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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
領地運営編

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ドナナ皇子

           *




 皇位継承権第7位のドナナ皇子が、帝都の繁華街に到着した。大陸有数の大通りは、貴族などもよく往来し、活気のある賑わいが広がっている。




 以前の店とは全く違う高級料理店で座っていると、ルクセルア渓国の魔軍総統ギリシアとゼレシア商国旅団長アルコ=ロッソが出現した。




「……」




 突然の出現は、二度見ても驚かされる。




「バレてないだろうな?」




 ドナナ皇子が神妙に尋ねるが、魔軍総統ギリシアは勝ち誇った表情で笑う。




「ククク……また、その質問? 心配性ねぇ。でも、ないない。私のスペェシャルゥな魔杖、千里ノ霧(せんりのきり)は尾行など不可能」


「……」




 確かに、恐るべき能力だ。大陸のどこにでも出現するだけでなく、複数人の転送が可能な魔杖。サポート系の魔杖では、まさしく、最高峰の大業物だ。




 さすがは、12大国のトップ級。




「では、本題に。来なさい」




 魔軍総統ギリシアが呼ぶと、1人の男が部屋に入ってきた。人相の悪そうな顔立ちをした、背が低い中年男だ。




「あなたの私設秘書官となるべき人物を紹介するわぁん。ライース=ミスガル、我々、反帝国連合国とドナナ皇子を繋ぐ伝令役でぇす」


「……そなたは、確かーー」


「はい。帝国将官です。人事省に従事してます」


「……」




 天空宮殿にも、他国のスパイが入り込んでいたなんて。ドナナ皇子は、内心で驚きを隠せない。




「ククク……何を驚いているの? あなたたちだって、他の大国に送り込んでるでしょ? 同じことよ」


「……」




 ドナナ皇子自身は、そのことについて全然把握していなかった。皇子は、皇帝からの勅命で、天空宮殿での政務を任される。




 だが、大きな仕事を任されているのは、エヴィルダース皇太子とデリクテール皇子の2人だけだった。




 スタートから、すでに彼らが遥かに遠い。




「……」




 自分の無知、無力さ……そして、華やかな舞台で繰り広げられている権力闘争が、酷く煌びやかで眩しく見える。




「ククク……そんな顔しちゃ、だ・め・よ。反帝国連合国が後ろ立てになったあなたは、言わばチート能力を得たと同じこと。この先から巻き返していけばいいの」


「……期待している」




 ドナナ皇子は頷く。




「あっ……ちゃ……ぶりけー。あたくしからも贈り物が」




 ゼレシア商国旅団長アルコ=ロッソが、丸々と太った身体で、いそいそと手に持っていた魔杖で地面に円を描く。




「……」




 すると、その範囲に大量の大金貨が出現した。




あたくしの魔杖は、贈与ノ心得(ぞうよのこころえ)といって、大量の物を瞬時に収納したり、取り出したりすることができます」


「……」




 ざっと見て数えただけでも、数千枚以上はある。その能力ももちろんだが、帝国名門貴族家の全財産ほどの大金貨を簡単に捻出するなんて。




「気に入っていただけたようで嬉しい限りです。どうぞ、派閥を太らせるために、存分にお使いください……ダヒョヒョヒョヒョ! ダヒョヒョヒョヒョヒョ!」


「……」




 アルコ旅団長は仰々しいお辞儀をして、歯の浮くような台詞を吐き、胡散臭い笑い声を上げる。




「ククク……それだけではないわ。すでに、あなたの派閥に移るような算段をつけておいたわよ。ジベス家、ルーラム家、ゴゼレオル家、べステ家が、現状、ドナナ皇子派閥に入ってくれるわ」


「……全て帝国の名門家ではないか」




 ドナナ皇子は、大きく目を見開く。




「帝国は一千年続く最古の国家よ。戦略は、百年単位で行われているものな・の・よ」


「……」




 ドナナ皇子はゾクっと鳥肌を覚える。あらためて、反帝国連合国の支援を受けるということの重みがのしかかる。


 


