとう。命の恩人だ。英雄だ。
そのすぐそばで、自分は。母の手を握っていた。
「……」
ヒューは俯いた。自分は、英雄ではない。ゴブリンを斬ることすら怖かった。マリアがいなければ。最初の一体で傷を負い。オーガには、間違いなく殺されていた。
「ヒュー?」
「何でもない」
受付係が一枚の紙を取り出した。
「想定外の魔物を討伐したので、能力の再確認をしておきましょう。水晶へ手を置いてください」
「ああ」
ヒューが触れる。水晶が光った。
【名前】ヒュー
【レベル】10
【職業】剣士
【スキル】剣術Lv3
「……レベル10」
受付係が目を見開く。
「上がった?」
「ええ」
周囲から、また声が上がった。
「もう10かよ」
「新人だろ?」
「オーガ討伐が効いたのか?」
ヒューは、自分の視界にだけ浮かぶ表示へ目を向けた。レベルは十へ上がっている。だが、《魂の器》は職業を得た時と同じだった。
【名前】ヒュー
【レベル】10
【職業】剣士
【魂の器】1/1
【スキル】剣術Lv3
「……変わってない」
ヒューは小さく呟いた。レベルが上がっても、この項目だけは一のままだった。今はまだ、その意味を知る手がかりもない。
◇
夜。宿の部屋。ヒューは一人。鉄剣を拭いていた。布へ。薄く赤い色が移る。何度拭っても、手の感触までは消えなかった。ゴブリン。最初の一体。あの目を、覚えている。
怖がっていた。生きたかったはずだ。自分だって。同じだ。
「……」
剣を見つめる。強くなる。これまで、ただそれだけを考えていた。あの男のように、強く。誰かを守れる人間になる。けれど、守るために。何かを斬らなければならないことがある。相手にも、生きたい理由があったとしても。
「……忘れない」
ヒューは呟いた。自分が斬った命を、忘れない。その上で、必要なら。剣を抜く。ヒューは手入れを終えた剣を、ゆっくり鞘へ収めた。――カチリ。その瞬間、胸の奥で。何かが脈打った。
「……っ!?」
昼間。オーガを倒した直後と。同じ感覚。いや。違う。今度は、消えない。胸の奥。心臓よりも、さらに深い場所。見えない何かが、内側から軋む。
「なんだ……これ……」
熱い。痛くはない。だが、何かが。満ちている。いっぱいになった器を、さらに内側から押し広げていくような。奇妙な感覚。
「ぐっ……!」
ヒューが胸を押さえる。そのとき、誰もいない部屋に。声が響いた。
【レベル10への到達を確認しました】
「……!」
ヒューが顔を上げる。さらに。
【《魂の器》拡張条件を確認しました】
【覚醒条件を満たしました】
視界に、新たな文字が浮かぶ。
【《魂の器》第二枠を解放します】
「第二……枠?」
ヒューは息を呑んだ。二つ目の枠。その意味を考えるより早く、胸の奥で何かが砕けた。




