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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
領地運営編

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再会

           *




「ここがミスヴァン村ですかー。いい所ですねー」




 竜騎に乗りながら、ヤンとイルナスは辺りを見渡す。先導する竜騎乗りの老人は、顔を皺くちゃにしながら笑う。




「ホッホッホッ! 戸籍も作っといたでの」


「ううっ。本当に大好き、おじいちゃん」




 まともな老人を見ると、最近、ヤンは泣けてくる。虚弱ジジイのライエルドはともかく、老害オブ老害のグライドは、気を抜くと勝手に出現してくるので要注意だ。




『若いもんに迎合するヤツ嫌いじゃ。殺していいか、ワシ?』




 !?




「くおおおおおおおおおおっ!」




 すかさず出てきた老害を、魔力で強引に封じ込める。




「はぁ……はぁ……」


「ん? なんか、今、ボヤッと老人がーー」


「し、蜃気楼じゃないですかね。あはは、ははは」




 空笑いを浮かべながら、ヤンは誤魔化しに誤魔化した。




 元竜騎兵(ドラグーン)団副長バルフレアのツテで、2人はこの村までやってきた。当面は、ここで生活をして潜伏をしなければいけない。




「ここが、ヌシらの家じゃ」


「……なるほど」




 ヤンは、いいとも悪いとも言えない返事で濁す。とにかく、ボロい。北方なので、夜は気温が下がる。にも関わらず、壁の至る所に穴が空いていて、隙間風がピューピュー吹いてきそうだ。




 ヤンは平民育ちなので、ある程度は慣れているだが、イルナスは天空宮殿育ちで衣・食・住には不自由してこなかった。




 いきなり、この環境で大丈夫だろうか。




 だが。




「わぁー! ここが僕の家かぁ」


「……っ」




 可愛かわよ。瞳をキラキラさせている童子を眺めて、ヤンは大いに癒される。




 なんて素直なの(素直じゃない異常者サイコパスばっか)。




「ホッホッホッ! じゃー、ワシは行くでのー」


「うん! ありがとー」




 案内してくれた親切老人と別れて、家の中に入った。あたりを見渡すと、いかにも使ってなさそうな暖炉やボロボロの毛布などは見つけた。夜は気温が低くなるので、かなり寒いとは思うが、最低限寝泊まりはできそうだ。




 もう夕暮れ近いので、今晩はどこかの酒場で食事を買って、明日は壁の補修にかかろう。ヤンはチャキチャキと荷物を降ろして、支度をする。




「私は挨拶まわりに行ってきますね」


「潜伏してるのに?」


「ずっと閉じこもっているのは、精神衛生上よくないです」




 確かに、外に出て顔を晒すのはリスクが伴う。だが、この広い大陸で、一度行方不明になれば、そう簡単には探せないものだ。




「行ってきます!」




 ヤンはとにかく気に入られようと、気合を入れて外に出た。イルナスに普通の生活を味合わせてあげるには、ご近所さんとの良好なお付き合いは不可欠。




 平民の生活の方がいいと考えれば、それもまたよし。




 イルナスには『皇太子という道を選ぶのか』それとも『このまま平民として、ここで暮らすのか』の選択肢を作ってあげたい。




 たとえ、ヘーゼンが何と言おうとも。




 ヤンは外へ出て家を順次巡る。村の人口は100人ほど。一軒一軒丁寧に回って話をしていく。




 おおむね、村人は好印象で出迎えてくれた。ここでも、元竜騎兵(ドラグーン)団副団長のバルマンテは大人気だ。




 どこかのアル中とは、エライ違いだ。




「あらぁ! ご丁寧に挨拶なんて。よろしくねぇ」


「ううっ……なんでこんなに暖かいのだろう」




 優しく出迎えてくれる人を前にすると、ヤンは泣けてくる。




 天空宮殿では、ヘトヘトになって部屋の前で力尽き倒れていると、『修行と根性が足りない』とゲシゲシ足蹴にしてくる異常者サイコパス。そして、いつのまにか添い寝しようとしてくる変態サイコスケベだけだ。




 そう考えると、潜伏生活のなんと楽しいことか。




         ・・・




「う゛ーっ! 疲れたー!」




 挨拶も一通り終わって、ヤンは夜空を見上げる。空気が冷んやりとしてきたが、まだ夏なのでそよ風が気持ちいい。




「うっわー。星が落ちてくるみたいー」




 今日は晴れているので、夜空が絶景だ。砂国ルビナは、あまり雨が降らない。こんなに素晴らしい光景も、いつの間にか見慣れてくるのだろうか。




「……星読み……か」




 ヤンは思わず寝転んでつぶやく。




 星読みは、女官により構成された専用祈職である。彼女たちは貴族同様に魔力を持つが、婚姻は許されず、生涯宮中に仕え、帝国の未来さきを占うことを生業としている。




 次期皇帝も、彼女たちが選抜する。




「……」




 イルナスを皇太子に選んだ彼女たちは、いったい何を考えているのだろう。童皇子を選べば、必ず殺されることはわかっているはずだ。




 それとも……ヘーゼンが手を差し伸べることを見越して……




「……」




 ヤンは不意に眠気に襲われて、ウトウトしてきた。すると、脳内にある光景が浮かんできた。




 一人の老人だ。




 飲んだくれの年老いた海賊だった。その右手首はすでに存在せず、代わりに鈎手が仕込まれている。




『うっ……ひっく…………ひっく……』




 しゃっくりをしながら、頬を真っ赤に赤らめた老人は、器用に鈎手を扱いながら、美味そうに酒をグビグビと飲む。




「……」




 疲労困憊で眠ると、たまに、浮かんでくる。グライド、ライエルドと同じ感覚だ。どんどん、どんどん近づいてくるような気がしている。




「っと、いっけない! 酒場酒場……」




 酒が頭に浮かんだところで、お使いを思い出した。ヤンは、すぐに立ち上がって小走りで駆け出す。あの可愛い可愛いイルナスがお腹を空かしてはいけない。




「ごめんくださいーい」


「おお、ヤンか」


「……ん?」


「……」


「……」




          ・・・












 




































「ラシードさん!?」



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