 だが、こいつらを御すことができれば、皇帝にーーそう思いかけたところで、首をブンブンと振る。




 いや、皇位継承争いは、そう簡単ではない。




「……不自然ではないか?」




 ドナナ皇子は素直な疑問をぶつける。




 エヴィルダース皇太子の派閥から、皇位継承権第7位の自分に派閥を変えるなど、そう簡単に起こり得ることではない。




「ククク……むしろ、このタイミングしかないでしょうね。恐らく、今回の任命式は大きく荒れる。エヴィルダース皇太子の派閥から実に1割以上の人間が移ることになるわ」


「……デリクテール皇子か」




 噂では、ドナナ皇子と同世代のリアム皇子を担ぎ、付き従う表明をするという。




「彼らだけではないのよぉ。ルーマン皇子、バルマンテ皇子にも動きがあるという噂があるしねぇ」


「バルマンテ……やつにもか」




 いかにもやる気のない感じで、皇位継承権の外にいる存在だと見ていたが。そんなところにも伏兵がいたとは。




 魔軍総統ギリシアは、満面の笑みを浮かべて説明を続ける。




「ククク……ドナナ皇子は、様子見の受け皿。仮にエヴィルダース皇太子の信を離れて、デリクテール皇子につけば、全面的に対立することになる」


「……」


「ならば、今回の継承戦は諦めて、次世代の若手で、いざと言う時に、どちらにでもつけるような皇子を選んだ。そう思わせればいい」


「……」


「双方に顔が立つように、彼らは上手く立ち回るでしょう」


「……なるほど」




 ドナナ皇子はエヴィルダース皇太子と同じく正室セナプスの血筋なので、どちらかと言うと現皇太子派だ。また、まとまった票が動くことで、エヴィルダース皇太子は、報復よりもむしろ懐柔に動くだろう。




「ククク……頼むわよぉ。現皇太子を見限る流れは着々と起きている。次の真鍮の儀に向けて、若き候補がいることも示しておかねばいけないからねぇ」


「……わかった」




 ドナナ皇子は頷く。




「ところで、イルナスの動向は掴めたか?」


「んーん。まだ。帝国中に捜索をかけてるけど、未だ見つからない。ほーんと、厄介よねぇん」


「ヤツめ。どこに」




 兄の玩具おもちゃが皇太子内定したことには、本当に驚愕だったが、すぐに反帝国連合国の仕業と疑った。




 だが、彼らも知らなかったことらしく、現在、その力を借りて全力で捜索をしている状況だ。




「ククク……もしかしたら、すでに帝国にはいないのかもしれないわねぇ」




 魔軍総統ギリシアが、皮肉めいた表情を浮かべてつぶやく。




「まさか。帝国の次期皇太子が、帝国の勢力に頼らずに、反帝国連合国に潜入しているとでも?」


「あるいは、その他の小国に」


「……帝国が支援している国々は多くあるが、その線かな」


「可能性はありますなぁ。へーゼン=ハイムは、常に予想外の手を打ってきますから。まあ、あたしらにお任せください……ダヒョヒョヒョヒョ! ダヒョヒョヒョヒョヒョ!」


「……」




 アルコ旅団長は仰々しいお辞儀をして、歯の浮くような台詞を吐き、胡散臭い笑い声を上げる。




「反帝国連合国に潜伏していても、不思議ではないということか」




 ドナナ皇子が静かにつぶやく。




「ククク……任命式で、皇太子不在ということになれば、帝国も他の12大国にも激震が走るわねぇ」


「……任命式自体が取りやめになる可能性は? もしくは、エヴィルダース皇太子が次点で皇太子を継続する可能性も」


「両方とも少ないと思われますなぁ。未曾有の事態ではありますので、可能性がないとは言いませんが……あっちぃ」




 アルコ旅団長が、ふぅーふぅーと紅茶をすすりながら熱々につぶやく。




「……」




 星読みの厳粛さは、大陸の中でも特別視されている。




 仮に派閥の8割以上を固めれば、それもありえたかもしれない。だが、今回の真鍮の儀でエヴィルダース皇太子は、7割……いや、6割まで割り込む可能性がある。




 エヴィルダース皇太子とデリクテール皇子の派閥が互いに潰し合えば、他の候補者にも……いや、自分にもチャンスはある。




「……」


「ククク……そんなに不安気な表情をしないで欲しいわね。これからの帝国を背負っていかれようと言うお方が」




 そう言って。




 魔軍総統ギリシアは、真っ赤なワインの入ったグラスを高々と掲げる。




























































「では、次期帝国の皇帝陛下に……乾杯」


 







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